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体育祭開会




──どうしたんですか?塚さん。


こんな事ぐらいで顔を赤くして。

以外とウブなんですね?ふふふ。


私の顔に両手で触れてくる、輝さん。

.......しかし。


いやいや、輝さん。

手が震えてるから(笑)

無理は良くないよ。

だから、私からいくから、ね?


.......はい。

そのようですわね。

私といたしました事が。

申し訳ありません。

塚さんにお任せいたします。


輝さんは、その身体の力を抜いて私に主導権を委ねた。

よし。

それでは、まずは輝さんの身体を手繰り寄せ密着させて、それからあーしてこーして──




「.......ねーちゃん、なんて顔して寝てんだ。起きろよ!今日体育祭だろ!早く起きろ!」



ズガフ!



私のお留守のボディに、目覚めの弟ブローが決まった!

........ぐふぅ。

ああ、そうか。

体育祭じゃないか、今日!

よくぞ、起こしてくれた翼!



「かーちゃんに言われなきゃ、起こしにこないよ。どんな夢見たらあんな顔になんだよ......」



はて、夢?

強烈なボディーブローだったので、夢が飛んでしまっている。

どんなんだったろう?

輝さん出てたような気もするけれど......。



「とりあえず、よだれ拭けよ、ねーちゃん!」



おっと。

乙女にあるまじきヨダレ。

よっぽど美味しい夢だったんだろうなあ......。


かくして、体育祭の日の朝は私の寝坊でバタバタした始まりを迎えるのだった──




「──スポーツマンシップに乗っ取り競技します!」



パチパチと拍手をして、開会式が終わり競技が始まるので、全員自分達の席に戻る。

隣に夏海と見文が座る。

その逆に輝さんも座る。



「日衣心と豪松陰さんは、持久走だっけ?」



「うん、午後から。輝さんと勝負するんだ!」



「へー勝ったらなんかあんの?」



「負けた方が勝った方に何でもひとつ言う事を聞くのです」



「な、なんでもですか!?」



夏海と見文がグイッ!と前のめりになる。

そ、そんなにな賭けかな?



「いや、まあこの2人ならそこまでは......」



「うん。けどドキドキするのは何故。青春尊い」



訳の分からぬ事を言う、夏海と見文だった。

輝さんとドキドキする?

うん、まあ、あれだ。

積み重ねがあるだけに、とぼけにくかった。


少し涼しい秋風が、私達の腕を触っていく。

ふるりと身体を震わせるものの、競技の後ならちょうどいい心地の風になるだろう、と思った。




「んじゃ、うちら出番やからいくわー」


「2人とも応援よろ」



夏海と見文が、選抜の100m走へと出かけていった。

少し空いたクラスの観覧席で輝さんと2人で座る。


.......つい、こないだなんだよなあ。


ずっと気になってた、輝さんと話すようになったの。

輝さんって呼んじゃってるし。

輝さん、最初から好感度高いし。

私もだけど。

この先どうなんだろなあ。

ずっと仲良くしていけるかなあ。


ぼんやりそんな事を考えていたら、髪の毛に何か触れる。

輝さんの手が私の後頭部に触れていた。

私はビクリと震え、輝さんは



「あ、塚さんの頭に紅葉がついたから.....」



私の頭についた紅葉を取って見せてくれた。



「あ、ありがと.....」



私の胸の鼓動が少し早くなって、締め付けられるような感じがした。

この一瞬が切なかった。



「......輝さん。この先も仲良くしてね」



ポロリと私の口からこぼれた言葉を聞いて、輝さんはハッ!と細い狐目を開いて、全力で肯定してくれた。



「もちろんですとも!私は誓います。私は塚さんから離れる事がないと。私は塚さんに嫌われたくありません!もっと仲良くなりたいと思います」



「もっと?良かった」



私は安心する。

うん。

輝さんとずっと仲良くしよう。

そう思った。

もっと仲良くなったらどうなるのか分からない。

想像つかないけど、なれたらいいなと思った。


自然と高揚してくる。

輝さんも同じようだ。


十年来の悪友達の100m走だ。

私も輝さんも大声を張り上げて、声援を送る。



「いけー夏海ー!」


「がんばって、見文さーん!」



そうして、あっという間に午前の部が終わりそうになっていた。

そして持久走。

私と輝さんの勝負も近付いてきていた。





続く

















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