表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ルナリアは闇夜に咲き誇る  作者: 暁 乱々
3.とっておきの魔法、見せてあげる
31/63

3.2.2 光の魔法、見せてあげる

 ろうかでひそひそ声がします。


「あの子、まだ魔法使えないのかしら?」

「最初はとても上手かったのに」

「小鳥を焼いたショックで魔法を使えなくなったらしい」

「もう半年前のことだ」

「なにそれ? 情けない子」

「もう出て行くべきね、魔法使いじゃないわ」

「いや、魔法の光を出せるのだ。追放はされない」

「うわぁ、かわいそう~。毎日毎日『下手くそ』って言われるのよ。私なら耐えられない」

「そうね。そろそろ目覚めさせてあげないと」


 それを聞いたルナリアは慌てて走りだします。


 けれども、相手の方が数が上。すっかり囲まれてしまいました。生徒たちはみな杖を握っています。完全に魔法を使う体勢です。抜け出そうとすると女の子が行く手をふさぎます。


「あなた、この前の試験も0点だったでしょう。魔法の使い方、忘れたのかしら?」


 女の子がそう言うとそろって笑いだしました。ろうか中に笑い声が響きます。それを聞きつけてさらに人が集まってきます。


「このままではずっと外に出られない」

「クラスメートとして情けない」

「ルナリアは学校の恥さらし」

「いや国の恥だ」

「悔しかったら、魔法を使え!」


 生徒たちが次々と悪口を浴びせます。


「そんなに言うなら、私の魔法を見せてあげる」

 ルナリアは杖を取り出しました。


「ルナリアが魔法を使うらしい」

「それほんと?」

「どうせ失敗するに違いない」

「見物よ。見物」


 さらに生徒が集まってきます。気づけば校内にいる生徒の大半がここにいました。


 これでは見世物です。

 でも、これでいいのです。


 ルナリアはみんなが見つめる中、杖を一振りしました。


 ろうかに銀に輝くペガサスが現れます。翼をはためかせ、たくさんの光の粉を振りまきました。

 銀の粉からは光のうさぎが何羽も生まれ、生徒の群れに飛び込んでいきます。床からは噴水のように青い光が湧き立ちます。その青い噴水を避けながら、銀色の動物たちが駆け回ります。天井からは青い流星が雨のように降り注ぎ、床に落ちた星の粒は消えることなく、積もっていきました。


 これだけたくさんの魔法を、同時に使える生徒はいません。ルナリアはこれ以上バカにされないよう、必死で魔法を放ち続けます。


 だけど生徒たちは大爆笑。


「あいかわらず下手だ」

「ランプの火で見えない」


 光の動物たちも青い泉も流星も、よく見ればちゃんとあるのです。けれどもその輝きはあまりに弱く、部屋の明かりにかすんでいました。


 生徒たちから次々と声が飛びます。


「君の魔法はそれだけ?」

「他の魔法は思い描けないの?」


 あらゆるところでクスクス笑いが起こります。ボソボソと耳打つ声もします。


 ルナリアはだんだん腹が立ってきました。杖をもう一振りすると、ペガサスは銀色から炎の色に変わり、生徒たちに向かって駆け出しました。

 でもペガサスはほとんど透明で、ちっとも迫力がありません。おまけにちょっぴり温かいだけの光の塊ですから、当たっても痛くもかゆくもありません。生徒たちはおおいに嘲り笑いました。


 生徒の一人がルナリアに向かって杖を振りました。するとあっという間に、ルナリアは灰色のねずみに姿を変えられてしまいました。さらに魔法で宙に浮かされて、くるくる回されるものですから、気分が悪くてしかたありません。床に積もった淡い光の粒もすべて消えてしまいました。


 いまのルナリアには光の魔法しか使えません。自分にかけられた魔法を解けないのです。それを見た生徒たちはただ笑うばかりで、誰も助けてはくれませんでした。


「君たち、やめなさい!」

 聞き覚えのある声がろうかに響きました。


 生徒たちの群れが、王様に道を空けるかのように分かれていきます。その道の向こうには人が一人立っていました。真っ黒な軍服を身にまとい、手には杖を握っています。声こそはノルン先生ですが、素顔は見えません。


「まずい、監視の人だ」

「捕まったらめんどくさい」

「とにかく逃げろ」


 ルナリアをさんざん笑いものにしていた生徒は、散り散りに去っていきました。残ったのはノルン先生とねずみ姿のルナリアだけです。


 先生が真っ黒なフードを外しました。間違いなくノルン先生でした。


「さぁ、乗って。私の部屋へ」


 ルナリアは差し出された手に乗って、あの地下の部屋へと向かいます。


 途中、ろうかで倒れている人が見えました。赤い髪が乱れています。ティランナ先生です。

 床には血の痕がたくさんあります。どうやら大ケガをしているようです。髪の毛以外は白いもやがかかって見えません。きっと魔法で隠しているのでしょう。


 先生たちが集まって魔法で手当をしています。だけどノルン先生は知らんぷり。その横をさっと通り過ぎ、壁に眠った秘密の扉を開けて、階段を下りていきました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