続けラリー!
お天気も良く、絶好の球技大会日よりだった。
昨日の名残で多少の悶々とした気持ちを引きずってはいたけれど。
「おっ、日依心!1回戦の初っぱなだなあうちら!」
「後の事考えずに全力でいかせてもらうよ?」
「ふふっ。日依ちゃんと相手出来るなんて、輝さんのおかげね♪」
「おひいさんとの初タッグ。勝たせてもらいます!」
四者二組のダブルスは、テニスコートに入っていく。
3ゲーム先取戦。
勝負だ、夏海、見文!
「いくよ?日依ちゃん、輝さん!」
見文が一発目に、ジャンピングサーブを繰り出した!
げっ。
反応出来ない。
白線ギリギリをついてくる。
輝さんでも間に合わない!
「0-15」
見文のサービスエース。
あっさりポイントを先取される。
「流石は、部活で現役のテニス部員の見文!」
「おひいさん、初耳なんですが......」
「部員の中でも上位だなあ。うちの見文は!」
「じゃあもう1本!」
ズバア!
空気を切り裂くジャンピングサーブ。
しかし、今度は輝さんが反応してバックハンドで、リターンする!
「1度見て、もうあの玉のスピードに慣れた?しかし、リターンは上ずったな!」
返すには返せたけれど、浮き球を高身長の夏海がスマッシュで捕らえる!
夏海が球を打つ瞬間、私は肩幅に広げた両足で軽く飛び、着地と同時に球の軌道を見て横に跳ぶ!
ズバン!
夏海のスマッシュをリターンする。
返せた!
しかも、ネットに当たり相手コートに落ちる。
ラッキー♪
「15-15」
同点だ!
「ス、スプリットステップ!輝さんはいざ知らず........日依ちゃんのポテンシャル!」
「ふっ!ネットで調べた!」
「それで出来るのが凄えんだけどな」
「おひいさん、素晴らしいですわ!」
宣言通りの、お互い最初から全力のクライマックスだった。
後の事なんて知るか!
一進一退の攻防は続く。
そして、ラストゲームにもつれ込みアドバンテージ、ジュースが続く。
「こ、ここまで良い試合になるとは正直思わなかった!本気でやって、ここまで食いつかれるとはね」
「運動部2人相手にな」
最後のゲームのジュース。
2ポイント連取がきつい!
輝さんの檄が飛ぶ。
「もう少しですわ!おひいさん!」
「よっし!来い!」
ズドン!
夏海がトップスピンをかけて跳ね返してくる。
足を浮かせて着地と同時に......足が動かない!
し、しまった!
アドバンテージを取られる。
私の足が止まってしまった。
「ふふっ、ようやくね。日依ちゃんポテンシャルは凄いけど、やっぱり文科系だもの。体力が尽きたようね!これで!」
見文が、最後のジャンピングサーブを放つ!
ビシィ!
輝さんが返した!
「まだ私が居ますわ!おひいさん!」
夏海がボレーで返してくる。
動け!
今だけ動け!
私の足!
バシッ
私のヘロヘロのストロークは、ネットに当たり。
自軍のコートに落ちたら。
「ゲームセット」
審判に告げられて、私は力尽きてフニャフニャとその場で座り込んだ。
「いい根性だったな日依心!やっぱり運動部に来たらモノになったぜ?」
「ふふっ、この後の試合勝てるしないわ。私も半分力尽きてるわ」
「コートを出ましょう、おひいさん」
動けない私を、輝さんがおぶってくれる。
私は自分が少し情けなくなる。
「ごめんね、輝さん。勝てなくて。おぶってくれて」
後頭部しか見えないけど、輝さんが笑った気がした。
「現役の運動部相手に、ここまで出来たのですから胸を張っていいですよ、おひいさん」
「うん。ありがと」
「そうすれば、おぶっている私の背中に、もっとおひいさんの胸が当たりますわ♪」
輝さんの首筋に軽くチョップを入れる。
どーした輝さん?
だけど、そんな輝さんの言葉にクククッ!
と、笑いが出てしまう。
2人で、負けたけどクスクスと笑いながら
コートを出ていった。
ありがとね、輝さん。
続く