幼なじみと初詣
──ん。
目をうっすらと開けつつ、ゆっくりと口を離す。
私より少し背の低い見文の肩に置いた手を離す。
満足げな顔の見文が見える。
灰色の長いダッフルコートから見文の白い手がのびて、横並びになって手を繋ぐ。
私はいつもの様にジャージにダウンコートだ。
見文とはガキの頃からの付き合いだけど、オシャレにしては色々言われたもんだ。
ちゃんとすれば、綺麗なんだから。
横の恋人に、最初の頃はよく言われたもんだ。
その甲斐あってか、ダウンコートを着るようになったんだぜ?
ジャージは譲れんけど。
それにお姫様はキャラじゃねえ。
お姫様は見文だけで十分だ。
「夏海と2人だけで初詣来るの、いつ以来かしらね」
「そうだな。去年は日衣心がインフルエンザで居なかったけど、輝さんがいて。でもそれ以前は、いつも日衣心と3人で来てたから......本当、いつ以来だ?」
「日衣ちゃんは小学3年の時から一緒だから、8年以上前になるのかしら?」
「そんなにか!」
「長い付き合いよねえ。夏海とこういう付き合いになったのは、中学の卒業からだけど」
「途中まで、只の幼なじみだったんだけどな」
「夏海の卒業式での告白可愛いかったわよ?」
「い、言うな!」
私は慌てて、見文は嬉しそうに笑う。
なぜかこの娘の前じゃキャラが崩れる。
肝心な時に特に。
惚れた弱味だろうか?
「夏海が、私の視線に分かってくれて嬉しかったよ?」
「まあ、あんな顔されちゃあなあ........」
日衣心が輝さんに向けていた視線と被る。
逆も同じで、輝さんも日衣心を見ていた。
互いに互いを知らず見ていた目線。
誘うような、何処かにさらってしまわれそうな視線。
見文の眼を知らなければ、分からなかったろうな。
「小さい時からの仲だけど、でも私の気持ちが友達を越えてきだしたのは、日衣ちゃんと3人になってからかなあ。」
「以外と独占欲強かったんだよな。いてっ!」
キュッウと、頬っぺたをつねられて。
まあ、1人より2人。
3人より2人って、誰か言ってたもんな。
別に日衣心が悪い訳じゃねえ。
「だから日衣ちゃんが、輝さんと結ばれて良かったと思うわ」
「........」
手が強く握られる。
ああ。
私達が付き合っているのを隠していたのは、やっぱり後ろめたかった。
だけど、独占欲だけってんなら、とっくに2人ぼっちになってたろうさ。
でも私達は、日衣心も含めた3人でも居たかった。
勝手な話しだけどな。
「まあ私ら、あの2人の事、よくも茶化してきたよな」
「ええ。時分達の事は伏せてね」
行いとしては地獄行きだな。
だけど、他人の恋路は楽しいのも否定しない。
いつの日か、日衣心、輝さんと私らのガールズトークでコイバナが来たら、腹をかっさばいてまな板の上の鯉になろう。
もちろん、隣の見文も一緒に。
そんな覚悟をしながら、見文に訪ねる。
「で、なんで日衣心と輝さん居ないんだ?」
「風邪を引いたそうよ。ナイトプールの帰りにみぞれに降られて」
「なんだいそりゃ」
初詣を済ませて私らは、ゼリーでも買って付き合いたてホヤホヤの2人に差し入れをしながら、からかいにでも行こう。
私と見文は、そこにあるコンビニに入っていった。
続く