lastエピソード1~過去を語る二日前譚・学校で~
過去編最後の物語は、今まで語らなかった山森健一の忘れられない過去。
過去編遂にフィナーレ。
明日に繋がる道lastエピソード~過去を語る二日前譚・学校で~
乞うご期待。
皆さん、こんにちは。初めましての方は初めまして、久し振りの方は、久し振りです。山森健一だ。俺の自己紹介は簡単に済まそう。山森財閥の御曹司で、現在は山戸川高校の生徒会会長の任に就いている。といっても間もなく任期は終了して、普通の高校生に戻るわけだが、時折生徒会の様子を見に行かなくてはならない。
これは、山戸川高校の前生徒会の伝統だ。しかし、俺の代では前生徒会会長が莉沙姉立ったので一切様子を見に来ることはなかった。莉沙姉らしいと言えば莉沙姉らしいけど。さて自己紹介はこのくらいで良いかな。
さて、そろそろ本題に入ろうか。
今回は、俺自身の、過去を語ろうと思う。過去を語るって何か変な感じなんだよね。今までに語ってきたのは、俺が生きてきた中でも良い話や普通の話ばかりだった。事件が起きても簡単に解決してたけど、今回の話は良い話にも、普通の話のどちらにも当てはまらない。
こんなこと言ってると、生徒会メンバーは勿論、涼子にまで怒られちまう。だからこそ、語りたくないのかもしれない。俺がこれから話すのは、俺がこの生きてきた18年間で最悪にして最低にして絶望的な話だからだ。
さて、こんなことを頭の中で思案している場所は、何を言おうと、生徒会室だ。
何で生徒会室に居るかと言うと
「あー、明後日はあの日か。」
「健一、さっきから何一人で言ってんの?」
「涼子、仕方ないだろ。明後日は……。」
「そんなことより、来週から新生徒会のメンバーが来るんだから、最後の仕事として歓迎の準備をしなくちゃいけないんでしょ。喋ってばかりいないで、手を動かして。」
俺は涼子言われるがままに、止めていた作業の手を再び動かし始めた。涼子が言っていたように、来週から新生徒会のメンバーが来るのと同時に、俺たち三年生の生徒会メンバーは引退する。
山戸川高校の生徒会会長としては、異例の選出だった。何が異例かというと、一年生の時から生徒会会長になったのは、山戸川高校始まって以来の、特例だったからだ。それもそのはず俺の姉である、山森莉沙が前生徒会会長でその推薦というより強引に教師を説得して選出されたのだ。
今から、二年前に、生徒会会長となってからは、大変な日々を送り続けてきた。それも残り四ヶ月で終わりを迎える。四ヶ月後には、卒業式が控えている。高校生生活最後にして最大の行事だ。
これから少し長い話になると思うけど、聞き逃さずに、一字一句読み違えないように聞いてほしいけれどその前に、生徒会での最後の仕事で皆と他愛もない会話をしている。
「それにしてもあれですね。」
「どうしたんだ?」
「私が生徒会に入ったのがおよそ一年前なのに、ついこの間のように感じてしまうんです。今でも昨日の事のように思えます。」
そう言っているのは、次期副会長の一人の薺楓だ。
「俺だって同じだ。まだ昨日の事のように思えるよ。三年間生徒会会長をやってきて、色々な事があったよ。」
「ふっふふふ。」
「どうしたんだ?」
「いえ、山森先輩らしくないので。」
「な、何言ってんだよ。俺だって、もうすぐ生徒会を引退するわけだし、そう思っても良いじゃねえか。」
「健一らしくないね、いつもなら皮肉の一つぐらい言いそうなのに、今日はいつもよりおとなしいよね?何かあった ?」
「別に何もねえよ。」
「ふーん、何か隠してそうなんだけど?何か隠してる?」
「な、何も隠してねえよ。」
「図星かな?」
「…………っ。」
「図星か~。」
「な、何言ってんだよ。さあ、手が止まってるぞ。口を動かさずに手を動かせ。」
「逃げたね。」
「逃げましたね。」
ははは……後が怖いな。まあ、とにかく今は仕事に集中することにする俺。呆れたのか、涼子と薺も自分の仕事に集中し始めた。一時間程経った頃。
「それにしても、良い天気よね。」
「そうですね。ここまで、ポカポカ陽気だと眠くなってしまいそうです。」
「寝たら駄目だよ。」
「そうですね。それにしても、山森先輩は凄いですね。ポカポカ陽気でも全く眠くならないんですから。」
