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【悪役転生 レイズの過去を知る 】―俺だけが知る結末を、今度こそ覆す―  作者: くりょ
新たな始まり

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イザベルとレイズ レイズとリアナ

レイズは、一人ずつ訪ねていく。


 イザベルのもとへ。


 読書をしていたイザベル。

 突然の呼び掛けに、びっくりする。


「ちょっと!! 後ろからいきなり――」


 だが、レイズの顔を見てすぐに異変を感じる。


「だ、大丈夫……?

 また、変なこと考えたの……?」


 心配するイザベル。


 レイズは言う。


「そうじゃない。

 俺の部屋に……レイズがいるんだ。

 それで、みんなを集めることになった」


「は……?

 レイズ……がいるの……?」


「ああ。今ならみんなとも話ができる。

 リアノが先に話してる。

 皆に伝えないといけないことがあるんだ」


 イザベルは、本を閉じずにそのまま乱雑に置く。


「そ、そんな……。

 じゃあ……レイズ、あなたは……?」


「ああ、もう完全に別になった」


 イザベルは、ふぅーと息を吐く。


「別れた……かぁ。

 でも……いつものあなただから安心して」


「ああ。別にそこは不安にはなってない。

 リアナとクリスにも声をかけてくる」


「イザベルは……先に話したいことがあるか?」


「そうね……。

 私は……うん。少しだけ話をしたいかな」


「ああ、なら今はリアノがレイズと二人で話してる。

 終わったら、交代で話してくれ。

 リアナとクリスも、ゆっくり呼んでくるから」


「レイズ……貴方一人で……平気?」


「大丈夫」


「そっか……うん。わかった」


 そうしてイザベルも、ゆっくりとレイズの部屋へ向かう。


 部屋の近くに来ると、リアノとレイズ……なのにレイズじゃない声が飛び交っていた。


 先程の会話は、部屋の外にまで漏れている。


 イザベルは、その漏れた声で理解する。


 ほんとに……ほんとに……レイズが……。


 しばらく待つと、部屋からリアノが出てくる。

 その顔は、散々泣いたのだろう。

 でもその表情は、決心した顔でもあった。


「イザベル様。

 中にレイス様がいます。

 お二人でお話をされますか?」


「リアノ……貴女……」


「はい。たくさんお話をしました。

 まったく納得はしていませんが!

 でも……レイズ様でした……」


「そ、そうよね」


 緊張するイザベル。

 そしてノックをする。


「レイズ……私よ」


 中から、ゆっくりと声がする。


「誰だ」


「ちょっと!! イザベルよ!!

 わかるでしょ?」


「いや……本気でわからなかったんだ。

 入ってくれ」


 イザベルは、なんとなく察している。

 レイズと会話をしたのは、お互いにほんとに幼い時だ。

 ゆえに、大人になってからの対話など、これが初めてだった。


 ゆっくりと、恐る恐る部屋へ入る。


 そこには、愛らしい姿をするレア。


 レイズはどこにも見当たらない。


「レイズ……どこに……?」


「目の前にいるだろ」


「え……え……レイズ、あんた……レアだったの!?

 どういうことよ!?」


「あいつから聞いてないのか……?」


「レイズがいるとしか聞いてなかったわよ……」


「まあ、あいつらしい」


「なんでだろう……。

 貴方からも今のレイズらしさを感じるわ」


「イザベルもそう思うか?」


「思うわ。

 レイズ……貴方どこにいってたのよ」


「どこにもいってない。

 ずっといたはずだ」


「そっか……やっぱり、ずっといたんだよね」


「ああ、そうだな。

 イザベル。不思議な感覚だが……久しぶりだな」


「久しぶりって……変よ。

 それになんだか、私が知ってるレイズとも違うし……」


「当たり前だ。

 俺は魂だけで言えば、すでに五十近くのおっさんだぞ?」


「ますます意味がわからない……」


「そんな話、今はどうでもいいんだろ?」


「ええ、どうでもいいわ。

 私が話したいこと、わかるの?」


「約束のことだな。

 イザベル……ヴィルじいさまの事は……また、守れなかったな」


「またってなによ……」


「ひとつはメルェを守ること。

 そして、おまえとの約束。

 ヴィルじいさまを二人で安心させる約束だ。

 それも俺は守れなかった」


「安心して。

 おじいさまはちゃんと……安心して行けたんだから」


「そうだよな……。

 安心してくれていたんだよな」


「そうよ。レイズとレイズが二人いたから。

 今はきっと、安心してゆっくり休んでるわ」


「ヴィルじいさまは、休むような人じゃないだろ」


「休むわよ。

 だって、休めるだけの場所を作ったじゃないの」


「ああ、俺が作ったわけじゃないけどな」


「そうよ?

