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【悪役転生 レイズの過去を知る 】―俺だけが知る結末を、今度こそ覆す―  作者: くりょ
新たな始まり

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ディアブロは楽しむ

その頃――。


 ディアブロは、アビスホールの深淵で戦いを楽しんでいた。


 ククク……!!


「食らえ!! 我の魂を!! だが我も貴様を食らうぞ!!」


 アビスホールの底。無数の魔力が渦を巻く闇の海の中で、二つの巨大な存在が激突していた。


 ウロボロス。


 そして――ディアブロ。


 竜と化物。


 どちらも、この世界の理の外にある存在。


 両者の牙が互いの肉体へ深く食い込む。


 骨が砕け、肉が裂け、魂が削れる。


 ディアブロは笑う。


「ククク……痛い…痛いな…だがな…」


 だがその瞳には、狂気のような愉悦が宿っていた。


「おまえはどうだ?」


 ウロボロスの目には感情などない。


 ただただ――目の前の獲物を食らうこと。


 それだけ。


 巨大な蛇竜は、ディアブロの肉を、魂を、容赦なく噛みちぎる。


 ディアブロはその牙を受けながらも、逆にウロボロスへ噛みついた。


 その牙から――


 ぐんぐんと魔力が吸われていく。


 ウロボロスの魔力が、ディアブロへ流れ込んでいく。


 ウロボロスはさらに力を込める。


 ディアブロの肉を引き裂き、魂ごと削り取る。


 互いに、削り合う。


 食い合う。


 奪い合う。


 それがこの場所――アビスホールの戦いだった。


 だが。


 ディアブロの削れていく魂の代わりに、アビスホールの膨大な魔力が肉体を再形成していく。


 魔力が肉となり、骨となり、筋肉となる。


 ディアブロは魂を消費して戦う。


 ウロボロスは魔力を消費して戦う。


 だが。


 次第に、ウロボロスの動きが変わった。


 アビスホールの魔力を――吸い始めた。


 自身の魔力だけでは足りなくなった証拠。


 ディアブロはそれを見て舌打ちする。


「邪魔だ!!」


 ディアブロは周囲の魔力を吸収することに集中する。


 すると――


 アビスホールの魔力が、まるで星の引力に引かれるようにディアブロへと収束する。


 膨大な魔力が渦を巻き、ディアブロへ流れ込んでいく。


 それを阻止するために、ウロボロスが突進する。


 巨大な顎が、ディアブロの腕へ噛みついた。


 ゴリッ――


 魂の根幹ごと腕が噛みちぎられる。


 だが。


 ディアブロは笑う。


「ククク……」


 噛みちぎられた腕の代わりに――


 魔力の腕が形成される。


 魂が消費するということは。


 体が動かなくなることに等しい。


 だがディアブロは違った。


 魔力の扱いにおいて――


 この怪物は、あまりにも天才だった。


「動かぬなら……魔力を変わりに動かせばよい!!」


 魔力の腕が形成される。


 それは実体と変わらぬ強度を持つ。


 そしてその腕が――


 ウロボロスの体を押さえつけた。


 ディアブロはそのまま、再び牙を突き立てる。


 そして。


 ついに見つける。


 ウロボロスの奥深く。


 眠る――


 魂の貯蔵庫。


「見つけたぞ…」


 ディアブロの目が細くなる。


 その瞬間。


 ウロボロスが反撃する。


 巨大な牙がディアブロの体を貫く。


 胴体を突き刺す。


 だが。


 ディアブロは笑った。


 そのまま――


 魂の塊を掴む。


 そして。


 一気に引き抜いた。


 ズルッ――


 巨大な魂が、ウロボロスの体から引きずり出される。


 その瞬間。


 ウロボロスの目の色が沈む。


 死んだのではない。


 仮初めの魂を奪われた。


 それだけだ。


 だがそれは、この世界では――


 敗北を意味する。


 ディアブロは、その魂を口へ運ぶ。


 ガリッ。


 ガリッ。


 齧る。


 だがすぐに吐き出した。


「……まずい」


 ディアブロは吐き捨てる。


「余計なものが…混ざる」


 ディアブロが回収したのは。


 自分が消費した魂。


 そして。


 ウロボロスを倒したという証明。


 つまり。


 このアビスホールで戦っていけるという証明だ。


「クククク!!!!」


 そのときだった。


 ディアブロが吐き出した魂へ――


 無数の怪物たちが群がる。


 アビスホールの化物たち。


 必死に。


 無我夢中に。


 その魂へ食らいつく。


 ディアブロはそれを見て顔を歪めた。


「気持ちが…悪い!!」


 そして。


 その群れを――


 まとめて踏み潰した。


「我が吐き出したものに群がるなど……!!」


 怪物たちは粉砕される。


 だが。


 ディアブロは周囲を見渡して、理解する。


