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▶モブとして生存するための最適解を導き出します②

「とりあえず落ち着け、セレナ。」


 いやそれはむしろこっちのセリフだわ、と即座に突っ込みを入れたい気持ちをぐっと堪える。近づくなってどういうこと? この何でもないようなやり取りも、もしかしてイベント発生の場面なの? モブのお前なんかに好感度イベントが発生しても意味がないから近づかないで欲しい、ということなのか。そうだとしたら失礼な男だな。


「私は落ち着いてるけど……」


 近づくなと言われれば言われるほど近づきたくなるのが人間の性。いや、天邪鬼な私の性だ。本気で嫌がっているようには見えない。このやり取りだけでいきなりルートに突入するとは思えないので……いっそのこと近づいてみるという選択をすることにした。


「キースこそ大丈夫?様子がおかしいけど」


 思い切って距離を詰め、下から顔を覗いてみる。いつもゲーム画面越しに見ていた、整った顔。切れ長な目にスっと通る鼻筋、そして高い鼻。パチッと目が合うと、驚いたように目を見開き「うわっ!」と声を上げた。


「ちっ.....近い!!!!!!!!」


 大きな声でそう叫ぶと、顔を真っ赤にしたキースはまるでしっぽを踏まれた猫のように飛び上がり一定の距離を保たれてしまった。その時間、体感約0.5秒。それこそ脊髄反射レベルだ。違和感がだんだんと確信に変わっていく。


 キースの挙動不審を見るにゲーム時のキャラ設定とは異なり、女子に対する免疫が無いのでは? という推測が浮かぶ。教室の入口で女子に囲まれていた時も、やれやれと困ったモテ男風を装っていたようだが、もしや内心は心臓がはち切れそうなくらいバクバクだった可能性もある。思えば自分から触りに行くような行動は見られなかったし、両肩が小刻みに震えていた気さえしてきた。


「(これ、使えるかも.....)」


 もしもこの女好きという設定が、何かのバグで真逆の設定になっているとしたら。今のところ見てわかる異変はキースにしか現れていないが、全員に何かしらの変化が見られているのだとしたら.....。


「セ、セレナ.....?」


 ブツブツと独り言を続ける私を、キースが首を傾げながら見つめている。


 裏人格(仮)を逆手に取れば、向こうからは必要以上に近づかれない可能性がある。


 私は静かに戦略を修正した。


 ――


 ◆ モブとしての生存戦略・改訂版


 攻略キャラに嫌われるのではなく、

 攻略キャラが“困る存在”になる。


 ――


 わざわざリスクを伴いながら好感度を下げにいく必要はない。ただ、関わりづらくなればいい。


 モブとして転生したからには、モブとして背景として目立たず穏やかに日常を過ごしたい。無論、矢印がこちらへ向くという有り得ない事実はヒロイン――ルナの為にも確実に避けたい。


 そうなると、他2人の異変を調べる必要がある。こんな所でのんびりしてはいられない。


「何ともないなら良かった!それじゃあ!」


 立ち尽くすキースへにっこりと微笑み、手を振る。面白いので去り際に振り返り投げキッスを送ってみる。石のように硬直したキースが膝から崩れ落ちる音が聞こえたが、振り向かず立ち去ることにした。

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