攻略対象あらわる
学園を卒業して、暇になった私はフィーちゃんのカフェでたまに働かせてもらうことにした。
フィーちゃんとおじ様は反対したけれど、たまに夜会に出るだけであまりやることがないから。
お母様も現役だし、恋人も出来ていないし。
カフェで給仕することでお客様との素敵なラブロマンスがはじまるかもとウキウキしていたのに、そもそもカフェには女性客とカップルしか来なかった。
どうも、フィーちゃんに言い寄る不届きな男性が出ないようにおじ様とギルが苦心した結果らしい。
パステルカラーでファンシーに飾られた店内は可愛らしい雰囲気で、確かに男性客が入り辛い店舗になっている。
レシピを渡すだけで入ったことなかったから、知らなかったわ。ここでうどんを提供しようとしていたなんてどういうつもりだったの、フィーちゃん。
恋の予感はしないけれど、キラキラした店内で働くのは楽しい。
今日は試験期間でしばらく給仕していなかったフィーちゃんとギルもカフェにやって来る日。
可愛い義妹とキャッキャうふふとのんびり給仕するのはとても幸せ。
楽しい一日になるはずだったのに。
「げっ、クソ真面目先輩来た。カミラ姉様、私会いたくないのでしばらく裏引っ込んでます」
えっなに、フィーちゃん逃げて行っちゃったんだけど。
驚いて出入口付近を見ると、可愛らしいお店に全く似合わない人物が目を丸くしてこちらを見ていた。
スタンリー・ヴァイス。フィーちゃんがヒロインである乙女ゲームの攻略対象者。
なんでこのお店に来たのかしら。
このファンシーな雰囲気に怯まずよく座れるわね?
「お久しぶりです、ノア公爵家御令嬢。お姫様が何故こんなところで給仕なんかされているのですか?」
嫌味な感じ~。
「義妹のお店ですもの、たまにお手伝いしていますの。貴方こそどうして此方に?どうぞ、こちらがメニューでございます」
「貴女の弟とその奥様が何度勧誘しても生徒会に入ってくれないので、直接誘いに。ああ、このチョコレートケーキセットをお願いします」
ピザとか軽食もあるのにデザートを注文するのね。
甘党なのかしら。
「承りました。でも残念ね、フィーちゃんは逃げてしまったわ。やる気のない人達を追い回すのは感心しませんわ?」
「ジョルジュ殿下も貴女も卒業してしまって無能しか生徒会に残って居ないので、ほぼ私だけで回しているんです。二人に入ってもらって負担を軽くしたい」
有能無能でしか判断しないのね、場を癒して円滑に出来る子も居たでしょうに。この子設定通り融通が効かない堅物なのね。
クソ真面目(フィーちゃん命名)ルートでは、生徒会に入ったヒロインが有能だと見込んだクソ真面目にこき使われて、公務のある王子が姿を見せない内に顔を合わせる機会が増える。
クソ真面目は従順に従い一切会話をしないヒロインに関心を寄せて、王子に口説かれている時たまに見せる焦り顔を不快に感じ、自分の事で心を乱して欲しいのだと自覚してヒロイン争奪戦に名乗りをあげるって感じだったわね。
ギルが生徒会なんて許すわけないじゃない、スタンリーに口説かれるのを警戒してるのよ。
結婚までしてるのに、可愛らしいフィーちゃんの目を全て自分に向けさせたい弟は危険を回避するため全力で逃げていると見た。
「大変かも知れないけれど、あの二人を引き込むのは諦めた方が良いわ。今居る役員を育てた方が早いのではなくて?」
「取りつく島もないですね、あまりにも反応が悪いから直接乗り込んでみたのですが」
そうでしょう。諦めなさい。
「しょうがない…うん、そうですね。貴女の方が良いです」
私もう卒業してるから出来ないわよ。
「こんな状況で話す内容ではないですが、納得出来ないので直接伺いたい。この間侯爵家から公爵家に縁談を申し込んだのです」
縁談?うちと??
「貴女と僕の縁談です、あっさり弾かれました。何故ですか?自分で言うのもどうかとは思いますが私は優秀ですし、公爵令嬢の嫁入り先としても申し分ない地位に居ると思います」
へぇ、そんなことあったのね。
「家には帰っていないし知らなかったわ。お父様がお断りしたのかしら。知っていてもお断りしていたけれど」
「何故です?お互い損はない筈だ」
「お父様は寛容ですの、本家に入る人間以外に優秀さや家柄は求めておりません。今更縁を繋がないといけない程公爵家は不安定ではございませんから。それに私、相思相愛の恋愛結婚がしたいのですわ」
ニッコリ笑って断った。
情熱的に口説けとまでは言わないけれど、せめて建前上は口説き文句用意してきなさいよ。
前世3#◯__ピー__#+19年、それなりに酸いも甘いも経験しているのよ。こんな愛の欠片もないお子ちゃまはお断りだわ。
私は物語のような恋がしたいのよ。
「相思相愛ね…。失礼ですが貴方夜会では適当に受け流しているし、恋愛する気があるとは思えないのですが。お相手の目処も立って居ないんでしょう?」
居るわよ。おじ様とか。
全く相手にされてないけれど。
ああもう、せっかく楽しい日だったのに!




