それぞれの思い。
イザベルとリアノは何があったのかクリスに聞いていた。
リアナはまだ涙を拭えず、しゃくり上げながら言葉をこぼした。
「……レイズ様は……何も悪くないのに……!
あんなふうに言われるなんて……っ」
声は震え、胸の奥の悔しさがそのまま涙に変わっていた。
リアノは静かに目を閉じて言う。
「……悪くない、とは言い切れません。
あの人々が抱えている怒りは、確かに“前のレイズ様”が残したものですから……」
苦しい現実を受け入れるような声色だった。
クリスは低く抑えた声で続ける。
「ですが……今のレイズ様は違います。
それでもなお責められるのなら、あまりに理不尽です。私は彼らをゆるせません。」
三人の思いが交錯する中、イザベルは黙って彼らの顔を見つめていた。
――わかってる。
過去のレイズが人々に恐れられていたことも、
それが消えるわけじゃないことも。
でも。
(今のレイズくんは違うの。
もう……あの頃の彼じゃない)
自分はずっと一緒に過ごしてきた。
不器用で、照れ屋で、でもまっすぐに頑張る“今の彼”を。
だからこそ――。
「……かわいそうだよ」
小さな声で、思わずこぼれていた。
リアナが涙の瞳で振り返り、リアノとクリスも目を向ける。
イザベルはぎゅっと胸に手を当てた。
「本当は違うのに……。
過去の罪まで全部、今の彼に押しつけられるなんて。
そんなの……かわいそうで見てられないよ」
誰もすぐには言葉を返せなかった。
ただ、その場に重くも切ない沈黙が落ちた。




