表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/144

フォークダンスと貧血




輝さんと、夏海と見文と。

クラスのみんなで応援して、競技して。

体育祭も、そろそろ終盤だった。


後は、3年生のフォークダンスで、閉会式か。

勝負で負けて、怪我をして、初めて保健室にいって色々あったけど、あっという間だったなあ。


夕暮れが近くなってきた、秋の空に男女のフォークダンスがセッティングされて、風物的な感じを受けていると。



「おっ!一年坊。怪我大丈夫か?ていうか、ちょうどいい、助かった。こっち、こっち」



「はい?私?花知華先輩?ちょっと、ちょっと」



私は、急に前に現れた花知華先輩に手を引かれて、連れていかれた。

夏海と見文も、呆気に取られて。

輝さんは、まさか!?まさか!?と、絶望したような顔でこちらを見ていた。


かくして、何故か3年生だけのフォークダンスの中に、私もいた。

しかも、飛び入りで。

私、躍りしらないっつーの。


私を引摺りこんだ、張本人の花知華先輩と身体を引っ付けていた。

おんなじぐらいの背丈だから、ちょうどいい......じゃなくて!



「わ、私、男パートなんですか?先輩!」



「うん。ウチの男子1人が足つっちゃってな。可哀想に、2年待ったのにー!!って絶叫してたぜ。まー、年上の女性に翻弄されてこい、男役」



「私、.......男役なのか。花知華先輩に言われるの、凄い違和感」



音楽が鳴り出した。

私は、花知華先輩の動きに合わせて、手を合わせ、クルリと回り、足をバタバタさせた。



「おっ。飲みこみ早いな一年坊。呼んで正解だったぜ!」



「塚良日衣心です!センパイ!」



「ハッハッハッ!またな、塚!」



花知華先輩と離れ、次々と女先輩達とフォークダンスを順番に踊る私。



「あら、可愛い男の子ね」


「お名前なんて言うの?」



再三にからかわれた私だった。

いや、でも男子の先輩と踊るよりは、ハードルましかな?

しかし、めくるめくの魅惑のフォークダンスだった。



「ふぃ~終わったー!お待たせ~。ありょ、夏海、見文、輝さんは?」



「フォークダンスをしている日衣心を、凄い顔で見てたら、顔が青ざめて、.......違う.......こんなの違う!

ってブツブツ言って、倒れたから委員の人に頼んで、保健室に運んでもらったよ」



夏海に聞いて、えらいこっちゃと保健室へ急ぐ私。

なんで夏海と見文行ってあげないのよ?

と聞いたら、



「いや、日衣心行かなきゃ駄目だろなあって」



なんじゃそりゃ。

私の前に委員の人がいて、



「大丈夫、只の貧血だから少し休んだら、戻っていいよ」



委員の人も忙しいなあ......。

お礼を言って、ベッドで寝ている輝さんを見る。

もう意識は戻っているけど、何故か恥ずかしがって、シーツを被っている。



「ご、ごめんなさい塚さん。私は、その、フォークダンスをする塚さんを見ていたら......」



シーツの中から、輝さんのか細い声が聞こえてくる。




「......悔しいやら、......妬ましいやら、」



私は、輝さんの被っているシーツを引っ張って、剥いだ。

そして、輝さんを自分のその胸に抱きしめた。

輝さんは、びっくりして固まっている。

身体がガチガチだ。



「つ、塚さん、なにを.....!?」



「おわび」



「.......おわび。ですか?」



「みんないるけど、輝さんが私の一番って事」



「今?.....ですか?」



「今だけじゃなく、これからも」



「.......塚さんもっとぎゅってして」



「輝さん、痛い」



輝さんが、力強く私の腰を抱きしめる。



「ごめんなさい塚さん。でも」



完全に見えた輝さんでも、不安になるんだな。

私が原因なのか。

うれしいような、誇らしいような、恥ずかしいような。



「不安にさせてごめんね、輝さん」



輝さんの背中をさすると、強張ってガチガチだった輝さんの身体の力が抜けた。

私は、輝さんの背中をなで続けた。



「.......ん!」



輝さんから、なんだかイケない声が漏れたので、私は手を止めた。

あーこれ、夏海と見文に絶対見られちゃいけないなーと、頭の端に浮かびながらも、私は身体をモジモジさせた。

なんだか私まで、妙な気分になりかけた。

でも、輝さんがゆっくり身体を離す。

危なかった......。




「も、もう大丈夫です、塚さん。お世話様でした」



「輝さんも以外に甘えただねえ。危なかったよ」



「危なかったんですか?」



「なんでもないよ?」



口走った事を即座に否定する。

輝さんが流し目で見てくる。

さっきまでの不安定さは、どこいった。

小悪魔輝さんが、また出てきた。



「まあ、あんなダンスで気が動転するなんて。失礼しました、塚さん」



「3年になったら踊ろーね♪輝さん」




「また塚さんは、そういう.......。嬉しいんですけどね」




横を向いた輝さんの頭を撫でたくなった私だった(撫でた)





続く


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