「山田 幸希」という青年の最後
「~♪~~♪~~~♪」
帰ったらなにやろうかな~、なんて考えながら
母と親友から上手だって言われた歌を歌いながら
自宅に帰る私の名前は「山田 幸希」いい名前だろ~
「幸せを希」(しあわせをのぞむ)
だってさ、最初に聞いたときちょっと感動したね
まぁ、うちの母さん私が5歳の時に「サンタさんなんていないよ」なんて
言っちゃうような人だけど。ちなみに今15歳、もう10年前だねぇ
さて、こんなこと考えてる私は今現在歩いて帰路についております
…一人で、虚しい、おまけに自転車登校なのに自転車が壊れたせいで
歩いて帰る羽目になったし…いや自転車登校言い渡されてる割には
意外と近いからいいんだけども、ちなみに今、部活帰り、美術部やってます
そんな私の視界にヘッドホンつけて携帯を弄る美少女が!
…いや~こんな片田舎にあんな美少女いたっけか?
…まぁいいやそれはともかくとして、あぶねぇな~、こけるぞ~
まぁ聞こえてないだろうしこんなブサイク男に話しかけられても
不快な気分にしかならないだろうし、口には出さないんだけども
でもまぁ目で追うぐらいだったらいいだろ、眼福、眼福
…ん?あのトラック…減速…してねぇ、ちょっとメガネを上にくっと
ちょっと見えやすくなるのよね~…やっべ違反者見つけちった
酔ってるよ、あれ、絶対に、目がアカンもん…まぁ、通報とかしようにも
携帯とかの文明の利器はないし、近くに交番とかもないんだけど
今現在、人もあんまいないし、あ~帰ってパソコンしたいな~
……………あ?
「ちょ!?ちょっと待て!おい!そこの!」
まずい、今気づいた…このままだとトラック彼女にぶつかる
今現在彼女は横断歩道ちょっと前、ただあの体の傾き具合からして
通るだろうな、横断歩道を、そして問題のトラックも…通る
あのルートだと確実に、目の前で赤い光景を見るのはごめんだ
なんとか気づいてもらおうと大声出したり手ェ振ったりしてるが
気づく様子はない…ちょっとヒーローやってみるか?
助けてみよう、ただ…間に合うか?私の運動能力で…言ってる暇ないな
あまりなにも考えずに、私は走り出した…あぁ~もうちょい
運動しとけばよかった、はやい、脇腹痛くなるのが
あぁ、荷物置いてこう、重い、というか最初に気づけ
うん、多分これだったら行ける…やべぇ、横断歩道入った
…ゆったり歩いてんな~トラックは着実に近づいてるってのに
あ~しんど、ただ、もうちょいでとどく、手を、背中を、押す
---ポンッ
よっしゃ!後はこのまま跳べば私も無事
---グラッ
っ!?んだっ!?地震か!?なんでこんな ………やべぇぶつか
---ガンッ!!
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いってぇっ!!…普通意識とぶんだろうなぁ、こういうとき
というか、うわぁ、めっちゃスローに見える、あれか、走馬灯か
彼女は…うん、無事っぽい、いきなり倒してごめんね?
さ~てと、生きるか死ぬか、まぁ、彼女が電話もってるし
運良ければ助から
---ガツッ!
…ないかなこれはもはや痛みないし、ただ後頭部になにか当たったのは判る
おまけに生暖かいしぬるぬるする、やべぇな、血ぃでてる
彼女は…うわぁ、顔面蒼白、ホント白くなるもんなんだねぇ~
「だ…じょ---ぶ」
「!!!???」
うわぁ、そんなびびんないでよ
そりゃぁ、血まみれの不細工男が声かすれさせて大丈夫なんて言ったらびびるか
「い…がい、と喋れる、ものだねぇ~」
うん、だいぶ喋れる、なんでだろう?
「!!!しゃ、しゃべらなっ、えっと、こういうとき、どうすれば、あぁあぁあ」
「とり、あえず、落ち着こう、ね?」
「………はい」
うん素直ないい子
「ごめん、ねぇ~、君いくつ~?」
「…14です」
「おぉ年下」
うん、カワイイ
「だったら、なおさら謝らない、と、ごめんね?私より
…若いのに、これから楽しいこと、いっぱいあるのに、
その中に、こんな怖い光景入れちゃって-----ごめんね?」
「…なに、言ってっ」
「あはは、泣かないでよぉ?苦手なんだ、泣き顔」
はぁ、なんだろうなぁ、可愛い子助けて、ちょっと優越感持ってたけど
…罪悪感の方がでかいなぁ~、なんだろう、かよわくみえるなぁ、なんとなく
「まぁ、私の話に付き合ってよ、瀕死の重傷のくせに
こんなぺらぺらと喋る私の戯言に、さ?」
こくり、と、頷く、うん、いい子だ
「正直ねぇ、最後を誰かに看取られるって幸せだと思うんだぁ
おまけに、こんなやつの話をちゃんと聞いてくれる人だから特に」
「…ほんと、に、なに、いってるんです、それに、最後って」
「最後でしょ~、もうね、痛みすらないし、体もどんどん冷えてくし
まぁ、それはともかくとしてさ、う~ん…あ、ねぇ、録音って出来る?」
「………はい、どうぞ」
「用意いいねぇ~、んじゃ」
私の唯一の家族に
「…かぁさん、たぶん、私、死ぬわ、どうも、最後の最後に幸せだと思えた
親不孝者の山田幸希くんで~す、あっはっは…はぁ、まぁ、その、なに
…口下手で、ごめん、えっと…今まで、ありがとう、色々と
なにもかも含めて…ありがとう、それで…ごめんなさい」
あ~、やばいなぁ、こんな小説みたいな死に方するとは思わなかったわぁ
…現実は小説より奇なりってね………涙出てきた
「…あ、ごめん、続ける、あとねぇ、さっき幸せ、って言ったでしょう?
やっぱあれだよねぇ~ 私って男だから、美人さんの女の子助けられて
本望といいますか、まぁ、我が人生に一片の悔いなしとは言えないけど
…それでも、私は、わたし、は…幸せだったよ?…うん」
はぁ、ふはは、やっべぇもう音も聞こえねぇ…でも言っとかないとなぁ
「あぁ、あと君、かっこつけといてなんだけど…私以上に幸せにならないと
恨んじゃうよ~、あはは、私、心、狭いからねぇ~…じゃぁね」
あぁ~、真っ暗になってく…あ~あ~泣かしちゃった、今まで女の子
泣かしたことがないっての自慢だったんだけどなぁ~…もう言えないや
…さよなら お母さん 健に九路夢 名前も知らない可愛い子
健と九路夢は親友です 出てきます(ネタバレ)
ただどうやって出てきてどんなキャラかは教えません




