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あの頃の記憶  作者: 末岡 禎仁
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〜転入手続き〜

第1話です。このページをめくって頂いて本当に嬉しいです。今回は主人公の池崎 健二が生きてきた中で一番後悔する。という話です。私自身もこんな事があったら後悔します。皆さんも共感して頂けたらなと思います。

僕には幼い頃の記憶がない。

池崎 健二6歳の誕生日一週間前に事故にあったそうだ。誕生日の前で浮かれていたのかもしれない。近くの公園で遊んで帰る途中に車に跳ねられたそうだ。その時頭を打ったが奇跡的に助かった。

軽い記憶障害とお医者さんが言っていたそうだが、未だにこの事故以前の記憶が戻らない。


事故があってすぐに隣街に引っ越すことになった。

事故があったからではない。母親の仕事の事情で引っ越すことになったのだ。父親は幼い頃に亡くなったと聞いている。

だから今は僕が母をいや、池崎 歌帆こと、かほを守ると決めている。

一人しかいない家族だからだ。

でもまだ34歳の、かほには幸せになって欲しい。残りの人生を僕のためだけに使って欲しくない。再婚するように頼んではいるのだが、聞く耳を持たない。かほは僕がいるだけで幸せと言うのだが、残りの人生が長過ぎる。

無理言って合コンなどに行かせるが、いつも失敗する。コミュニケーションが苦手なのだ。普段僕以外とは、あまり喋らない。相手が見つかるのはまだまだ先のようだ。

「ふぅー・・・・」

長いため息が出た。


事故から10年後の今、僕は戻って来た。幼い頃育ったこの街に。かほの仕事が一段落ついたからだ。と言ってもこの街での記憶はほとんどないに等しい。事故後の記憶からしかないからだ。


そんな事を考えながら、かほが作った朝ごはんを食べる。

ちょっと焦げが目立つ目玉焼き、熱々のベーコン、黄緑色のきれいなレタス、こんがりときつね色のしたパン。一般的な朝ごはんだ。毎日朝ごはんを作ってくれるのは嬉しいが、毎日同じメニューなのだ。さすがに飽きる。かほは、朝ごはんを作って直ぐに、仕事に行ってしまうので朝ごはんは、いつも一人で食べている。食べ終わって食器を片付けながらこの後のことを考えていた。


 今日は街の学校の転入手続きをする事になっている。自分の事を知っている人はいるのか。もし、そんな人がいたとしても、僕は覚えていない。こんな事が気になってしょうがないでいた。考えれば考えるほど不安で仕方がない。


そんな不安を持ちながら家を出た。

家を出ると待っていたかのように真夏の日差しが容赦い攻撃をして来る。

そんな攻撃を無視して、学校に向かう。


学校に向かう途中に転入先の学校と思われる制服の生徒とすれ違った。

(声を掛けられたらどうしよう)

そんな自信過剰な事を考えながら歩いていると、前から元気な声が聞こえてきた。

「おはようございます」

腰ぐらいまでまっすぐ伸びていて、真っ黒な髪、髪に負けずにスラットした身体。

おとぎ話に出て来る魔女がそのまま出てきたかのようだ。そんな印象の女の子に挨拶されれば男なら誰だってドキドキする。

そんな事を考えて固まっていると、

「どうかしましたか?」

「・・・」

「おーぃ」

はっと自分の思考を停止させた。

自分が無視している感じだと気づき、急いで彼女の問いに答える。

「だ、大丈夫です。職員室は何処ですか?」

そうすると彼女は僕が転校生という事を悟ったらしく、職員室まで案内すると言ってきた。

初対面相手にそんな面倒なことはさせられないと断ったのだが、それでも案内すると言った。

それ以上断る理由がなかったので案内してもらった。

本当は、大雑把に場所を教えてもらえたら良かったのだが、こんな美人と一緒に歩けるのだから結果オーライだ。

そう思ったのだが、さっきから周からの視線が痛い。

男子だけからというわけではなく、女子からの視線の方が痛い。男子だけならわかる気もするが、なぜ女子からの視線攻撃があるのかそれがわからない。

そんな謎を考えているうちに職員室に着いてしまった。

 僕は今、ものすごく後悔している。もしかしたら今まで生きてきた中で一番後悔したかもしれない。こんな美人と一緒に歩いてるのに一言もおしゃべりをしていないのだ。

思わず頭を抱えてしまった。

「どうかしましたか。暗い顔をしていますよ。」

やばい、彼女を困らせてしまっただろうか。そう思い、慌てて笑顔を作ったのだが、

「ぷっ」

彼女に笑われた。

笑顔を作るのに失敗してしまった。笑顔と変顔のちょうど半分の顔になってしまっていた。もう一度やってと言われても出来そうもない。そんな顔だ。

「面白い人ですね。ここが職員室です」

僕は彼女にお礼を言って、そこで別れた。

別れた後、担当の先生と転入手続きをした。

女性の先生で歳は20代前半で、たぶん新任の先生だろう。

転入手続きを終えると、先生が学校を見て回ってきてもいいと言われたのだが、今日はいろいろ緊張して疲れてしまっていた。クラスとその教室がどこかだけを確認して今日は帰ることにした。

(あ、名前聞けば良かった・・・)

今日、二度目の後悔だ。







読んで頂き本当にありがとう御座います。

共感して頂けましたか。

次話からは楽しい学校生活を送っていきたいと思います。次話もよろしくお願いします。

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