天王杯、決着!
「さあ、最後の直線だ!中団前目につけていた馬が先頭に殺到する!横一杯に広がってラストスパートの開始!ムチが入る!追い出してきた!」
カメラが横からではなく、ほぼ正面から直線の芝を捉える。
良い逃げに見えたエヒメロドリゴと、ロードカタナのセーフティリードもそんなに無い!
射程圏内だ!
行ける!
後は.......エムエムカゲキオー!
花知華先輩と目が合う!
2人でニヤリと笑い合う。
「追い込めー!!」
「差せー!!差せー!!」
「ノコシテ!!」
「ああ!無理っ!!」
私達も、ギャラリーも、自分の応援する馬の走りのみを見ていた。
激を飛ばしていた。
「直線残り200m!ここで捕まえた!捕まえた!逃げるエヒメロドリゴを捕まえて、先頭に躍り出たのは、エムエムカゲキオー!」
花知華先輩が叫ぶ!
「よっし!持たせろ!!」
そのカゲキオーの後ろに桃色の騎手帽子!
私の馬だ!
詰めてきているサンジンドトウ!
私も叫ぶ!
「差せー!!鼻差でいい!!」
馬群の中から、2頭。
抜け出たエムエムカゲキオーとサンジンドトウ。
この2頭が競り合う形になるかと思われたが.......。
エムエムカゲキオーが、サンジンドトウを突き放しす!
最初の位置取りが響いたか?
いや、これは.......。
.......強い!
この馬は強かった!
ここまで抜きん出られるとは読めなかった!
「詰めるサンジンドトウを1馬身突き放して、今1着でゴール!!強い!これは強い!エムエムカゲキオー!!」
たった、1馬身だけど。
詰めるには余りに酷な1馬身に感じた。
惜しいように見えるかも知れないけれど、ひっくり返せない1馬身だ。
勝負づけはついたようだ。
恐らく、ドトウはカゲキオーにこの先勝てない。
そう思わされた。
「へっへーん♪今回もオレの勝ちだな塚!」
「私は、まだ先輩に勝負づけされてませんからね.......」
まだ私の心は、先輩に屈服していない。
この人にはもう勝てないとは、まだ思っていない。
「おっ。3着入ってんじゃねーか」
おっちゃんの1人が、指摘する。
えっ?
あっ!?
熱中し過ぎて見ていなかったけれど.....。
スローリプレイの画面が映し出されている。
1着エムエムカゲキオー
2着サンジンドトウ
3着ドウデイ
あー!!
人世ちゃんの、3着までに来ればいい複勝が当たってるー!
「あっ、私?あははっ♪わーい!当たった!当たりだー!」
人世ちゃんが、京子ちゃんの手を取り嬉しさの余り、ポニーテールを揺らしながら小躍りし出す。
「お、おい!分かったから!嬉しいのは分かったから!」
京子ちゃんが引きずられっぱなしだった。
人世ちゃん恐るべし。
私と花知華先輩の2頭は抜けていたけど、後1頭を当てるのは、至難の業だったと思う。
そこを引いてくるのは......。
なんというビキナーズラック。
お見事としか言えない。
「なんかとんでもねー、娘拾っちまったかもな?」
花知華先輩が笑う。
私は同意して笑い返した。
「あーダメだコリャー」
「ダメですわねー。箸にも棒にもかからなかったですわ」
輝さんとアンナ先輩が、机に顎を乗せて伸びていた。
うん、そういう時もあるよ。
そういう時は、抜け出すのは足掻くしかないんだくど、まあお疲れ様でした。
「おっ!政さん!今年も当たりかい!?」
あっ、政さん、おめでとうございます。
今回は安いでしょう。
「当たりは当たりだけど、馬連で4.5倍だ.....。6頭BOXの15点だから、取って損。トリガミだなあ.....でもよ?」
「でも、なんだい政さん?」
「いや、もうこの先、カゲキオー、ドトウだけでいいんじゃねえかって気がするんだよなあ.....」
政さんが、この2頭でこの先どれぐらい稼げたかは、私達は知らない。
でも、政さんもいい目してるね。
「......さて!ということは輝さん?」
「勝者チームは2チーム!1着的中、花知華先輩組と、3着的中、京子ちゃん後輩チーム!と、なりました!」
どっ!
今年も負けたなあ!嬢ちゃん!
去年の結果を知っている、おっちゃん達がウケる。
くっ!
傷口に塩を塗る笑いだ......!
腹立つなあ!
「と、という訳で、勝者チームは敗者チームになんでも何か1つ命令できます.....って、これ敗者チーム2回命令されんのか.....1人ひとつじゃなくて、1チームひとつと言う事で」
「アンナ、オレが決めていいか?」
「ハナチカのお好きな様に」
先輩チームはあっさり決まりそうだけど.....。
後輩チームは?
京子ちゃんが、すっとんきょうな声を上げて、
「は、はあ!?お前、何言ってんの!?」
人世ちゃんと、揉めてた。
続く