 皆で作ったんだから」


「その通りだ。

 本来の歴史についての話は、大方聞いているな?」


「うん……聞いたわ。

 一人でよく頑張ったんだね」


「頑張ってたのはイザベルだった。

 俺は、手放しただけだ」


「でも……私は死んじゃったんでしょ?」


「ああ、無理をさせすぎて……おまえは……いや、いい」


「気になるじゃない!!」


「すまんな。俺が思い出したくない。

 今、目の前に元気なイザベルがいる。

 それが何よりも大事なことだ」


「本当にそう思っているなら、レイズも今から手伝いなさいよ!」


「悪いが……それはもうできないんだ」


「なんでよ」


「俺の魂は完全にここからいなくなるからだ」


「また……魂の話かぁ。

 ねえ、本当はここにいたいんでしょ?」


「正直なところ、もうおっさんすぎて疲れたんだ。

 だから先に休むさ」


 ここまで軽口で話していたが、イザベルがついに爆発する。


「いい加減にしなさいよ!!!

 ずっといなくなって……出てきたと思ったら!!

 またすぐいなくなる!?

 また、私たちを置いていくの!?」


「それじゃあ、ついてきてくれるのか?」


「どこによ……」


「俺にもわからない。

 魂の行き場所なんて、それこそ誰もわからないだろ」


「私にも死ねって言ってるの!?」


「それが答えだ…。

 つまり俺はもう死んでるんだ。

 だからこそだ、今ここにいることのほうが、ありえないことではないか?」


「ほんとに……口がよく回るようになったわね…」


「いつの話をしてんだ…子供じゃないからな…」


「ねえ、言うことがあるんじゃないの?」


「そうだな。皆が来てから伝える。

 イザベル。幸せになれよ」


「もう十分幸せよ!!

 レイズも……幸せになってよ……」


「それなら俺も十分に幸せと呼べる。

 なにしろ……みんな生きてるんだからな」


 その言葉の重み。

 一度失っているからこそ出る言葉。


 イザベルは、ついに涙をこらえきれなくなる。


「そうよ……みんな生きてるの……。

 ねえ……従姉妹の私を本当に置いていくの……?」


「当たり前だ。

 置いていく」


「そう……もう会えないのね」


「そうだな。もう会えない」


「本当に……つくづく救われないわよ……」


「救われ過ぎたさ。

 本来の歴史と比べたらな」


「そんな歴史、私たちは知らないって…」


「ああ。本当に知る必要がないことだ。」


「その言い回し……ほんっとに似てるんだから」


「イザベルもそう思うか?」


「うん……思うわよ。

 ねえ……レイズ……貴方、寂しくないの……?」


「独りは慣れたさ。

 それよりもアルバードの皆がいなくなるほうが、よほど寂しい」


「もう……やっと会えて話ができたのに……。

 残酷すぎるわよ……」


「本来は会うことも、こうして少しでも会話ができることすら奇跡だ。

 本当に、感謝しかない」


 イザベルも泣き崩れる。


「ねえ……おじいさまに、もし会えたらちゃんと……謝るのよ?」


「ああ、会えれば…必ず。

 ありがとう、イザベル。

 アルバードを、あいつを、レイズを支えてくれて感謝している」


「私だって!!

