ご飯とご飯
「ペース配分もへったくれも無いわよう」
この後、勝てる気がしないと言っていた見文。
だけど、私と輝さんの応援に答えるように、2回勝ち残ったけれど、残念ながらそこで敗退した。
「現役のテニス部員を、ここまで削り取ったのは、日依ちゃん達なんだからね」
「全くだ。決勝もいかず、こうしてお昼を囲む事になるとはな」
「ひひっ!恐れ入りますw」
「お、おひいさん。ひひっ!って」
かしましくも乙女達は、お弁当箱を開ける。
パリッ!
と、1人だけサンドイッチだけど。
「輝さん、安定のパン食だねー?」
「はい。煩わしくなくて楽なので。好きです」
「ひ、日依心!その弁当は一体!?」
夏海が私のお弁当箱を覗いて、ショックを受けたように驚く。
箱いっぱいの焼き色のついたご飯。
そのご飯を、レンゲを使って口に運ぶ。
「いやあ。最近、プロの中華屋さんがチャーハン炒めてる動画ばっかり見てたら真似したくなっちゃって♪朝から、鉄鍋振っちゃった!」
「......おおう。乙女色じゃねえな。私のがまだマシだ。キャラ的に、私のがそっちなんだろうけどな.......」
「おひいさん、無心で見ていましたものね」
「夏海、はい揚げ餃子」
「ん、んぐ。お返しに、ミートボールだ」
「うん、おいし。これぐらいなら、輝さんと日依ちゃんの前でも、もう隠す必要ないものね?」
うーん、夏海と見文のイチャこらを見せられてしまった。
なんか、安定感ある食べさせ合いっこだったな。
抜かりの無い熟年カップルめ!
自分の甘さを悔いる私。
........チョン、チョン。
ぐぬぬっ!
となっている、私の肘をつつく輝さん。
振り返ると、輝さんが小さなお弁当箱を持っていた
。
「パン食の輝さんが!?」
「いつか、おひいさんとお弁当の交換をしてみたくて作ってみました」
「交換専用のお弁当!?」
カパッと蓋を開ける。
「オムライス!!チャーハンとで、炭水化物の交換!」
「申し訳ありません、おひいさん。被ってしまいました」
「ううん、全然?私、米大好き。んっ、んぐ。うん、おいしいよ!輝さん」
ケチャップのかかった部分のオムライスを食べる。
そんなに量も無いので、食べきるのも苦ではないだろう。
「へぇ。日依心も男前だねぇ」
「ほんとねぇ。あの日依ちゃんが」
なんか輝さんに聞かせたくない昔話とかされそうな気がしたので、照れくさいのを隠すのも手伝って、
輝さんにチャーハンを進める。
「ん、むぐ。美味しいですわ」
「へへー、パラパラでしょう♪」
「間接キス......」
「あはは......そうだねえ。って、今さら......」
なんか、じわじわ恥ずかしくなってくる。
ニヤニヤしている夏海と見文。
そんな見ないで!
──顔も火照る、ご飯も食べ終えてゆっくりする。
心地よい風が入ってくる中庭で、ゴロゴロする私達。
「そういえば見文さんはテニス部でしたけど、夏海さんは何部なのですか?」
「ああ、私はバスケだよ。ハハッ!2人とも球技だから、この球技大会は独壇場になる予定だったんだけどな!」
「ああ、輝さん知らなかったっけ。でも、バスケとテニスで、テニスで良かったの?」
「あら、そうね。良かったの?夏海」
「まあなー。テニスでダブルスのが対戦しやすかったってーのがあるし、一緒にやる時は見文にリードしてほしいんだよな、私」
「いつも、私からいくものね」
付き合って、どれぐらいなんだろう?
深いなーと聞いている私。
横で輝さんがウンウンと頷いていた──
続く