読まれまくるウルティア
面白いことを考えるんだね。
「……え?」
ウルティアは固まった。
今のは、口に出していない。
(自分を見つける入り口……?)
そう、心の中で考えただけ。
なのに。
「えっ、えっ!? 何勝手に納得してるの?」
思わず声が裏返る。
少年は、くすくすと笑う。
「納得してるのは君のほうでしょ?」
ぞわり、と背筋が粟立つ。
「ちょ、あなた読めて……」
「読まなくても読めるし」
あっさり。
「君の“解読”とはまた違うよ?」
ウルティアは息を呑む。
解読。
その言葉を、軽々しく出せる存在。
(……やっぱり、読んでるじゃない)
「読んでないよ?」
「うわぁぁ!!」
少年はけらけらと笑う。
「だから言ったじゃない。読まなくても読めるって」
それは、読んでいるのと何が違うのか。
「ねぇねぇ」
少年は首を傾げる。
「ウルティアはどうやってここに来たの?」
「ちょっと……あなたのほうが詳しいんじゃないの?」
「うん。詳しいよ?」
即答。
「ここは、レアリス……じゃなくて、ディアの持ってる空間そのものだからさ」
(ディアって、なによ……)
「アハハ!」
少年は大笑いする。
「解読まで持ってたのに、どうしてそんなことも分からないのさー!」
「う、うるさい!」
「そうだね。簡単に、短く、分かりやすく、優しく教えてあげるね」
(うざい……)
「うざいって思った?」
「思ってないわよ!!」
「嘘だぁ」
にこにこ。
無邪気。
でも、底が見えない。
「ディアは“無”の神」
「レアリスは、その無の神と混ざってレアリスディアになった」
「無の神は、簡単に言えば“死属性そのもの”」
「つまり、ここは“無の世界”ってこと」
「ちょっと!? 情報量多すぎるわよ!!」
頭を抱える。
少年は不思議そうに瞬きをした。
「それよりさ」
「ウルティア君、解読を持ってないんだ?」
ぐっと喉が詰まる。
「どうして? どうして捨てちゃったのさ?」
「……」
(捨ててない)
「捨ててない?」
「ちがう!!」
思わず叫ぶ。
「捨てたんじゃないわよ!」
「私は選んだの!」
「選んだからなくなったの!」
胸が熱くなる。
「もういいでしょ! 私、行く場所があるから先にいくわ!」
背を向ける。
「行ける場所なんて、どこにもないのに?」
足が止まる。
「う、うるさい!」
「なんなのよ! さっきからバカにして!」
少年は少しだけ目を細める。
「結構デリケートなんだねぇ」
そして、声がわずかに低くなる。
「でも、選択か」
「人を選んだウルティアだから、許してあげる」
「許すって、なにを……?」
「ここに居ること」
空気が変わる。
もし魔女を選んでいたら。
もし因子を抱えたままここにいたら。
目の前の少年は、きっと笑っていなかった。
追い出されていた。
いや――
もっと別の形で、消されていた。
その確信が、背筋を凍らせる。
少年はまた、無邪気に笑う。
「ねぇ」
「面白いの見せてあげるから、ついてきて?」
「ついてこなかったら迷子になるよ?」
白い世界。
境界も、道もない。
最初から迷子だ。
「やだなぁ」
「怖がらないで?」
(余計に怖いのよ!! それが!!)
ウルティアは、心の中で叫びながら。
それでも、ニトの後を追った。




