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入学式とお祝い稽古





満開の桜が咲いている。

新入生達を祝うように、校門の門扉の両隣に見事に咲き誇っている。

正に桜の門だ。

その桜の門を潜って、真新しい制服に着られた感じの新入生達が見える。



「いやー入学式の時、桜の門は感動したよなー。すんごい雰囲気あるもんね」



「そうですわね、おひいさん。雨も降らず入学式までに散らなくて良かったですわ」



「懐かしいなー。桜の花びらが降り注ぐ輝さん」



「?入学式ですわよね?おひいさん」



「綺麗だったなあ.......今、思うと一目惚れだよね」



「どっちがどっち?........どころではなく、完全におひいさんが見初めてましたのね.......それは分かっていましたが、まさか入学式でとは」



「輝さん、今の方が綺麗になってるからね?」



輝さんが私を見る。

私も輝さんを見返す。



腐れ縁の旧友の夏海と見文が、呆れて間にズズイと割って入る。

そして私達を誘導してくれた。



「はいはい時と場所を選ぼーな?少しは学習しろ」

「ほら、体育館行くよー2人とも」




──「新崎。頭に桜の花びらついてんぞ」



「あ、ありがとーございます!京子先輩!」



「お、おま!こら!すぐ抱きつこうとするな!ほんとワンコだなお前は!」



「わん♪わん♪」



目の前の、京子ちゃんと人世ちゃんのちょっとしたひとコマを見ていて頬が緩む。

体育館から移動してきた昼下がり。

ここは、走馬研究会の部室。

新入生の各部の勧誘を潜り抜けてきて、部室でひと息ついているとこだ。



「では人世。これが入部届けです」



「はい。輝先輩」



「........」



何か思うのだろう京子ちゃんの無言。

人世ちゃんが、そんな京子ちゃんを見て何でもないように言う。



「後悔なんてしませんから大丈夫ですよ?京子先輩」



「.......しかしなあ」



「京子先輩は重く考え過ぎです。ここに決めたのは、私の意思です!こういうのはインスピレーションで、スパー!と決めるもんですよ!」



「そ、そうかも知れんが......」



「京子先輩は、文化祭の時の出会いを否定しますか?私と出会わなければ良かったと思います?.......私は、否定しません」



「........私も否定では無いが」



人世ちゃん本当に年下とは思えない、良い大器だ。

思わず拳を握ってしまった。

輝さんがジャッジマンをする。



「京子。貴女の負けよ」



輝さんが、人世ちゃんに入部届けのサインを受けとる。

京子ちゃんは、真顔だ。

私も、そろそろ口を挟んどこう。

最初から考えていた事を、私は場に合わせて流す。



「まあ、まあ、否定しても。現実にもう目の前な訳だし。時間は止まらないし、つまるところ人生、出会いと運な訳だ、人世ちゃんに京子ちゃん」



皆のお祝いの文房具やら何やらを抱えている人世ちゃんに向けて私は、更なるお祝い稽古の誘いをかける。

もちろん京子ちゃんにも発破を掛けるつもりだ。



「重いも軽いも結構!上手く行けば良しだ。だけれど、出会いから始まり運を掴むのは、蓄積された経験とそれに裏打ちされた読みだ。その読みを鍛える部だ。そして勝負をするのは、読んだ己の読みに賭ける胆力だ。試してみない?後輩達」



「おひいさん。戦るのですね?」



私と輝さんがうっすらと笑う。

人世ちゃんの瞳が光る。

モヤモヤしているであろう、京子ちゃん。

その京子ちゃんが私に問う。




「春で4月というと?なんですかね会長」



「牝馬クラシック桜葉賞だね」



「やりましょー!会長!やらいでか!」



京子ちゃんの霧を晴らす為でもある、景気づけのお祝い稽古。

人世ちゃんの、高らかな快諾を受けて、日曜日に集まる事となった。


さーて、久しぶりのお馬さんだ!





続く





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