魂の喧嘩
四肢を断たれ、床に沈んだジークの肉体。
外界では、静止している。
だが――
内部では。
魂と魂が、真正面からぶつかっていた。
「きさま!!」
怒号。
「私の体を!! 邪魔をするか!!」
赤い憎悪が燃え上がる。
対する金色の支配が、笑う。
「アハハハハ!!」
アルティナは、腹を抱えて嗤う。
「どう? 貴方がだいっきらいな“魔女”に体を乗っ取られる気分は?」
魂が絡み合う。
奪い合う。
「ほら!!」
「私が使えば、すぐにここから逃げ出せるわよ!?」
ジークは歯を食いしばる。
「わたしは!!」
「死んでも絶対におまえだけには譲らない!!」
魂がぶつかる。
火花が散る。
「私の体は私のだ!!」
「貴様は黙ってその力だけを使わせろ!!」
「俺が全部殺す!!」
「そして最後に私も死んでやる!!」
アルティナは、目を細める。
「アハハ……」
「貴方が死ぬことは、ありえないのよ?」
ゆっくりと近づく。
「忘れたの?」
「貴方の体を“殺せる”のは、私だけ」
「私しか、できないの」
ジークの魂が震える。
「忘れるわけがない!!」
「貴様だけは!! 絶対に許さない!!」
「絶対に使わせない!!」
アルティナは、ふと口調を変える。
「……ねぇ」
「ウルは――アルバードで消されたのよ?」
一瞬。
ジークの怒気が止まる。
「……ウルティアか?」
そして、吐き捨てる。
「消えてあたりまえだ!! あんな糞女は!!」
空間が凍る。
アルティナの笑みが、消える。
「……今、なんて言った?」
「糞女だ!!」
「きさまも!! エルディナも!! ウルティアも!!」
「他にも魔女がいるなら全員糞だ!!」
「死ね!! 死ね死ね死ね死ね死ね!!」
狂気が、爆発する。
だが。
アルティナは怒鳴り返す。
「ばかなの!?」
「あなたのほうがどうかしてるわよ!!」
「あれだけ無駄に殺して!!」
「それで私たちが滅ぶ!?」
「それ永遠に終わらないわよ!!」
「それこそ全員が救われないじゃない!!」
「バカバカバカ!!」
「アホ!!」
沈黙。
荒い呼吸。
憎悪。
嘲笑。
罵倒。
まるで、子供の口喧嘩のように。
魂の中心で、響き続ける。
だが皮肉なことに。
その喧嘩が終わらない限り――
二つの魂は決着がつかない。
主従も決まらない。
主導権も奪えない。
だから。
外界の肉体は、目覚めない。
赤と金は絡み合ったまま。
壊れもせず。
統合もせず。
ただ、延々と罵り合う。
それは、滑稽で。
それは、醜く。
それは、あまりにも人間的だった。
そして――
この内戦が続く限り。
ジークという器は、動かない。




