表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/144

謝罪と弁明




む~、朝だ。

目覚ましのアラームを止める私。

私は、朝のこの意識がどちらとも判然としない、ぼやーとした感覚が、どちらかというと好きだ。

意識がはっきりしてしまえば、とかくこの世は世知辛い。

昨日の、輝さんの恥ずかしそうな、赤くなった顔を思い出した。


目が一発で覚めた。

あー、恥じらう輝さん、可愛いかったなあー。

こんな事を輝さんに対して思うのは、不埒である。

なんか、顔が熱くなってきたか、顔を洗おう.......。



パシャパシャパシャ。


一階に降りて、洗顔する。

やっぱり、自分の顔が赤くなっていたのが、洗面台の鏡で分かる。

気になっていた女性だけど、ちょっと気にしすぎだ。

なんにも考えないようにして、朝食をすまして登校の準備を済まして、玄関でローファーをはく。

バタバタと、後ろから弟の翼がランドセルを背負って狭い玄関で、私を追い抜いていく。



「ねーちゃん、遅いよ。とろとろして、天然さんじゃないんだから!」



「な!そーかも知れなくて気にしてる事を!姉に対してその口の聞き方!帰ったら覚えてなさい!」



小学6年生になった弟の翼は、日に日に生意気になってくなあ。

弟も可愛いもんだけど、姉妹ってのも憧れるなあ。

姉弟で育ったから、私も男っぽいとこあるもんなあ。

夏海と見文には負けるけど。



チリリンと自転車に乗って、登校ルートを走る。

もう10月だけど、風がやっと涼しく感じる気候だ。

地球温暖化っていうけど、灼熱化ってぐらいの体感だけどなあ。

四季なくなるんだろな、多分。


そんな事をつらつら思いながら、前に輝さんの姿が見えた。

やっぱり初めてその姿が目に止まった時の様に、凛とした佇まいで、登校の同じ制服を着た生徒の、雑踏の中から、輝さんは見て取れた。


.......どうしよう。

いや、考えちゃ駄目だ。

勢いのまま声をかけよう。



「お、おっ、おっはよー♪輝さん!」



「.......お、おはようございます」



輝さんは、顔と体はこちらを向きながら、目だけが逸れていた。

私も、かなり詰まってしまった。

1日たったら大丈夫かな?

と、思ったのに!



「て、輝さん、いつも徒歩だっけ?この時間って会うの初めてじゃない?」



「はい。たまにこの時間で一緒になる事はありましたけど、声をかけてもらうのは初めてです」



「あ、あー、友達になるまでも、あったね」



「はい。凄い熱い視線で......」



「あ、あー、」




少し無言になる、私達。

自分の言動で、穴があったら入りたい。

ま、まだだ.......!



「い、いやー輝さん、凄い綺麗だから!いや、姿勢とか凛としてて!皆の中にいても、1人だけ目に飛び込んでくるというか!ていうか......」



「あ、ありがとうございます........」



喋れば喋るほどドツボだった。

輝さんは下を向いてしまったけど、耳が凄く赤くなっている。

私も、口を真一文字に結ぶ。

目の前に、小学生の低学年の男の子と女の子が横切る。



「はい、こうじ君あ~ん♪」



「むぐむぐ。はい、マリちゃんありがと~」




ランドセルを背負って、クロワッサンを食べさせているシーンが目の前で広げられた。

うん、そうだよね。

誤魔化しちゃいけないよね。

というより、これ以上は気まずくて死ねる。

私は意を決して口を開く。




「輝さん、昨日はごめん!衛生的にどうかだし、この年齢であーん♪てのも、そのカップルみたいな事して......」



「........いや、その。嫌じゃなくて.......嫌じゃなかったです」




「だから、ごめん.......って、ええ!?」




予想と違って、肯定が反ってきて思わず聞き返す私。

そんな、顔を朱に染めて顔をそらしながら、恥ずかしそうに肯定されると.......。



「よかったんだ?」



「......はい」



「どんな気持ちだった?」



「......恥ずかしかったです」



「恥ずかしかったのに、よかったんだ?」



「は、はい.......!」




──「おー、日依心。おはよー」


「おはよー、っておお!豪松陰さんも!おはよー」



.......はっ!!


夏海と見文!

私は何を!?


我に帰って、私はキョロキョロとした。

輝さんと、夏海と見文が挨拶をして、喋りながら前を歩いていく。

ぼーぜんとしながら、立ち尽くしていると、



「何してんのさ、日依心。おいてくぞー」



3人とも、こちらを向いて笑顔で手招きする。

輝さんの顔を除くと、笑っていた。

.......けど、耳は赤かった。

私の中の何かを起こしそうになった、輝さんのその笑顔を見て、私は独り言をつぶやく。



「私もアレかも知れないけど、輝さんもけっこう魔性だと思う」



まあ、気まずさは、クリアしたからいいかと思い直し、自転車を押しながら、待ってよー!

と、3人を追いかける私だった──






続く














評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