学食デビュー
やった~!!
赤点クリアしたー!
ぞくぞくと帰ってきた期末テストの答案用紙達。
それらの採点は、いずれも平均点を越えていた。
入学してからまだ1年たっていないが、平均点以下の行進だった私は、凄い快挙だった。
「ありがとう!輝さん。おかげで進級が見えてきた!補習もない!」
「うふふ。塚さんの、お役に立てて光栄ですわ。塚さんがよろしければ、まだまだ教えて差し上げますが?」
「ほんと?ありがと、輝さん!」
心強いなあ。
でも自力も忘れちゃ駄目よね。
うーん。
輝さんにお礼したいなあ。
なんかないかなあ?
なんて考えてたら、あっという間にお昼休みの時間になっていた。
「さ、学食行くか。夏海、見文?あっ!しまった!」
夏海も見文もお弁当箱を開けようとしている。
日にちを間違えたのは、私だった。
学食の日は、明日だった!
あ~。
学食、ソロデビューかあ~。
したくないよ~。
斜め前の席に目が行く私。
輝さんと、バッチリ目があった。
どうしたんですか?
と、輝さんは目で聞いてくる。
私は輝さんの様子をうかがう。
輝さんは手ぶらだ。
私は、輝さんがまだ購買にパンを買ってない、とみた。
今日は、私から斜め前の席の輝さんの席に、ヒュラ~リと、接近した。
「輝さん、ひょっとしてまだお昼買ってない?」
「ええ。今日はまだ、購買でお昼を買ってないのです」
「やった!輝さん、私と一緒に学食いかない?」
「学食ですか!?実は私、学食というのをまだ体験した事がないのです」
お恥ずかしながら。
と、輝さんは頬をさする。
うん、これだ。
「よし!一緒に行こう輝さん!学食!」
輝さんの学食デビュー。
気のきいたお礼の代わりに、私が学食をナビゲーションしよう。
そして、私のソロ学食デビューは立ち消えになった。
これでいいのだ。
──人だかりのする学生食堂。
私達は、食券の販売機の列に並ぶ。
私は輝さんに確認する。
「輝さん、小銭持った?メニューも先に決めていた方がいいよ。早さが命だからね、モタモタしたらドヤされちゃうから」
「はい、塚さんと同じメニューにしますわ」
順番はあっという間に私達になる。
.......ラーメン大盛と。
ガシャン、コン!
緑の食券が出てくる。
「ええと。ラーメン大盛......?」
ガシャン、コン!
オレンジの食券が出てきた。
輝さん、間違えて、ラーメンの並盛を押した様だ。
私が、取り替えようか?
と、聞いたら輝さんは、私は少食ですから、ちょうどいいです。
と、笑った。
「はい。ラーメン大盛と並盛、お待ち」
学食のおばちゃんが、用意したトレイに、それぞれ置いてくれる。
後は、席が......!
ちょうど2人分空いていた!
「輝さん、席確保!」
「は、はい!」
無事、席を取れてラーメンが伸びないで済んだ。
さて、胡椒をたっぷりとふって......?
輝さんも、私を見て真似る。
「いただきます!」
熱いところを、一気にすする!
.......ズ、ズズ!
輝さんも、すする!
.......ズズ!
「こ、これは!」
輝さんが驚く!
私はニヤリと笑って輝さんに告げる。
「学食名物、ラーメンぽくないラーメン!その麺はさながらうどんの様に太い!.......私のお気に入りだよ?」
輝さんは、いつか見た微妙な笑顔をした。
その笑顔は、苦笑いという──
私は気づく事はなかった。
続く