走研!
「はりきってんな~日衣心」
「まあ、日衣ちゃん。一応文化系だもんね」
お弁当のご飯をつつきながら、スマホで映像を見ている私。
一緒に食べている、いつもの夏海と見文は、呆れながら私を見ていた。
「フンス!」
鼻息荒く、私がスマホで何を見ているかというと。
競馬だ。
競馬のレース映像から、データまで。
色々、目を皿の様にして見ていた。
期末テストも終わり、体育祭も終わり、体育会系の夏海と見文は、余り関係ありませんな、という顔だけれども。
11月には、文化祭が待っているのだ!
高校に入っての、初めての文化祭。
私は、体育会系の様に思われがちだけど、ちゃんと文化系!
走馬予測研究同好会会長なのだ!
輝さんもこないだ入会して、会員は2名!
「はいはい。長いから走研ね」
「ぬ!?いや、でも語呂がいいから、いいか......」
夏海のひと声で、我が走馬予測研究会の略称が決まった。
走研。
うん、悪くない。
「で、走研は文化祭で何やるのー?」
見文が聞いてくる。
よくぞ聞いてくれました!
私は、声高らかに2人に宣言する。
「初の文化祭を迎えた我が走研は!きたる11月の国際G1レース「大日本杯」を予想し、的中させて見せます!」
ドッパ~ン!
と、バックに荒波をイメージしてみました。
夏海と見文も、おお~!と、若干私の勢いに呑まれた。
「まあ、日衣心は勝負事は強いからなあ」
「ウチの柔道部に入れたかったなー」
見文がまだ言ってる。
この高校に、3人一緒に入学して、夏海はバレーボール部に、見文は柔道部に入って。
その時、2人に勧誘されたのだった。
「見文まだ諦めてないのかよ。その事は仕方ないだろ。日衣心はやりたい事やってんだから」
「え~。こんなに勝負強い日衣ちゃんが、体育会系じゃないの納得いかない~」
買われたもんだ。
私も、誘われる事自体は嬉しい。
それ自体が、自分の勝負強さの評価だから。
初めての文化祭での、レース予想。
........是が非でも、当てたい!!
──「なるほど、走研ですか会長。いい略称ですわ」
「つ、塚さん呼びでお願いします。ふ、2人だし!」
放課後に、輝さんと文化祭の事を喋っていた。
文化祭は日曜日。
G1レースの「大日本杯」も当日、15時30分の発走だ。
ここで当てれば、会員は一気に増え、会は部へと昇格。
悪くない、算段だ。
クククッ!
「私は塚さんと2人でもいいんですが」
ん?
悪巧みに夢中で、輝さんのうっかりな呟きを聞き逃してしまった。
........なんて、言ったんだろ?
「な、なんでもありませんよ?」
コホン!
輝さんは、咳払いをひとつして一呼吸入れた。
そして、勝負師なら避けられない提案をした。
「では私と、その大日本杯の勝ち馬の予想対決というのは、どうでしょうか?塚さん」
「!!.......輝さん。予想してきた数が違うよ?勝てるとでも?」
「競馬でも、番狂わせはあるのでしょう?塚さん」
........文化祭。
嵐が吹くのが見える。
輝さんの提案と、挑発に。
私は、その身を焦がして答える。
「上等!!」
続く