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世界はいつも空色に染まる  作者: 三雲シュン
Ⅱ章 Sky Garden
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欧風市街

どう見ても街並みはヨーロッパの何処かの街に酷似している。


アベニューには数々の出店が並び、野菜、果物、パン等々が見事に陳列されている。諸々の品々に目を奪われていると、行き交う大勢の買い物客に紛れ、澪や玉樹さんとはぐれてしまいそうだ。


欧風だとは言っても、人々の服装はもと来た世界と何ら変わりはなく、むしろそのギャップからか、より一層先進的に見えてしまうのは僕の気のせいかもしれないが…、そこにはやはり少々の違和感も感じられる。


玉樹さんがどこに向かっているのかも知る由もなく、暫く進んでいくと右手に逸脱して大きな欧風建造物。

中を覗くとどうやら電子機器販売店のようなのだが、タブレット端末やパソコンと共にそこには見知らぬ機器も幾つか見受けられ、違和感と共に疑問を浮上させずにはいられない。


いや、それだけではないのだ。

よくよく見てみると店頭に並ぶ食材の中にも見たことのないものが多々ある。


街の人々は皆、日本語で話すのが聞き取れる。ここが日本であることは確かだと思うのだが、街は欧風、物品は珍しいものばかり。

一体全体ここはどこなのだろうか。



「じゃ、ここで話をしようか。」


先頭を歩いていた玉樹さんはとあるカフェの前で立ち止まった。

何とも洒落た作りの店で、木製のテラスも付設されている。


澪と視線を交わし、玉樹さんに続いて店内に入ると、チリンとベルの音がなった。ドアについてはいないので、自動音声である。


妙に個性的な店だなぁと思いつつ彼に続き、木製の四人掛けテーブル席に澪と僕が並んで、僕の対面に玉樹さんが座った。


店内は木目調の落ち着いた雰囲気で、クラシックのBGMがかかっている。

そこそこの広さはある、それなりに繁盛しているカフェのようだ。


「あの!いい加減ここがどこか…。」

澪が言いかけた時だ。


氷水を持って店員がやって来た…、かと思うと、それは明らかに人間ではなかった。


高さは恐らく一メートル程度、清潔感溢れる白色に身を包み、滑らかな動きで現れた円柱型の機械。ロボットだったのである。


それは玉子を連想させるような丸い頭と太さ一メートル程度の胴体…、すなわち形だけ見ると円柱の上に半球をくっつけたようなさまである。

顔と胴体との境にブルーのラインが引かれ、顔には手のひらほどの液晶画面があり、二つの緑色の丸い点が左右に表示され、顔のように見える。


「何コレ…?」


すると澪のそんな発言に構わず、その機械はこう言ったのだ。

「イラッシャイマセー。」


「…?」

僕&澪は完全に困惑状態である。


さらにその妙なロボは左右に付いているアームを同時に伸ばし、その上に乗せられたお盆をそのままスライドさせ、机上に氷水を乗せた。

まさに澪も僕もお口がポカンの状態である。


するとロボットはその場で180度くるりと回転するとカウンターの奥にある厨房と思われる場所へとさっさと戻っていった。


何がなんだか分からない。


そんな僕たちを見た玉樹さんはニコニコ顔で言った。

「とりあえずなんか頼もう。」

「あ…、えっと…。」

とりあえず幾分かハイテクなカフェなのだと自分に言い聞かせ、支払の問題もとりあえずは端に寄せ、さっさと注文して話を聞きたいという思いが募るのだが、メニューが見つからない。


「あの…、メニュー表は?」


玉樹さんは相変わらずのニコニコ顔をすると、僕の眼前の机上を指さした。


そして僕が何もない筈の木製のテーブル上に目を送ると、「ホイッ」という玉樹さんが一声を出す。

何なんだと心の中でツッコミを入れた直後、いきなり先程までなかったはずの液晶ディスプレイが現れ、美味しそうな数々の料理の一覧が表示された。

縦横ともに三十センチ程の正方形型の画面で、そこにはスパゲティやオムレツ等の美味しそうな写真と、日本語で料理名と価格が一列に表形式で記載されている。


それは澪と玉樹さんの眼の前にも同時に現れ、澪も驚きの表情である。


「このボタンを押したんだよ。」

玉樹さんは机の端にあった赤い丸のボタンを指差した。


「これを押すとそのディスプレイが表示されて、それを操作して注文すればさっきのロボットが持ってきてくれる…っていうシステムだよ。消すと木の色と一体化するようになってるから、端末が埋め込まれてたことに気づかないのも当然だけどね。」


どえらく先進的な店だなぁと再度感心すると同時に、ここはもとの日本の世界ではないのではないか…、そんな推論が頭をよぎる。

もしかしたらここは…。そう思った直後だ。


「もしかしてここって未来の世界なんじゃ…?」


澪が言葉を発した。それは僕が考えていたことと同じことだった。


玉樹さんは澪の質問に少々驚いたようであったが、一息つくと答えた。


「勘が鋭いねぇ。ああ、僕がこの四日間情報収集をしてきた結果ではどうやらそのようなんだ。それも2055年の、ね。」


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