 ウロボロスだけではない。


 これだけ長い戦いの末、ようやく倒せた存在。


 だが――


 それと同等の者が。


 この場所には。


 まだ。


 うじゃうじゃといる。


 ディアブロは笑う。


「ククク……」


「一匹倒せた…なら……」


「何匹…いても倒せる!!」


 ディアブロの魂が完全に復元される。


 その瞬間。


 どこからか声が聞こえる。


「……ブロス」


 ディアブロの目が細くなる。


「私の……ブロス……」


 ディアブロは吐き捨てる。


「貴様の産み出したブロス…すでにいない!!」


「我はディアブロだ!!」


 声は続く。


「ブロス……どうして……?」


 ディアブロは笑う。


「悪夢か…?」


「安心しろ…」


「おまえの夢…ぶち壊してやろう」


 そして低く言った。


「そう……」


「なら、消えて…」


 その瞬間。


 闇の中から。


 無数の神獣が姿を現す。


 ディアブロを――


 囲む。


 ディアブロは笑う。


「ククク……」


「わざわざ大勢で出迎えとはな!!」


 だが。


 ディアブロは理解していた。


 まとめて倒すことは不可能。


 数が多すぎる。そして強すぎる。


 だから。


 戦い方を変える。


 ディアブロは前方へ巨大な魔力の濁流を放つ。


 アビスホールを切り裂く。


 道が開く。


 そして――


 ディアブロは魂の形を小さくする。


 圧縮する。


 次の瞬間。


 弾丸のような速度で駆け抜けた。


 神獣たちが追いかける。


 ディアブロは笑う。


「まとめて倒す……?」


「そんなことができないことは、わかっている…」


 だからこそ。


「戦い方を変える…」


「一匹ずつ……」


「確実に仕留めてくれよう…」


 逃げたのではない。


 戦略的撤退。


 本来のディアブロであれば。


 そんな知恵も感情もなかった。


 だが。


 あの世界で過ごした時間。


 あの男たちとの戦い。


 あの仲間たちとの時間。


 それらすべてが――


 この怪物に変化を与えていた。


 個性。


 判断。


 自由な戦い方。


 ディアブロは凄まじい速度で駆け抜ける。


 背後から神獣たちが迫る。


 だが。


 ディアブロの向かう先は――


 アビスホールの出口。


 無の世界へ続く道。


 だが。


 ディアブロはそこへ行くつもりはない。


 その手前。


 そこにいる。


 ディアブロが“出涸らし”と呼ぶ――


 魔女の残骸たち。


 ディアブロは笑う。


 ここに。


 神獣たちをぶつける。


 それが狙いだった。


 知性も。


 感情も。


 神獣たちは持たない。


 疑わない。


 恐れない。


 ただ。


 根元の狙いを追い。


 全力でそれを仕留めに来る。


 ディアブロは笑う。


「自分がないとは……」


「本当に哀れな奴らだ」


ディアブロの笑い声は、アビスホールの深淵に長く響いた。


「ククククク!!!」


 背後から迫る神獣たちの気配は、まるで巨大な嵐のようだった。数えきれないほどの存在が、ただ一つの獲物――ディアブロを追っている。


 だがディアブロの口元には、余裕の笑みが浮かんでいた。


 速度はさらに上がる。


 魂を圧縮し、魔力で外殻を覆い、矢のようにアビスホールの空間を駆け抜けていく。


 後ろから轟音のような咆哮が響いた。


 神獣たちだ。


 巨大な角を持つ獣。

 六つの翼を広げた蛇竜。

 肉体が崩れながらも再生を続ける怪物。


 どれもウロボロスと同格か、それ以上の怪物。


 それらが、ただ一つの意思で動いている。


 ――根元の意思。


 ディアブロはちらりと後ろを振り返る。


「クク……本当に馬鹿な連中だ…」


 そして前を見る。


 遠くに、ゆらゆらと歪む領域が見え始めた。


 そこには、アビスホールとは違う異様な気配が漂っている。


 それは、無の世界へと続く境界。


 だがその手前――


 黒く濁った影のような存在が、無数に蠢いていた。


 ディアブロはそれを見て笑う。


「いた…」


 出涸らし。


 ディアブロがそう呼ぶ人形たち。


 魂を削られ、魔力も失い、形だけ残った化物。


 だが数だけは多い。


 アビスホールの奥で生まれ、境界付近に溜まり続ける存在。


 知性はない。

 感情もない。


 ただ本能だけで蠢く。


 ディアブロはさらに速度を上げる。


 そして――


 その群れへ突っ込んだ。


 瞬間。


 出涸らしたちが一斉に反応する。


 ディアブロの魔力と魂を感じ取り、狂ったように襲いかかる。


 だがディアブロはそれをすり抜ける。


 魔力の残像を残しながら、群れの中心を一気に突き抜けた。


 次の瞬間。


 背後から――


 神獣たちが突入した。


 轟音。


 衝突。


