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▶モブとして生存するための最適解を導き出します①

 お昼休み。私は人気のない中庭の隅に避難していた。


 ベンチに座り、両手で顔を覆う。


 ――落ち着け。

 ――考えろ。

 ――私はモブだ。


 この事実だけは、何があっても揺るがない。……揺るがないはずだった。


「攻略キャラ全員の矢印が何故かこちらを向いてる......」


 声に出すと、余計に現実味が増す。


 これはもう恋愛イベントじゃない。私が転生したことによる世界のズレ、もしくはシステム事故だ。私は深呼吸して、脳内に“ゲーム画面”を思い浮かべた。


 もし今、メニューが開けるなら――

 私がやるべきことは一つ。


 生存戦略の構築だ。


 ⸻


 ◆ モブとしての生存戦略・第一条


 攻略キャラに近づかない。


 これは絶対だ。もしも相手の視界に入るだけで好感度が上がってしまう又はイベントが発生してしまう可能性がある場合、距離=安全圏。


 廊下では壁沿いを歩く。教室ではなるべく目立たない位置に。イベント発生ポイントには立ち入らない。


 完璧。


 ⸻


 ◆ 第二条

 ヒロインのそばにいる。


 ヒロインであるルナは正規ルートの中心人物。彼女の近くにいれば、攻略キャラの視線も自然とそちらに向くはず。そのままヒロインルートへ突入し、私はモブとして静かに彼らの恋路を見守ることができる。


 私はあくまで“友人A”。それ以上でも以下でもない。


 安全。


 ⸻


 ◆ 第三条


 余計なフラグをへし折る。


 転ぶ → 手を差し出される → フラグ

 体調不良 → 体調を気遣われる → フラグ

 名前を呼ばれる → フラグ


 ……名前を呼ばれるのはもう諦めるとして。


 会話はできる限り短く。リアクションは限りなく薄く。必要以上に目を合わせすぎない。


 よし、いける。


 完璧な計画に頷きながら、私は小さくガッツポーズを決めた。


「これで私は、ただの背景として穏やかに生きていける……はず」


 ――その時。


「セレナ!」


 大きな声で名前を呼ばれ思わずびくりと身体が跳ねる。声のした方を振り返ると、キースが小走りでこちらへ向かってきた。


「さっきは、その.....ノリであんなこと言っちまったけど.....本当はそんなこと思ってないっていうか.....そういう事はもう少し仲を深めてからというか.....」


 モジモジと恥ずかしそうに視線を泳がせ、だんだんと消え入るかのように語尾が小さくなっていく。頬をほんのりと赤らめながら、時折私をチラッと見ては目が合うとすぐに視線を逸らすキース。いや、女子か。こんなキースは見たことがない。私が知っているキースは、人気がないこの場を利用しキスの1つや2つをさらっとこなすような男なのに。


「えーっと.....うん。言いたいことは何となく分かったから、大丈夫だよ。とりあえず、ありがとう.....?」


 向き合って話すにしては少し距離があったので、お礼を言おうとキースの方へ1歩踏み出した時――


「ちょ、あの、待って!ストップ!それ以上俺に近づくな!」


 何故か顔を真っ赤にしたキースが私に向かって手をブンブンと振り回している。おかしい。私が知っているキースはこんな初心ではないはず。『全員まとめて抱いてやるよ』という(まぁまぁ最低な)セリフを平然と言うような男だったはずだ。


「(どういうこと.....?)」


 整理するどころか更に散らかってしまった思考を必死に繋ぎ止めながら、この妙な時間をどうやり過ごすかを考えていた。

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