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3000m




「さて、お昼も食べたし私達の出番だね、輝さん」



「はい、塚さん。勝負です」



「あっはっはっ。2人ともあんま食べてなかったし、抑えて食べてたね。本気じゃん!」



「いってらー。またドラマが生まれるのか」



夏海と見文に見送られて、私と輝さんは校庭トラックのスタート地点へと移動する。

一年の女子の選抜での持久走3000m。

この間の体育の授業の倍だ。

ペース配分を少し考えないと。

おっと。

輝さんが不敵な顔をしていた。



「さあ塚さん。この前のお返しをしますわよ?今度は、私が塚さんを辱しめてみせますわ」



「りょーかい。今度も私が勝つけどね?2タテで次は何をしてもらおっか?」




負けず嫌いの2人の乙女が、先ずは視線を交わしてバチバチやっていた。

実は勝負好きな2人だった。



「位置について。よーい」



パーン!


火薬の焦げる匂いがして、スタートのピストルが鳴った。

体育祭のメンバーとして参加しているけれども、正直勝てればいいのは輝さんひとり!

ならばと、私はランナー集団の中から飛び出して、先行する。

輝さんのペースをかき乱して、あわよくばスローペースに引き摺り混もうという魂胆だ。



「つっ!」



輝さんも私に釣られてペースを上げて追いすがってきた。

自分のペースじゃないと、スタミナがすり減るんだよ、輝さん?


内心で、ほくそ笑みながら淡々とスローなラップを刻んでいく私。

一周300mのトラックを10周でゴールのところ、半分の5周の所まできた。




「ふっ!前の1500の地点で、この疲労の少なさ!ペースを握るとはこういう事よ、輝さん!」




「流石です......。流石です、塚さん!それでこそ、私が.......っあ!」




レースも残り半分というところで、アクシデントが発生した。

あ?れ?

と、輝さんに勝ち誇った瞬間、私の左のくつひもがブチブチッ!と千切れたのだった。

不幸の前触れですか?

てぐらいの勢いで切れて、私はアウチ!と派手に転倒したのだった。



「つ、塚さん!.......大丈夫ですか?」



後ろから、心配そうに走り寄ってきた輝さん。

立ち止まってしまう。

膝、擦りむいたぐらいだし、いいから行きな。

と、促しても輝さんは動かない。


そこに、ヒョイと短い髪のボーイッシュな感じの小さな女子が、トラックの内側から出てきた。

私に聞いてくる。



「棄権する?まだ走りたい?」



「.......走りたいです!」




フム。

と、頷いてボーイッシュな女子は、どこからか持っていたガムテープで私のくつひもが千切れた左のくつをグルグルと、手早く巻いてくれた。



「応急措置終わり!とりあえず完走しな!」



バシリと私の背中を叩き、笑う女子。

ボーイッシュだと思ったけど、笑うとちゃんと女の子だった。



「塚さん、走るんですね?」



「当然!」



「分かりました。全力でいかせてもらいます」




後、半分の1500mだったけど。

まあ、勝負は見えていたようなものだ。

輝さんが、私をぶっちぎって勝った。

ははっ。

ほんと全力だな。


ゴールして、勝者の輝さんとトラックの内側に入る。

すると、先程のボーイッシュで私と同じじぐらいのミニっ娘も近寄ってきて、



「オレ、花知華紗弥。体育祭の委員だ。保健室まで送ってくぜ?」



「私もついていきますわ、塚さん」




ニヤリと笑う花知華さんと、一瞬険しい目を見せた輝さんだった。

背丈がちょうどいい、花知華さんの肩を借りて私達は、保健室へ向かった。


なんだか、輝さんが歯ぎしりしている気配が、後ろからした気がした──





続く

































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