「えっ?」
「えっ?私何か変なこと言いました?」
「いつもの健一ならこんなにポカポカ陽気だと寝ているのに。はっ!?まさか!偽物!?」
「さ、流石にそれはないですよ、白岩先輩。」
「そうよね、流石にね偽物がいるわけないよね。」
「そうですよ。」
「Zzz……。」
「えっ?」
「えっ?」
「「もしかして、健一〔山森先輩〕寝てる〔んですか〕?」」
「Zzz……。」
「健一……………。」
「山森先輩……。」
「Zzz……んっ?」
「健一!」
「山森先輩!」
「えっ?何?」
「「一人で寝ようとするなーーー!」」
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
その日、俺の叫び声が校内に響くのであった。
俺の身体中に何故か切り傷や殴られた後が残っていた。
「お前らな、こっちは、自分の仕事が終わって疲れていたから、寝ていたのに、それを邪魔するなんて、酷いな。」
「いや、だって終わってるって、思ってなかったから、それで、その、ね。。」
「そそそうです。終わってるって思ってなかったからですね、それで起こそうかと。」
「疲れてるから、寝かしてくれ。」
俺は、椅子から立ち上がり、部屋の東側に置いてあるソファに寝転がると、再び目を閉じて眠り始める。
何でソファがあるのかは簡単に説明しておく。
俺が自費で買ったものを置いている。ただそれだけだが、あまりにも大きすぎて二人程寝れるというソファベッド化している。特に俺は、放課後は毎日寝ているか、小説を読んでいるかのどちらかだ。寝ていると大抵の場合は涼子に起こされるか、生徒会メンバーにおこされている。
しかし、俺が起きないと涼子は俺の隣で寝ていて目が覚めると、何が起きているのか分からなくなる。万が一他の生徒会メンバーに見られたら、弁明する余地もない。別に恋人同士だから気にする必要はないんだけど万が一という場合があるからな。と言ってもまあ別に今更気にする必要はないけどな。夏休みにあんなことがあったわけだから。
まあ、これは皆さんの想像に任せる。夏休みに何があったかは考えてくれ。俺からは何も言わないし涼子も何も言わないと思うから、これ以上は何も言わない。
さて、俺が眠りについてから、30分程経った頃に俺は目を覚まして、席を見ると涼子以外の生徒会メンバーは机に突っ伏して寝ていた。涼子も時折欠伸をしては眠い目を擦り勉強をしていた。どうやら自分の仕事を終わらせて、復習をしているようだ。俺は、静かに立つとティーカップに紅茶を淹れて、涼子の近くに置く。自分の分を会長席に置いて、棚から本を1冊だけ取り出して、会長席に座り読み始める。内容は推理物だ。涼子は、勉強に集中しているのか全く気づく様子はない。俺が本を読み始めてから10分程経った頃、涼子が大きく背伸びをして、会長席に座っている俺と、自分の席に置いてある紅茶に気づいた。
「健一起きたの?」
「ああ、今さっき起きたところだ。」
「紅茶ありがと。」
「どういたしまして。」
「疲れちゃった。」
「そうか、寝る?」
「う~ん、どうしよっかな?」
そう言って、涼子は自分の席から立ち上がり、俺に近づいてきて、いきなり抱きつかれた。これには、俺も一瞬言葉を失った。
「な、ななな何やってんだよ。りりりり涼子。」
「良いでしょ、今日は。」
「いや、だけどここ学校だから、その。」
「健一は嫌なの?」
「嫌じゃないけど。」
「じゃあ、キスして。」
そんな風に上目遣いで見られたら、何も言えないじゃないか。でも、ここでキスしてしまったら、多分止まらないだろう。本心では、分かっていても、本能は止まらないだろう。だけど、精神力で耐えなければ問題になってしまうので
「涼子、後でな。」
「えぇーーー。今が良い。」
「ダメ。後でやってあげるから。」
「分かった。」
なんとか耐えたけど家に帰ってから何が起きるのかさっぱり分かりません。先に言っておくが、俺と涼子は、童貞でも処女でもない。って何でこんなことを言ってんだよ!あ~もう帰りたい。
そんなわけで、生徒会での仕事を今日は終わりにして、帰宅した。もちろん、生徒会メンバー全員で学校を出て、正門で別れて帰宅した。