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【悪役転生 レイズの過去を知る 】―俺だけが知る結末を、今度こそ覆す―  作者: くりょ
新たな始まり

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想像と創造

その頃――無の世界では。


 ウルティアとニトは、レイズの“体”――魂がある場所へ戻ってきていた。

 白い空間。境界も時間も、温度すら曖昧な場所。

 あるのは、歩くという行為と、消えない気配だけ。


 ニトが、いつもの軽い声で言う。


「ねぇ? もう探索は終わりかい?」

「まだまだ何か発見があるかもよー?」


 ウルティアは疲れたように目を伏せた。


「もう……いいわよ」

「どうせ、ここには無いんでしょ?」

「その男の“首”なんて……」


 ニトはあっさり答える。


「無いよ」

「でも、そろそろ来るはずだ」


 ウルティアは眉をひそめる。


「なんで分かるのよ……そんなこと」


 ニトは笑ったまま、肩をすくめた。


「分かるよ?」

「僕の魂はいろんな所に散らばってるからさ」


「魂が散らばってるって……」

「私たちも魂を分けたりはしてたけど……」


「分けた、とは違うかな」

「ほら、僕やレアは、そもそも君たちと違ってさ」


 ニトは、まるで当たり前の事を言うように続ける。


「体とか魂とかの概念が、まるで違うんだよ」


 ウルティアは、しばらく黙った。

 そして、言葉を選ぶように口を開く。


「ねぇ……あなたたち……」

「レアリスも、ニトも……一体どうやって生まれてきたの……?」


 ニトは楽しそうに首を傾けた。


「ねぇ、ウルティア」

「もしも、この世界もあっちの世界も、誰かが造ったのだとしたら」

「それは何者だと思う?」


 ウルティアは頭の中で考える。


 そんなの――。


 だが、ニトが先に言った。


「神様ではないよ」


「まだ、なにも言ってないじゃない!」


 ウルティアが睨むと、ニトは笑って言う。


「読めちゃうからね」

「僕の質問には、言葉で返さなくてもいいよ?」


「それは嫌よ」

「心で会話って……私はあなたを読めないのに……」


「僕の心を読む?」

「うわぁ。それは気持ち悪い」


「……はぁ、もういいわ。それで?」


 ウルティアが促すと、ニトは少しだけ真面目な声になった。


「僕はね」

「この世界そのものが、誰かに“造られた”って仮定する」


「でも、それは神様じゃない」


 ニトは、ウルティアの顔を覗き込む。


「ウルティアも、頭の中では“魔女の世界”を想像したことがあるだろ?」


「あるわよ」

「それが私たちの……目的だったんだもの」


「そうそう。想像と創造」

「誰かが想像した世界が、創造された世界になる」


「つまり、この世界を想像する者がいて」

「僕とレアリスも、その“誰か”に造られた」


 ウルティアは、息を飲んだ。


「……どういうことよ」


 ニトは、短く答える。


「レイズだよ」


「レイズってさ」

「僕と会ったこともない」

「レアリスとも会ったこともない」


「なのに」

「死属性の使い方も」

「僕の本当の名前も」

「レアリスのことも……知っていた」


 ウルティアの背筋が冷える。


「知っていたからこそ、修正しに来てる」

「そんな意思を、彼から感じた」


「レイズって男も……心が読める、とかじゃなくて……?」


 ニトは笑った。


「まったく読めてなかったと思うよ?」

「でもね。未来は読めてた」


「つまり、この世界の歴史と未来を“知っている”】【レイズは未来を知っている】

「本来想像していた世界が、別の道へ辿ったから……修正しに来た」


 ウルティアは喉が乾く。


「つまり……レイズが……?」


 ニトは頷く。


「彼は“創造者がいる世界”から来た人だって思ってる」


「創造者がいた世界って……それって……」


「だから神じゃないよ」

「神もまた、想像により創造される者だから」


「神っていうのは本来」

「誰かの想像や願いによって生まれた“象徴”を指すんだ」

「……僕はそう考えてる」


 ウルティアは、唇を震わせた。


「じゃぁ……じゃぁ……どうなるの?」


 ニトは、平然と言う。


「すべてを書き換えることができる者」

「それが、君が会ったレイズさ」


「そして、今ここにいるレイズは」

「本来“書き換えることはできないはずのレイズ”だ」

