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【悪役転生 レイズの過去を知る 】―俺だけが知る結末を、今度こそ覆す―  作者: くりょ
新たな始まり

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本当の家族

そうして、続々と招かれる客人。


初めて会う者。

そして恐れていた者。

そして、もっとも愛してやまない者。


すべてがガルシアにとって、

もはや幸せの光景でしかなかった。


レイナが嬉しそうに駆け寄る。


「おじいちゃん!!」


ガルシアは目を細め、これ以上ないほど優しい顔で応えた。


「おぉ……レイナ。また大きくなって……それに、イザベルにもよく似ている。さぞ美人になることだろう」


イザベルは顔を赤くして声を上げる。


「もう! お父様! なに言ってるのよ!」


ガルシアは楽しそうに笑いながら、レイズに視線を向ける。


「レイズ……お前もそう思うだろう?」


レイズは迷いなく頷いた。


「あぁ。イザベルによく似て、とんでもない美人になるだろうな」


「な、なに言ってんのよ!?」


イザベルは真っ赤になって抗議する。


だがそれ以上に、彼女は驚いていた。


ガルシアとレイズの距離が、あまりにも自然だったからだ。


ぎこちなさがない。

遠慮がない。

そこにあるのは、ただ温かな空気。


イザベルはそっとレイズに近づく。


「ねぇ……レイズ。お父様となに話してたのよ……?」


レイズは胸を張る。


「なにって、お義父さんに俺の悩みを聞いてもらってただけだ」


ガルシアは愉快そうに笑う。


「悩みですか……。それなら私は、もう悩むことがなくなったよ。ハハハ」


レイズも声を上げて笑った。


「ハハハ! そういうことだ!! イザベル!」


「どういうことよ……おかしいわよ、二人とも……?」


レイナはにこにこしながらガルシアの腕に抱きつく。


「えへへ! おじいちゃん!! 私、おじいちゃん大好きだよ!」


その言葉に、ガルシアは堪えきれず涙をこぼした。


「……っ、あぁ……ありがとう」


レイズは穏やかに言う。


「そうだな、レイナ。俺もお義父さんが大好きだよ」


「ちょっと、ほんとに!!」


イザベルは呆れながらも、

二人の喜ぶ姿を見て、胸の奥がどうしようもなく熱くなる。


それは、かつて距離があった二人の関係を知っているからだ。


メルェの件もあり、

どこかぎこちなかった父と夫。


それが今では、本当の親子のように笑い合っている。


その光景が、

イザベルには何よりも嬉しかった。


「……もう、知らない!」


照れ隠しのようにそう言って、

彼女はそそくさとその場を離れる。


「おい! イザベル、どこに行くんだ!? せっかくお義父さんに会えたのに!」


「自分の部屋よ! ついてこないで!」


レイズとガルシアは顔を見合わせる。


そしてガルシアは、どこか誇らしげに言った。


「どうだ……私の娘は本当に可愛いだろう」


レイズは迷いなく答える。


「あぁ。本当に……可愛いと思う」


ガルシアは真面目な顔に戻る。


「前は……あんなことがあった。だから、もう一度聞いてもいいかな、レイズ」


レイズは首をかしげる。


ガルシアは、静かに、しかしはっきりと言った。


「娘を……孫をどうか、幸せにしてほしい」


レイズは笑う。


「ははは……もちろんです。俺も幸せになりますから」


その言葉に、ガルシアは本当の意味で安堵した。


最愛の娘を。

そして孫を。


心から託すことができた。


それが彼にとって、何よりも嬉しい瞬間だった。


レイズは空気を切り替えるように言う。


「さてと……紹介します」


「こちらが聖国の……元聖騎士のジェーンです」


ジェーンは軽く頭を下げる。


「あぁ、お邪魔して悪いねぇ。まぁ、元だけど一応そういうこと。私はジェーン。そしてこの子が――聖国の聖女、アリスだ」


アリスは緊張しながら言う。


「よ、よろしくお願いします……」


ガルシアは目を見開く。


「え!? ただの子供ではなく聖女!? おいレイズ、それは聞いてないぞ!?」


「あれ? 言いませんでしたっけ?」


「言ってない! 子供のアリスが来るとしか言ってなかったではないか!」


レイズは笑う。


「そんな畏まらなくていいですよ。聖女だろうがなんだろうが、子供は子供じゃないですか」


「はぁぁ……まったく……とんでもない人物しかいないではないか……」


続いてリリィが前に出る。


「あ、あの……私は魔女見習いのリリィといいます。その……レイズ様とは……」


「あぁ、仲間だ。今アルバードでもっとも期待を寄せられてる子だ」


ガルシアはリリィを見る。


おどおどしていて、どこか緊張している。


だがすぐに理解する。


「……あぁ、いい子じゃないか」


ジェーンが笑う。


「たぶんガルシアさんと同い年くらいだよ?」


レイズとガルシアは同時に固まる。


「え……?」


レイズはようやく理解する。


未来で知るリリィと、今のリリィ。

変わらなすぎて気付かなかった。


ガルシアは慌てて頭を下げる。


「も、申し訳ない! あまりにもお若く見えたもので……!」


「え、え? その……はい……でもジェーン様……あまり年齢の話は……」


ジェーンは肩をすくめる。


「私だけババァ扱いは勘弁してくれよ」


「そんな!! ジェーン様もお若く見えますよ!?」


「はいはい」


そして最後に。


ガルシアはゆっくりとクリスを見る。


「ク……クリス様……よくぞレイバードにお越しくださいました」


クリスは首をかしげる。


「私に“様”は必要ありませんが……?」


「い、いえ……その……無礼を、たくさん……」


クリスは静かに言う。


「気にしていません。あの時無礼を働いたのはグレサスとあの男です。イザベル様の父であり、レイズ様が父と敬う貴方に対しては、私の方がはるかに格下です。どうぞ呼び捨てで構いません」


