勝負ではなく
太鼓のバチがスッぽ抜けてる。
後ろのギャラリーに飛んでいく!
人世ちゃん、ナイスキャッチ!
液晶にタッチする自分の両手がクロスする!
「ぐぇっ!」
1人でセルフラリアットで首が絞まる。
降りてくる指示通りに足で踏むゲームでは、皆ほんとにダンスを踊っているようで.......。
輝さんも、やっぱり武道家。
私と同じ初めてでも、体のキレと反射神経が違った。
「く、くぅ~。私だけが~って!うわっ!」
息が上がり、もたついた足がもつれて転倒。
隣の輝さんに被害が及ぶ。
「い、痛ったあ~。ごめん、輝さん大丈夫?」
「構いませんわ」
そういう輝さんの顔がちょいと赤い。
輝さんが喜んでる......。
私は、輝さんにのっかかる形で覆い被さって。
柔らかいけど、筋肉の張りが芯にあって......。
「勝負師の生き様というか、生き恥ですね会長」
京子ちゃんの、白くて鋭利な視線と罵倒を受けて立ち上がる。
そうだよ、今日は4人。
輝さんとくっつくのは控えないと。
でも、輝さんが一瞬でカッとなるのが分かる。
私はとっさに、輝さんの手を握り制する。
「リズムを取るのは不得手でさ。得意分野が強いのは普通じゃない?京子ちゃん」
「分かったっすよ。じゃあ、走研らしくあれで勝負しましょう!」
バンバアーーン!!
京子ちゃんの指差すその先には、小さな競馬場が!
小さな馬のコマが揃っていて可愛いらしい。
ゲームコーナーの一角をしめるメダルゲームだ。
「......なるほど、走研らしい。これならメダルだしいいか。でもその前にお昼しよっか。体動かしたらお腹減ったでしょ?」
私は、輝さんの手を繋ぎながら、ニッと笑う。
輝さんの手のひらを指でなぞる。
「は、はい、おひいさん」
「さんせ~♪」
「分かったっす」
──季節外れの、カラフルなパラソルが刺さったオープンテラス。
安い白のプラスチック製の丸い机が、パラソルの重さで固定されている。
「ほらよ。もってきな」
焼きそばに、明石焼きを全員ご馳走になる。
店長に礼を言い、席に着いて食べ物を各自手にする。
店長は、輝さんの手を繋いだ私の手を見たけど、何も言わなかった。
さあ、いただきますしよう。
「その前にすんません。会長にお姉さま。頭きて、ついあんな事を.......」
「きょ.......うひっ!」
輝さんの手の、指と指の間を撫でた。
ここ、弱いねえ。
「そーですよ西崎先輩!先輩に対する態度じゃなかったです」
何故かブー垂れる人世ちゃん。
「うん。大丈夫だよ京子ちゃん。あれぐらいで気にしないし。だから食べよう!そして、午後も遊ぼう!」
『いっただきま~す♪』
めいっぱい焼きそばと明石焼きを、ほおばる後輩たち。
「あ、あの、おひいさん......」
「.......うん。大丈夫そうだね輝さん。嬉しいけどね」
スッと、握っていた輝さんの手を離す。
私達も、少し遅れて食べ始めた。
続く