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世界はいつも空色に染まる  作者: 三雲シュン
Ⅱ章 Sky Garden
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世界の真実

「っ…!」

澪も僕も同時に失言する。


2055年…。

ここが未来世界であることは可能性として考えてはいたものの、それが真実であると聞かされれば、おいそれと信じることなどできる筈もない。


「本当に…?」

「ああ。僕がこの数日で調べた限りではどうもそのようなんだ。すまなかったね。あの森でここは未来世界だよーなんて言っても信じてもらえないと思ってね…。」


「…そうなんですか…。」


そう僕が答えた直後、玉樹さんが僕の背後に目を送ると手招きをするので、何事かと振り向く。

するとベルを鳴らして店内に入ってきた一人の男性がこちらに向かって言った。


「ショウゴ、今日は大収穫だったぜ…ってそこのお二方は?もしかして?」


イケた眼鏡をかけ、髪は金髪に染め上げ、ファッションも含めいかにもチャラチャラの男に玉樹さんは間髪入れずに言った。


「遅刻。お前…十二時集合って言ったのに二十分も遅れてくるとかねえだろ…。」

「スマン!道に迷ってよ。この通り混みすぎなんだよ…。こんな分かりにくい店選ぶことなかったろうに…。って、それよりその二人は俺らの同胞か?」


どうやらこの大学生ほどのチャラ男、玉樹さんの知り合いらしい。


「そうだ。僕らと同じく、光のゲートを通ってこの世界に足を踏み入れた仲間だよ。紹介するね。こいつは同じ学部に通ってて昔っからのダチの瀬古遼太郎。」

「ういっす!ヨロシク!」


どうも、と握手を交わして軽く自己紹介する。澪もそれに続き、その後一つの質問を澪は投げかけた。


「友人ってあの一緒に光に飛び込んだっていう?でもあの森で目が覚めた時には一人だったんじゃ…?」


「うん。僕はさっきも言ったようにそのあと川を下ってこの街に辿り着いた。ここがどこなのかを知るために色々と尋ね回ってここが未来世界なのだと聞き、状況を見ていくうちにそう確信したよ。それと同時に瀬古をはじめ恐らくこの世界にいる筈の人間…僕と同じくあの光のゲートに接触した人間の所在を調べた。ここ最近にいきなりどこからともなく現れた人がいなかったりしなかったか、ってね。そしたら石榑(いしぐれ)って男の人が夜分に街の裏通りで金髪の青年が倒れていたのを見つけて、自分の家で看病してるらしい、って聞いてね。行ってみたら案の定…ってわけだよ。」


「いやあ、それにしても会えて良かったぜ。このナゾイ世界に一人だったらどうしようかと思っちまったからな…。ま、ショウゴなら助けに来てくれると思ってたけどな!」

「…お前な…。」


澪の前に座った瀬古さんと玉樹さんのやり取り。

そんな腐れ縁の二人を見て、旧友である大原たちの顔を思い浮かべるも、今はそんな場合ではないと頭を振る。


「…へぇ。」

隣で澪が納得の表情を見せると質問を投げかけた。

「でも、なんでさっきまで別行動してたんですか?」


「この四日間、僕もその石榑って人の家で世話になってるんだけど…、その人五十歳半ば位の優しい男の人で食べ物から寝床まで用意してくれて、とっても有難いんだけどさ。なんか、それも悪い気がして…。四日前にあの川に沿って歩いた時に魚が泳いでるのを見かけたから、せめてもの報いとして夕飯でも作ろうかと…。僕、釣りが趣味だったから。ま、僕が目が覚めたのもあの場所だったんで、一日あそこにいれば何か掴めるかも…、って踏んだんだけど、ベストな選択だったみたいだね。」


「へぇ。その間に瀬古さんが街を色々回って情報集め、ってわけですか。」

「まぁこの世界の実情とかは石榑さんに殆ど聞いてるから、他の人たちの所在を中心に。」


瀬古さんは腕を組んで答えると、そのまま続ける。

「それはそうと、二人に会えて良かったよなぁ。」

「たしかニュースだと二十人くらいが行方不明って聞いてますけど…他の人たちの所在は?」


「それがな。不思議なことに全く行方が分からないんだよ。どの人もそんな話は聞かねーの一点でなあ…。だからこの世界に来たのはショウゴと二人だけなんじゃないかって不安で…。君ら二人も俺らと同じようにこの未来に来たんだったら安心だよ。多分先に来た人間もどっかの街で生きてるハズ…。」


澪は暗い表情を見せた。ヒロというお兄さんのためにここへ来たようなものなのだから、それもそのはずである。


ここでようやく僕は先刻の未来世界の話に引き戻す。

「それよりここは未来だって本当ですか?そんなの信じられないですし…。」


僕のセリフに答えたのは玉樹さんだ。

「これは確実だと思うよ。3Dホログラムの実用化や人工知能AIの一般利用、その他諸々。挙げだせばきりがないけど、これら僕らがもといた世界では夢の先にあるような装置、こんなのがこの世界には既に存在しているということを確認済みだよ。」


幾つも挙げられた未来世界のワードを聞くも、やはりそれが真実なのだという実感は湧かない。


そんなモヤモヤを感じていると、次に口を開いたのは澪だった。

「ってことはあの光は時空を繋ぐゲートだったってこと?」

「恐らくはそうなんだろうと僕らは考えてる。」

「でも、なんでそんなのがいきなり現れたんだろ…。」


澪の言葉に瀬古さんが思い出したように言った。

「そうそう、そこで今日俺ちょっと調べてみたんだよ。」


「それって、さっきの「収穫」ってやつ?」

玉樹さんが尋ねる。


「そう!そこで驚くべきことが分かったよ。この世界でもまだ「タイムマシン」は作りだされていないってな。つまり、あれは人為的に、意図的にこの世界の人間が作り出した産物である可能性は低い。」


「なら、なんで…?」

「さあな。今は全く分からん。お手上げの状態だな…。」


瀬古さんは一息ついた。

すると腕を組んで何やら考えこんでいた様子の玉樹さんが口を開いた。

「そうとなると…、この世界で誰かがタイムマシンを作るのに成功して…、それによる何らかの影響ってこともあり得るんじゃ?」


「だとしたら、なんでその大発明が公表されてないんだ?仮にそれを正しいとしても、俺らが調べるには限界があるよな。」

「…そう、だな。自然現象では片づけられない事柄だし、結局この世界で何かが起こっていることは間違いなさそうだな。」


玉樹さんは自分で納得したかのようにうなずく。そんな彼に澪は問う。


「…この未来世界に何かあのゲートの謎を解くカギがあるってことですよね?そもそも、さっきから尋ねようと思ってたんですけど、このローマみたいな街並みの都市は未来の東京なんですか?」


これはずっと僕も気にかかっていた疑問点だ。


その発言に玉樹さんはコホンと一度咳払いをすると、急に真摯な顔つきになるやいなや机に腕をのせて、

「さて、ここからが本当の本題だよ。」


「どういうことですか…?」

「ここは未来であっても、東京ではない、ということだよ。」

「…えっ…?」


これまた予期はしていたものの意外な事実だ。


「…今から話す内容はこの四日で調べ上げた事実だ。だから信じて聞いてくれ。」

「…はい。」


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