絵になるあいつ。
脱衣場。
レイズは大きなため息をつきながら、上着を脱ぎ捨てた。
「……ほんとに、何度言えばわかるんだよ……」
さっきのリアノの騒動を思い出し、ひとり愚痴をこぼす。
服を脱ぎ、ふと鏡の前に立つと――映った自分の姿に首をかしげた。
「んー……? なんか、痩せたか?」
顎のラインが、ほんの少しだがシャープになっている気がする。
お腹はまだぽよんとしているが、全体の輪郭は確かに変わっていた。
「……あんなに食ってるのに痩せるって、どういうことだよ」
そう呟きながら、ふざけ半分で力士のようなポーズをとってみる。
思った以上に“それっぽく”見えて、思わず小さく笑った。
(……割と、様になってんじゃねぇの?)
そんなことを考えていると――不意に、背中に視線を感じた。
「……ッ!?」
振り向くと、そこにはすでにクリスが立っていた。
背筋を伸ばし、礼儀正しく深々と会釈をする。
「本日も……ご一緒してよろしいでしょうか?」
その姿は、まるで騎士のように凛としていて隙がない。
レイズは動揺を隠すように鼻を鳴らし、そっけなく返す。
「あ、あぁ……。じゃあ先に入って待ってる」
「承知いたしました」
レイズは静かに姿勢を正すと、何事もなかったかのように湯殿へ向かっていった。
レイズは鏡に映る自分を見ながら、小さくぼやく。
「……やっぱアイツ、ずりぃほど絵になるよな……」
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