 爆発。


 アビスホールの魔力が一斉に暴走する。


 出涸らしたちは神獣たちに食らいつく。

 神獣たちはそれを踏み潰す。


 だが出涸らしの数は膨大で、そしてあまりにもしつこい。


 群れは崩れず、逆に神獣たちの動きを止めていく。


 巨大な神獣の一体が、出涸らしの群れに捕まる。


 数百の牙と髪が、同時に肉へ食い込む。


 神獣は咆哮する。


 だが止まらない。


 次々と群がる。


 噛む。

 裂く。

 削る。


 魔力が散り、魂が飛び散る。


 戦場は一瞬で混沌になった。


 ディアブロは遠くからそれを見て、楽しそうに笑う。


「ククク……」


「思った通り…」


 神獣たちは、ディアブロを追うことしか考えていない。


 目の前の敵を排除する。


 ただそれだけ。


 だから――


 出涸らしに巻き込まれても、戦いを止めない。


 結果。


 互いに潰し合う。


 ディアブロはゆっくりと振り返る。


 すでに何体かの神獣が、出涸らしの群れに足止めされていた。


 ディアブロは満足そうに言う。


「いいぞ…」


「奪い合え…」


 その目は完全に狩人の目だった。


 逃げているのではない。


 狩りの準備をしている。


 ディアブロは静かに魔力を吸い上げる。


 アビスホールの魔力が再びディアブロへ流れ込む。


 体が膨れ上がる。


 魂が強化される。


 ディアブロはゆっくりと言った。


「さて……」


 視線の先。


 一体の神獣が、群れを抜けてこちらへ向かってきていた。


 巨大な狼のような姿。


 全身から黒い炎のような魔力を放っている。


 ディアブロは笑う。


「一匹」


 牙を剥く。


「来たな」


 神獣が咆哮する。


 空間が揺れる。


 だがディアブロは一歩も引かない。


 むしろ――前へ出た。


「ククク……」


「狩りの時間だ…」


 神獣が突進する。


 アビスホールの空間が裂け、黒い魔力が尾を引く。


 だがディアブロは動かない。


 ただ笑っている。


 神獣の牙が迫る。


 その瞬間。


 ディアブロの体が霧のように崩れた。


 牙が空を切る。


 次の瞬間。


 ディアブロは神獣の真上に現れていた。


 魔力の翼がゆっくり広がる。


「遅い」


 ディアブロは神獣の背へ飛び降りた。


 魔力の爪が、その背へ深く食い込む。


 神獣が暴れる。


 だがディアブロは離れない。


 むしろさらに深く食い込んだ。


「ククク……暴れろ」


「そのほうが魂が揺れる」


 ディアブロの牙が首へ食い込む。


 魔力と魂が吸い込まれていく。


 神獣は暴れる。


 だが逃げられない。


 ディアブロは飛び上がる。


 そして空中で魔力を圧縮する。


 黒い球体が生まれる。


 それは圧縮された魔力。


 ディアブロはそれを神獣の口へ叩き込んだ。


 爆発。


 神獣の体が内側から弾ける。


 肉が裂ける。


 骨が砕ける。


 そして魂が露出する。


「見つけた」


 ディアブロはそれを引き抜いた。


 ズルッ。


 巨大な魂の塊。


 神獣の目が虚ろになる。


 ディアブロは魂へ噛みつく。


 ガリッ。


 ガリッ。


 そして余計な部分を吐き捨てる。


「……ふむ」


「この程度か」


 神獣の体が崩れていく。


 ディアブロは残骸を蹴り飛ばす。


 そして遠くを見る。


 神獣たちはまだ戦っている。


 出涸らしの群れと。


 互いに食らい合い。


 潰し合い。


 奪い合う。


 まさに地獄の戦場。


 ディアブロは笑う。


「ククク……」


「やはりここは……」


 腕を広げる。


「我にふさわしい場所だ」


 アビスホールの魔力が再びディアブロへ集まる。


 体が強化される。


 魂が濃くなる。


 ディアブロは呟く。


「さぁ……」


「次は、どいつだ」


 その声には恐怖も焦りもない。


 ただ純粋な歓喜。


 アビスホールは戦場。


 弱者は食われ。


 強者だけが生き残る。


 そして今。


 その戦場に、新たな強者が生まれつつあった。


 それは神獣でも。


 根元の眷属でもない。


 ただ一体の存在。


 だが確実に、この深淵の頂点へ近づいている。


 その名は――


 ディアブロ。


 魔を食らい。


 魂を奪い。


 戦いを楽しむ。


 アビスホールの狩人である。


 さらに速度を上げた。


「ククククク!!!楽しすぎる…」


戦いを心底楽しんでいた。

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たくさんの方に読んでいただき、本当にありがとうございます。 完結済の長編です。レイズたちの物語をぜひ最初から。
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