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▶ エラー:想定外のキャラクターです。

   はっと目を開けると、私はなぜか見覚えのある教室に座っていた。

 話し声や笑い声が響く中、窓際の一番後ろの席で目を覚ました――ようである。


「(えっと……あれ……? さっきまでゲームしてて、画面が光って……ひどい目眩がして……え、私、もしかして死んじゃった……?)」


 混乱した頭をフル回転させ、この状況を整理する。

 根本的な疑問――なぜ私がここにいるのか、は一旦置いておく。更に頭が混乱しそうだからだ。


 ゲーム画面で何十回何百回と見た風景。


 ここは、私がプレイしていた大好きな乙女ゲーム『マジカル♥ロマンス』の世界だ。それだけは強く確信していた。乙女ゲームの世界に転生……夢の中だけのありえない設定だと思っていたのに、まさか自分が巻き込まれるとは。



「……セレナ? ねえ、セレナ!」


 がしっと肩を掴まれ我に返る。透き通るようなブロンド色の髪。綺麗な青い瞳。あまりにも整いすぎている顔立ちの少女が心配そうにこちらを覗き込んでいた。


「ああ、よかった……。話の途中でいきなりフリーズするんだもの。びっくりしちゃった」


 少女は胸を撫で下ろし、ほっと息を吐く。


 ――セレナ?


 今、この子は確かに私をそう呼んだ。


 私の記憶が正しければ、このゲームの主人公の名前は

 《ルナ・ヴァルト》のはず。


 嫌な予感が背筋を走る。


 既に半分以上察しはついていたが、スカートの中に入っていた手鏡を見つけ恐る恐る覗き込んだ。


「(……いや、誰?!)」


 鏡に映っていたのは、見慣れたヒロインの顔ではない。オリーブ色のミディアムヘアに、ゆるくウェーブがかかっている。全シリーズを制覇したはずなのに、まったく記憶にない顔だった。


 そして、「セレナ」という名前も、初めて聞く。


 ――確信した。


 私はヒロインではない。

 ゲーム内では名前すら表示されなかった、モブキャラに転生している。ヒロインのクラスメイト、という括りのモブキャラに。もはや背景だ。


「……まあ、これはこれで良かったのかも」


 正直、私がヒロインに転生していたら、攻略対象キャラたちの甘い言葉や囁きに耐えられる自信はない。


『え? 何が?』


 少女――左胸のバッジに〈ニーナ〉と書かれた彼女が、きょとんと首を傾げる。


 名前つきの制服。ゲームをプレイしていた時には意識もしなかった要素だが、今この状況では大変ありがたかった。

 前世に悔いがないかと聞かれれば、正直返答に困る。だが、モブとして転生してしまったのなら仕方がない。


『マジロマ』シリーズの総プレイ時間は優に100時間超え。知識もある。選択肢も間違えない。


 ――まあ、その全てがモブには必要ない知識だけれど。


 この時の私は、まだ知らなかった。


 まさか、

 攻略対象キャラ全員の矢印が、モブの私に向くことになるなんて。

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