 たくさん支えられてきたんだから……」


「そうだな。

 あいつを頼む。」


「わかってるわよ……。

 私は今のレイズを愛してるんだから…」


「なんだか俺が言われてるみたいで、少し鳥肌が立つぞ?」


「鳥肌立つような体してないじゃない…」


「確かに……な」


 そうして、イザベルとレイズの会話は終わる。


その頃、レイズはリアナのもとへ向かっていた。


 扉を開けた瞬間、リアナの顔がこわばる。


「ま……まさか……」


 すでに何かを察しているようだった。

 その瞳には驚愕と、わずかな怯えが混じっている。


 レイズは、ゆっくりとうなずく。


「ああ……そのまさかだ」


 リアナは一瞬、視線を逸らし、それから真顔で言った。


「夜這いですか……?」


 レイズは眉をひそめる。


「そのまさかは取り消す。

 違う。ふざけてるんじゃなくてだ」


「わかってます」


 即答だった。


「私は行きません」


 はっきりと、拒絶。


「リアナ……どうしてだ。

 アルバードの……本物のレイズが……」


 リアナは目を伏せる。


「私は、昔のレイズ様は好きではありませんので。

 どれだけ酷いことをされてきたか……知っていますよね?」


「ああ、知ってる」


 レイズは苦く答える。


「だけど、あいつも……あいつも被害者だった。

 そのことも、リアナだって知ってるよな。

 あいつだって、そうなるまでは……優しかったはずだ」


 リアナは首を振る。


「過去に辛いことがあるのは、みんな同じです。

 それを理由に誰かに当たるのは違います。

 どんな理由がありましても、私は受け入れられません」


 声は震えていない。

 だが、握りしめた拳は白くなっている。


「頼む、リアナ」


 レイズの声が低くなる。


「あいつだってわかってる。

 リアナに酷いことをしたって、ちゃんとわかってる。

 だから、会話をしてやってくれ。

 あいつを……最後になるかもしれないんだ」


 その言葉に、リアナの眉が動く。


「さっきから、何を言っているんですか」


 ゆっくりと顔を上げる。


「私にとっては、レイズくん。

 あなたがレイズくんなんですよ?

 リアナの大好きなレイズくん」


 レイズは歯を食いしばる。


「いい加減にしてくれ。

 俺は……レイズだ。

 だけど……あいつは……」


「なにもしてくれていません」


 言葉を遮る。


「すべてを変えて、救ってくれたわけでもありません。

 私は、それに、みんなです。

 レイズ様になにもしてもらっていません。

 なにもです」


「なにもしてないわけじゃない!」


 レイズの声が荒れる。


「あいつがいたから、あいつが願ったから、俺がここにいるんだ。

 俺がここにいられたのは、あいつのお陰だ。

 みんなが生きていけるのは、あいつの願いそのものだ」


 息を整えながら続ける。


「だから、リアナ……せめて最後に、あいつの言葉を聞いてやってほしい」


 リアナは静かに問い返す。


「なんで最後と言いきるんですか。

 また会えるじゃないですか」


「な、なんで言いきれるんだよ」


 リアナは、真っ直ぐ見つめる。


「お別れをしなければ、また会えるんです。

 なら、お別れなんてしなければいいんです」


 その言葉で、レイズは理解してしまう。


 リアナが会わない理由。


 嫌いだからではない。

 拒絶しているわけでもない。


 いまここで彼の言葉を聞いてしまえば、

 レイズはきっと、なにも思い残すことなく行ってしまう。


 だからリアナは会わない。


 会わなければ、終わらない。


 終わらなければ、戻ってくる。


 それが彼女なりの、必死の引き止めだった。


「リアナ……おまえ……」


 言葉を失うレイズ。


 リアナは震えながら続ける。


「ずっとここにいたらいいんです。

 願ったなら、叶ったなら、ずっとここで幸せを、温かさを見ていたらいいんです」


 涙が溜まる。


「そんなに急いで離れる必要なんて、ないじゃないですか」


 レイズは目を閉じる。


「その通りだ……。

 でも違うんだ。

 時間がそんなに残されてないんだよ」


 静かに告げる。


「あの体は、レアは、レイズのものじゃない。

 レアリスが貸してくれているものだ。

 ならばそれは、レアリスに返す体だ」


 リアナの肩が震える。


「レアリスは……選ばせただけだ。

 そして、選んだあいつは……もう役目を終えた。

 つまり……あいつはもう消えるんだ。

 会えることなんてない。

 戻ってきたくても、戻れないんだ」


 リアナは涙ぐむ。


「そんなこと、わかってるんです。

 でも……辛いんです」


 声が崩れる。


「レイズ様は怖かった。

 でも、優しかった明るい頃も知っています。

 リアノやメルェと仲良くしていた頃も、全部、全部知っています」


 涙がこぼれる。


「だから、私は許したくない。

 ここからいなくなることを。

 だから会いたくない!!」


 レイズは、ゆっくりとうなずく。


「リアナ……わかった。

 わかった……もうなにも言わない」


 静かな声。


「けどな。

 レイズは、あいつは、消える。

 それだけは……わかってくれ」


「わかりたくないです」


 震える声。


「だから、一人にしてください」


 レイズは目を伏せる。


「ああ……わかった」


 それ以上は言わない。


 そうしてレイズは、その場を離れた。


 背後で、押し殺した泣き声が小さく響いていた。



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たくさんの方に読んでいただき、本当にありがとうございます。 完結済の長編です。レイズたちの物語をぜひ最初から。
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