「……僕はそう思ってる」


 ウルティアの胸がざわつく。


「じゃぁ……私たちのいるこの世界は……」

「私たちは、ここから……出ることも……?」


 ニトは首を振った。


「残念だけど、それはできないんじゃないかな」


「どうして……?」


「だって、それができるなら」

「君があったレイズは“死んでほしくないもの”を際限なく蘇らせたり」

「逆に、殺したり消したり」

「……なんでも出来ることになる」


「……それは、そうね」


 ニトは軽い調子に戻る。


「だからさぁ」

「きっと彼は、僕たちの世界で生き残るための努力を惜しまなかった。そして生きてる。」

「今は…ただの人」


「でも実際は」

「僕たちより、ずっとずっと上にいる」

「説明できない種類の“人”なんだよ」


 ウルティアは眉を寄せる。


「それで……?」

「期待できることって、なに……?」


 ニトは、楽しそうに笑った。


「死属性さ」

「君たちが嫌いな、嫌いな」


「死属性……」

「過去にも何人か、魔女の血を受け継ぐ子にもいたわよ」

「でも、なにもできなかった者がほとんど」

「それに、私たちが乗り移ることだってできない」


「魔女にとって“依代にできない”それは、ただの邪魔者だったのよ」


 ニトは、きっぱりと言う。


「それが、そうじゃない」


「死属性は、すべての属性でもっとも」

「限りなく“現実的”な力なのさ」


「現実的……?」


「そう」

「魔力も魔法も、すべては根元から与えられた“概念”だ」


「でも死属性は」

「その力を消し」

「そして、あらゆる魔法を失くすことができる」


「そんな異例の存在が、ずっといたんだ」

「でも、みんな知らなかった」

「知らないからこそ、“ハズレ”だと思ったんだろうね」


 ウルティアは堪えきれず叫ぶ。


「だから!! なんなの!? わけわからないわ!!」


 ニトは、白い空間を見上げるように言った。


「もしここで」

「この真っ白な空間で」

「彼が死属性を扱うことができたら――」


「僕たちは、どうなるんだろうね?」


 ウルティアの声が小さくなる。


「そ、それは……そもそも使えるの? ここで……」


 ニトは短く答えた。


「使えるよ」


「なぜなら、この世界がそもそも」

「無属性の神――“ディア”の生まれ場所だからさ」


「ディアって誰……」

「ここにいるってこと……?」


 ニトは少しだけ声を落とす。


「それがね、ディアはもう」

「レアリスと混ざって、あっちで存在を成してる」


 ウルティアは、思い当たる。


「それって……レアリスが、あの姿で現れた理由……?」


「そうだね」

「レアリスが実体を持って“ちゃんと存在する”のも」

「すべてディアのおかげだ」


 ニトは、白を指すように言う。


「ここがディアの世界なら」

「死属性にとって、ここは明らかに“その属性の場所”だ」


「つまり」

「このレイズが戻ったとき」

「もしかしたら――あちらへ帰れるかもしれない」


 ウルティアは目を見開く。


「ほ、ほんとに!? わたしも!?」


 ニトは微笑む。


「君も帰れるかもしれないね」


 だが次の言葉は、残酷に優しかった。


「でも、君はもう魔女じゃない」

「戻ったら君は、魔女としてじゃなく“人として”魂が戻る」


「つまり君は、完全に人として生まれ変わる」


「いまの君は」

「どのみち、戻っても自由に魂を移動させたりはできないだろうね」


 ウルティアは、喉が詰まった。


「わたしが……生まれ変わるの……?」


 ニトは、当然のように頷く。


「そうだよ」

「魔女としてじゃなく、人としてなら」

「魔女でできたことは当然できなくなる」


 そして、ウルティアの心臓を狙い撃つように言った。


「だから君のガイルへの想いも」

「魔女としての記憶も」

「……すべて無くなる」


 ウルティアは、唇が震えた。


「わ、わたし……は……どうしたら……」


 ニトは、笑みを崩さない。


「それはそれで、ゆっくり決めたら?」


「選択は自由だからね」

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たくさんの方に読んでいただき、本当にありがとうございます。 完結済の長編です。レイズたちの物語をぜひ最初から。
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