待ち合わせにお洒落をして
「姉ちゃん、いってらー」
弟の翼に、適当に見送られて家を出た。
ぬぅ。
弟へのお土産は、適当に決めよう。
ぴぅ。
と、秋の空っ風に吹かれて心地いい。
なんだか人肌寂しく、背中を丸めてキヒヒッと待ち合わせに急ぐ。
今日は、晴れた日曜日。
私と輝さん、京子ちゃんと人世ちゃんの、4人で遊びに行く1日だ。
ダブルデートじゃないですか?
と、輝さんに突っ込まれたけれど、私と輝さんならいざ知らず、京子ちゃんと人世ちゃんは、どうだろう?
いい先輩後輩の間柄になってくれたら、いいなとは思うけど。
デートってのは、早い.....いや穿ち過ぎじゃないかな?
と、つらつら輝さんとのやりとりを、思い返しながら歩いていると、約束のアミューズメントパークの入り口の前に着いた。
前方からよく知る声がかかる。
「こっちですよ♪おひいさん!」
手をふりふり私を迎えてくれたのは、輝さん。
白のトートバッグを肩にかけて、ベージュのコートが眩しく、長い黒髪と対比して、よく目に映る。
高い背にも似合っていて、とても綺麗だ。
私は思ったまま口にした。
「輝さん、何時にもまして綺麗だね。よく似合ってる」
「あら♪ありがとうございます。おひいさんもスポーティーで格好いいですわ」
テレテレと、輝さんが照れながらも私のラフな灰色のパーカーに黒のキャップを誉めてくれる。
流石、輝さん。
私も、テレテレとなる。
.......そんな私を見る冷ややかな視線を感じて、チラリとそちらを見ると......京子ちゃんだった。
京子ちゃん、もう来てた。
しまった。
今日は2人だけじゃなかったをだ。
き、気まずいとこ見せてしまった......!
はて、初っぱなからどう挨拶しようかと、苦笑しながら考える私だが、京子ちゃんの横からヒョッコリ可愛らしい人影が出てきた。
「西崎先輩、そんな冷たい目しちゃ駄目ですよ?」
緑と黒のチェックのモコモコしたセーターが、京子ちゃんに声をかける。
人世ちゃん!
全員揃ってた!
「ご、御免!私が待たせて!」
「そうっスよ。早く中に入りましょう」
「もー西崎先輩。先輩方にきく口の聞き方じゃないですよー」
「お前が言うのか?新崎」
「えへへっ。それはそうと、西崎先輩は赤が似合うんですね♪バッチリ決まってますけど、もう少し明るい赤もいいかな?と、思います」
少しくすんだ色の赤いセーターを着ている京子ちゃん。
私も口を挟んだ。
「私もそう思うよ」
「京子お似合いよ」
輝さんも挟んだ。
全員から言われると思わなかった京子ちゃん。
少し下を向きながら、照れを隠す。
「あ、ありがとうございますっス」
赤いセーターの京子ちゃんの腕を取る、モコモコした人世ちゃん。
うん、ありがとう人世ちゃん。
先を行くその2人の姿は、尊さを感じさせた。
「新崎。調子良いことばかり言うなよ?」
「?西崎先輩、素敵なのは変わりせんよ?」
無自覚なのか、一枚も二枚も上を行く人世ちゃん。
多分、赤くなったんだろう。
京子ちゃんは、下を向いていた顔が、今度は横を向いた。
恥ずかしんだろな......。
「さて、私達も参りましょう。おひいさん♪」
私の腕を取る輝さん。
それに歩を合わせる私。
「そうだね。今日は皆で楽しもう!」
空いた片手を、京子ちゃんの腕に絡める私。
「ちょ、ちょっ!周りの迷惑ですって!?」
「わーい♪」
はしゃぐ人世ちゃんに、目を白黒させて赤い顔を隠せない、京子ちゃん。
ふっふっふ!
今日は始まったばかり!
続く