圧倒的な力
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この後、授業が何回か行われた。
そして、次の時間は初めての実技授業。
中学校でも何回か受けてはきたものの、やはり高校でのまた違う実技授業を受けられると梟夜はわくわくしていた。
次の授業のために更衣室で着替えた後、外に出てすぐ近くにあるかなり大きな校庭に向かう。
校庭に着くとある程度の人は皆集まっているようだった。
「皆、早いわね。」
水鈴が声をかけてきた。
「そうだな。皆、高校初の実技授業に胸を躍らせていたんじゃないのか?」
「皆、あなたみたいなわけじゃないわ。」
「おい、それはどういう意味だ。」
「どういう意味もないわ。そういう意味よ。」
するっと言ってくる水鈴に梟夜は、はぁとため息を付く。
梟夜はそこである疑問を水鈴にぶつける。
「なあ、冬崎。お前、レグロムなんだ?」
「…随分と唐突な質問ね。まあ、簡単に言えばモノを冷やす能力といったところかしら。」
「なるほど。つまりは第三階級から第五階級のどれかってことだな。」
「そうよ。柊君、あなた以外とレグロムへの知識が高いのね。」
「まあな。」
単純に趣味で勉強しただけだとは言わず。
「まあ、答えは聞かないでおくわ。後で分かるだろうしな。」
そう言って話を終えた後、クラス団体の中に入る。
整列を自然にした後校庭に体育座りしていると花がやってきた。
「よし、そろっているな。それではこれより実技授業を始める。最初にこれを見てほしい。」
そう花が言うと手に持っていたスイッチのようなモノをカチッと押す。
すると校庭のど真ん中から鉄の壁のようなモノがいくつも出てきた。
「これはミスリルを更に数十倍堅くしたモノだ。今から試しにこの壁を破壊してほしい。」
ミスリルとは日本で今現在最も堅いものでまた熱にも強いという代物だ。
それを更に数十倍堅くするとは今の技術は凄いものである。
梟夜が感心する。
「それでは男女別に番号順に初めてくれ。壊せない場合はそれでも構わない。」
すると一番の男子が壁の前に向かい破壊し始めた。
梟夜は20人中15番目なので回ってくるのは少し遅い。
その後様子を見ていると半数が破壊し他は出来ていないようだった。また、男子は負けず嫌いが多いのか回るのが遅いようだった。
まあ、そんな諦めない者で最後に壊せた者はいないが。
すると女子では水鈴の番だった。
あいつ氷系の能力らしいけど、どうなんだろうなと梟夜は考える。
水鈴は壁の前に立ち掌を壁に向ける。
そしてレグロムを発動する。
氷が流れるように壁に行き、壁を氷の山が粉砕する。
皆があっけらかんと見ていた。梟夜を除いてだが。
あいつのあのレグロム、まさか…
ある予想を立てているといつの間にか梟夜の番だった。
「よし、やるか…っとその前に…先生!」
梟夜が花を呼ぶ。
「どうした柊。」
「オレ、レグロム使わなくてもいいですか?」
梟夜から出た言葉は驚愕の言葉だった。
クラスの皆が梟夜に色んな目を向ける。
「お前、なめているのか?この壁は第一に能力なしで壊した試しなどないぞ。」
「それは百も承知です。でも、オレにとってはこの壁、豆腐みたいなもんですから。」
花は何故か笑みを浮かべた。
「いいだろう。やれるものならやってみろ。」
花はそう言って梟夜の元を離れた。
「ふぅ…」
梟夜は息を吐く。
そして壁の前に立つ。
すると足を回し回し蹴りをする。
刹那、轟音が鳴り響く。
壁はひびができる所か粉砕されている。
そう、梟夜が能力を使わなかった理由はそう能力を使う必要がなかったから。
能力を使った場合壁を破壊する所じゃないから。
梟夜の実力が明らかになるのはまた後の話。
その光景は水鈴の時以上のインパクトがあった。それは当たり前の事だろう。ミスリルを能力なしで破壊した者の例は知る限り存在していない。
更には高校生という成人ですらない。明らかな異常事態だった。
「…どうやら虚勢を張っているわけではなかったようだな。」
ポーカーフェイスを保っているものの驚きを隠せない花。
それに突っ込もうとするがそれはさすがにと抑える。梟夜は何も言わず壁の前から立ち去る。そして、驚きのムードを保ったまま授業が再開した。
そして、全ての生徒が終わると皆を改めて整列させ新たな指示を送る。
「それでは次に対戦形式の試合を行う、と言いたいのだが思いの外時間が掛かっていたからか時間がない。出来るのは一試合だけだ。誰か希望する者はいるか?」
すっと一人の男が手を挙げた。
「俺がやるぜ。」
かなりごつい男だった。
髪は坊主刈りともはやプロレスラーみたいだった。
「いいだろう。対戦相手はお前が指名していい。誰だ?」
「さっき壁を壊したあいつだ。」
そう言って梟夜に指さす。
油断しきっていたのか、ふぇ?と意味不明な声を
出す。
「コイツの態度が気にくわねえんだ。どうせ隠蔽した状態で能力を使ったんだろ。俺がお前を試してやるってんだよ。」
「…オレは別に構わないけど多分試合にならないぞ?」
梟夜は思った事を口にしただけだったのだがそれは言ってはいけなかったようで。
「あぁ?んだと!てめぇこの野郎!」
短気は損気、と怒りの元である梟夜は呑気にその言葉を流した。
その後花が指示してお互いに校庭の真ん中に立ち互いに向かい合う。
そして花が一言。
「相手が戦闘不能になり次第終了とする。それでは始め!」
試合開始の合図と共に男は走ってきた。
が、男は向かっていく相手を見失う。
梟夜は一瞬にして男の後ろに立っていた。
男はその事に気づくことはない。何故ならば梟夜が男の後ろに向かうとき既に腹に中指を使ってデコピンを喰らわせている。
デコピンとは本来相手を辛くからかってやるために使ったりするだけだが、梟夜はそれを攻撃に使う。それだけでも相手に取っては脅威的なモノだからだ。
男はそのままうつ伏せになって倒れる。
「…そこまで…」
もう隠す気ないだろ、と言いたいほど驚きを隠すポーカーフェイス(出来ていないが)をしている花。
「ありがとうございました。」
そう言ったと同時に学校の予鈴が鳴った。
最近はこちらに集中します。
17話ほどいったら同時進行で進めたいと思います。