〜教室までの道のり〜
今話は、タイトルにも書かれているのですが教室へ向かうのですが主人公の下らない思いつきのせいで、ハプニングが発生してしまいます。
「こっちに来て、一緒に遊ぼうよ。」
「うん。何して遊ぶ」
そこには楽しそうに公園で遊ぶ、男の子と女の子がいた。
空は真っ赤に染まり、カラスが自分たちの巣に帰っていくのがわかる。
男の子と女の子はまだ楽しそうに遊んでいる。男の子が何かを思い出したかのように、
「あっ、忘れてた」
と言って、女の子にさよならを言って走って家に帰った。
男の子が公園を出ると同時に、目の前が光った。
そこで目が覚めた。
(またこの夢か・・・)
目をこすると、指が濡れた。数十秒考えて泣いていた事に気づいた。
この夢をみて涙がでたのは今回が初めてだ。この街に帰ってきたせいなのか。
でも今日は、この夢の事は考えてはいられない。今日は、転校初日なのだ。
その事を思い出した瞬間、アドレナリンが大量にでたのが自分でも分かるぐらい緊張して頭が真っ白になった。
すると玄関の方から元気な声がした。
「いってきまーす。けんくーん」
この声で真っ白になった頭の中に徐々に色が付いてくる。
そして第一にでてきたのが、
(はやっ)
そう、池崎 歌帆の朝は早い。
頭の中が元に戻って、まず顔を洗いに行った。寝癖をなおして、朝ごはんを食べるべく、テーブルに向かった。そこには、ちょっと焦げが目立つ目玉焼き、熱々のベーコン、黄緑色のきれいなレタス、こんがりときつね色のしたパン。昨日と一緒だ、というよりいつも一緒だ。この朝ごはんを食べていると、なぜか落ち着く。
食器を洗って、制服に着替える。そのまま玄関にいき靴を履く、そして奴との戦いが始まる。
奴に気づかれないように、ドアを開けた。しかし奴はドアを開けた瞬間、容赦のない攻撃を放ってきた。思わず目を閉じてしまったが、それも数秒の事だ。この攻撃に慣れてしまえばこっちのものだ。奴は必死に攻撃を放っているが、もう俺には効かない。
そう奴の正体は太陽で攻撃は日差しだ。奴との戦いはいつ始まったのかもわからず、終わるのかもわからない。果てのない戦いがこれからも続く。
そんな下らない事を考えていると、とてつもなく下らない事を思いついた。
俺が今日転校するということは、あれをやるしかない。それを行動に移してしまった。
家に戻り、袋からパンを取り出し口にくわえた。からのダッシュ…
そう、アニメや漫画でよくある急いでパンをくわえた女の子が、曲がり角で男の子とぶつかる。これをやってみたかった。
そう思ってやってみたが、なかなか女の子とぶつからない、それどころか人を見かけない。
それもそのはずだった。登校する時間が早かったのだ。かほにつられて早く家から出てしまった。
諦めかけたその時だった、目の前の曲がり角に影が。何も考えないで走った。そして待ちわびた瞬間がっと思ったのだが、俺の視界には車が映った。轢かれると思ったが、思ったよりも遅かった。時速10キロぐらいの速さだった。そして車は止まった。
この時の顔の色は真っ青だったと思う。体からも変な汗を大量にかいていた。
(異世界転生するかと思った...)
そんな魂の抜けたような顔をしながら、登校を再開した。
もう、絶対にやらないでおこうと心に固く誓った。
「おはようございます」
前から元気な声が聞こえた。
腰ぐらいまでまっすぐ伸びている真っ黒な髪、髪に負けずにスラットした身体。
おとぎ話に出て来る魔女がそのまま出てきたかのようだ....。
(あれ、最近同じような人をみたような気が)
「どうかしましたか、転校生くん」
(ん、転校生くん)
その言葉を聞いて、やっと我にもどった。
「お、おはようごじゃいます」
慌てて返したので、噛んでしまった。
「ぷっ...ほんと面白い人ですね。」
また笑われてしまった。この笑顔が見られるなら、それでも構わない。
「昨日はありがとう御座います。今日からこの学校に通う事になりました。池崎 健二です。」
感謝の気持ちと、さり気なく自己紹介もした。これで相手の方も自己紹介をしないといけない空気を作る事に成功する。
「いえいえ当然の事をしたまでです。困った人を放って置けなくて。子犬みたいでかわいぃ...」
最後の方は聞き取れなかったが、そこは気にしないでおこう。名前が聞ければ良いのだ。
「・・・・」
そこで話は終わってしまった。
(何だこの空気、自分から名前を聞くのは抵抗があるしなぁ...)
キーンコーンカーンコーン
鐘の音が聞こえた。
「それでは用事が有るので池崎くんまた後で」
その言葉を残して足早に学校の中に入っていった。
彼女の姿が見えなくなるまで、その場を動けなかった。名前を聞く作戦は失敗に終わった。
でも、諦めてはいない。後でとも言っていたし、その時は絶対に名前を聞く。次の作戦を考えながら職員室に向かった。
担任の先生とHRの打ち合わせをして教室に向かった。気がつくと教室の前に着いていた。緊張のし過ぎで記憶がない。
担任の先生が教室のドアを開けた。一歩一歩教室に入っていった。世界の流れがゆっくりになったように感じていた。
ここまで読んで頂き本当にありがとう御座います。次話もよろしくお願いします。