レイズがぼやく。


「だから……クリス……お前のそういうところが……普通に怖いんだよ」


「そんな! 私はレイズ様が怖がるようなことは!」


「俺じゃねぇ! お義父さんがだよ!」


ガルシアは笑う。


「ハハハ……では……そういうことでしたら……クリス、よくぞ来てくれた」


「お招き頂きありがとうございます。私はレイズ様の忠実なる下僕、クリスと申します」


「知ってるよ!」


「いえ、ちゃんと言っておかねばなりませんので」


ガルシアは心底感心する。


「本当に……心強すぎる配下を持っているな、レイズ」


レイズは穏やかに笑う。


「ははは……本当に、そう思いますよ」


あまりにも温かく。

あまりにも自然な空気。


アルバードの一員として、

ガルシアも確かに加わった。


それは誰の宣言でもなく、

ただ――空気が語っていた。



ガルシアの心情…



私は、こんな光景をもう一度見られるとは思っていなかった。


娘が笑っている。

孫が走っている。

そして――あのレイズが、自然にそこに立っている。


それだけで、胸が熱くなる。


かつて私は、彼を正しく見ていただろうか。


メルェの件。

あの時の空気。

互いに言葉を選び、踏み込みきれなかった距離。


父として守れなかった悔いと、

義父として信じきれなかった迷い。


そのすべてが、いま目の前の光景によって、静かに溶けていく。


「おじいちゃん!!」


レイナが駆け寄る。


あぁ、なんと眩しいのだろう。

私はしゃがみ込み、両腕を広げた。


「おぉ……また大きくなって……」


本当に、イザベルに似てきた。

あの子がまだ幼かった頃の面影が、そのままここにある。


「さぞ美人になることだろう」


イザベルが顔を赤くする。

昔と同じだ。

照れ隠しに怒ったふりをするところまで。


そして私は、ついレイズを見る。


「お前もそう思うだろう?」


試すつもりではなかった。

だが、どこかで確かめたかった。


レイズは、迷わず答えた。


「あぁ、とんでもない美人になる」


――即答だった。


その迷いのなさに、胸が震えた。


この男は、本当にこの子たちを愛している。


言葉ではなく、呼吸のように自然に。


イザベルが戸惑っている。

それがまた可笑しくて、愛おしい。


だが私が何より驚いたのは――

私とレイズの距離だ。


ぎこちなさがない。


互いに気を遣う必要がない。


悩みを聞いた。

ただそれだけだ。


だが、私は理解している。


あの男は、誰にでも弱音を吐くわけではない。


「悩みですか……それなら私はもう悩むことがなくなったよ」


あれは本心だ。


私は、もう迷っていない。


レイズに娘を託せる。


そう確信できたのだから。


レイナが「大好き」と言う。


私は涙をこぼす。

情けないと思うほどに。


歳を取ると涙腺が弱くなるというが、

これは違う。


安堵だ。


「俺もお義父さんが大好きだよ」


レイズがそう言う。


軽口のようでいて、

そこには本気がある。


イザベルが部屋へ逃げる。

あれは照れだ。


幸せを隠すための逃走だ。


私はレイズに問う。


「娘を……孫を、幸せにしてほしい」


一度、失いかけた。

いや、壊しかけた。


だからこそ、もう一度聞く。


レイズは笑う。


「もちろんです。俺も幸せになりますから」


――俺も。


その一言が良い。


娘を幸せに“する”のではない。

一緒に“なる”のだ。


それが夫というものだ。


私は、心から託した。


そして次々と現れる面々。


聖騎士。

聖女。

魔女見習い。


なんという顔ぶれだ。


だが不思議と恐れはない。


この男が中心にいる限り、

この場は壊れないと分かる。


リリィという少女を見る。


年齢を聞いて驚く。

だが、あの瞳は若くない。


あれは覚悟を知る目だ。


そして――クリス。


私は一瞬、身構えた。


過去のことがある。

無礼もあった。


だが彼は言う。


「どうぞ呼び捨てで構いません」


あの真っ直ぐさは本物だ。


恐ろしいほどに誠実だ。


私は思う。


レイズは、本当に人に恵まれている。


いや、違う。


あの男が、恵まれるに値する存在になったのだ。


温かい。


あまりにも自然だ。


私はもう“外”ではない。


アルバードの一員として、

この輪の中に立っている。


そして確信する。


あの日、疑った自分を、

今なら許せる。


レイズは――

本物の家族になったのだから。

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たくさんの方に読んでいただき、本当にありがとうございます。 完結済の長編です。レイズたちの物語をぜひ最初から。
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