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悪役令嬢がやってきた



「どうか学園に来ていただけませんか?!」



高貴な方ご指名だと呼び出されたので商会の応接間に行ったらいきなりからまれた。


うおぉ、すげぇ美形カップルだ。眼福だわー、さすが高貴な方。


「あなた元日本人でしょう?」


反応に遅れた私を気にせず女の人が質問を重ねる。


「えーと……」


あわてて部屋を見渡すも私たち三人しか居ない。

こんな話するくらいだからこの人たちも日本のこと知ってるんだろうけど、他の人に聞かれたくない。


「日本の記憶はあります…貴女もですか?」


問うと、美女はカミラと呼んでくれとのたもうた。

ええ、お貴族さまを呼び捨てなんて無理だよ。


「構いません、ここには私たちしか居ませんし。この子は弟のギルです。」


「ギルバート・ノアと申します。初めまして。」


隣の美男から手にキスされた。


「これはご丁寧にありがとうございます?フィービーと申します。カミラさん、ギルバートさ…ん?ノア…ノア家?」


「その様子ですとゲームの記憶もありそうね?」



おおう、悪役令嬢と攻略対象がやってきてしまったぜ。



カミラさんも数年前に日本の記憶を思い出して、悪役令嬢なことに気が付いたらしい。


ただざまあもないヌルいゲームだったし、ヒロインの親友ポジ狙ってニヨニヨ近くで恋愛劇場見るつもりだったんだって。


ところが侯爵家にはいつまで経ってもヒロインが引き取られた様子がないし、商会を調べたら転生者丸出しでお菓子販売はじめてるしであるぇー?てなってたらしい。


乙女ゲーム知らない転生パターンか?と残念に思いながら学園生活を送っていると突然王子の取り巻きに絡まれた。


何故ミアを目の敵にするのかと。


「全く注視してなかった田舎の男爵家の令嬢ですわ。もちろんお話したこともありません。」


去年男爵に引き取られた初心者令嬢ミアさんは私のひとつ年上で今年入学し、令嬢らしからぬ天真爛漫さで王子様周辺をうろちょろしているらしい。


なんか聞いたことある話だな。


「彼女自分がヒロインだと勘違いしていますのよ!?『どのゲームだか知らないけど、ピンク頭の元気ヒロインって鉄板よね♪』と呟いていたのをうちの斥候が聞いていますわ!」


なんで学園に斥候がいるの?おかしくない?


「そんなのヒロインとヒーローのラブラブ話ゲットするために雇ったに決まってるじゃないですか!なのにヒロインもどきのせいで無罪の証拠集めばっかり!!」



「可憐なヒロインとのじれじれ恋愛が見たかったのに、エセヒロインとのざまあ対決なんて…あの子間違いなく卒業式での断罪狙ってるわ!騎士は満更でもない顔で鼻の下伸ばしてたし、万が一殿下が落ちてしまったら無実の証明なんて役にたたないかもしれないでしょう?

逆ざまあ出来ればいいけれど、このまま国外追放や投獄されてしまうんじゃないかと気が気ではないのです」



真っ白になりながらカミラさんがまくし立てる。

うん、よくある悪役令嬢の末路ですね…



「私はかなり前から美しい恋物語がはじまると聞かされ続けてきたのですが、正直信じていないまま姉に付き合ってきました。今日はどうしても行くと言って聞かない姉の護衛気分でついてきて、少なくとも同じ物語を知っているフィービーさんがいるということは妄想ではないと理解しました」


だよね、いきなりそんなん聞いても頭おかしいとしか思えないよね。


「ギルバート様は、その、ヒロインもどきに恋愛感情はないのですか?」


悪役令嬢の弟って攻略対象のパターン多いから絶対ちょっかい出してるよね。


「そうですね、一度声はかけられました。ただ姉に酷い目に合わされてないか、あなたが心配だと意味不明なことを言うのでそれからは避けています」


「悪役令嬢に虐げられる弟とそのヒロインってお約束ですもんね。ぬるゲーにはそんな確執なかったけど」


やっぱり姉と同じことを言うんですねと複雑な顔をしていたギルバート様が、ぬるゲーの語感が面白いと少し笑った。



「ギルには詳しく話したことはなかったのだけれど、素敵な恋を見たいからと色々お手伝いしてもらっていたの。こちらに伺うにあたって、初めて詳しい話をしたのよ。身の破滅の危険が出てきた以上、のほほんと恋愛劇を観察することはできなくなってしまったしなんとか断罪を回避したいのよ」


そりゃ当然ですよね。

で、私は何を求められているのでしょうか?



「ギルと私が全力でサポートするから、学園に編入して王子に攻略されて欲しいの!!」



いやー、それはちょっと遠慮したいなあ。



「お願い!学園に通ってさえくれればあとはなんにもしなくていいから!!」


「それって王子妃ルートでしょう?絶対嫌です、私は平凡な人生を歩みたいんです」


王子妃になんてなってたまるか。


「お金あげるから!!」


「うちわりと裕福なので必要ありません」


私はこれから王都に食革命を起こすためにいろいろやる予定なのだ。夢ではもう内定までもらってるからね、きっと料理が作れるようになるはず。



「このままだと平行線が続くだけですよ…姉様、押し付けるだけではいけません」


良い人だねギルバート様、そのまま引き取って帰ってくれ。


「お互いの希望をすり合わせて妥協点を探しましょう。優先度の高い順に箇条書きしていきませんか?」


前言撤回、シスコンだなこの人。その年で姉様呼びなところにも現れてるわ。

私がお願いを聞く必要は全くないし優先度もクソもないっつーの。


「学園に行く行かないをいれると話がはじまりませんので、それ以外で書いていきましょうね」


じゃあそれは書かないでいてやるが、学園では出来ないこと書いてやる。


不満を突き出した口に表現しながら書いた希望をお互い披露する。


カミラさんが出した希望は、


断罪されたくない

ミアを排除したい

恋愛が見たい


だった。



対して私の希望は


王子妃になりたくない

マヨネーズ作りたい

うどん作りたい




私マヨネーズ作成するのに忙しくなる予定だから、諦めてくれないだろうか。


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