表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【悪役転生 レイズの過去を知る 】―俺だけが知る結末を、今度こそ覆す―  作者: くりょ
新たな始まり

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

702/777

レイズの答え。

(……俺は、普通に幸せになりたいだけなんだ)


 その願いは、王のものではない。

 英雄のものでもない。


 ただの、一人の男の願いだ。


 けれど。


 胸の奥に、もっと深い棘がある。


 ずっと、抜けない棘が。


(そもそも……)


 レイズはゆっくりと目を伏せる。


(俺は、レイズじゃないんだから)


 その事実は、誰よりも自分が知っている。


 この身体はレイズだ。

 この名前もレイズだ。

 血も、立場も、過去も、レイズのものだ。


 だが――


 “本来のレイズ”が望んだ未来を、

 いま歩いているのは自分だ。


 奪ったわけではない。

 だが、引き継いだわけでもない。


 ただ、上書きした。


(皆が見ているのは“レイズ”だ)


 王としてのレイズ。

 アルバードの象徴としてのレイズ。

 救った英雄としてのレイズ。


 だが、その中心にいる“俺”は。


 誰だ?


 本来ここに立つはずだった少年は、

 どこにいる?


 俺は、

 あの悪役だったレイズに、

 この景色を返したかっただけだ。


 暖かい未来を、

 穏やかな世界を、

 家族に囲まれた日々を。


 それを、渡したかった。


 なのに。


 気づけば、

 その席に座っているのは自分だ。


(優先される資格なんて、あるのか?)


 皆が命を懸ける。

 皆が未来を預ける。

 皆が自分を中心に回る。


 だがその中心は――

 本当に“正しいレイズ”なのか?


(俺は……代わりだろ)


 それでも皆は、疑わない。

 疑う必要がないほど、信じている。


 それが、余計に苦しい。


(俺を最優先にするなよ)


 その言葉の裏には、

 こんな思いが隠れている。


(だって……俺はレイズじゃないんだから)


 本来のレイズが背負うはずだった未来を、

 本来のレイズが愛されるはずだった世界を、


 自分が受け取っている。


 それが間違いだとは思わない。

 だが、正しいとも言い切れない。


 だからこそ、

 王であり続けることが怖い。


 皆の人生を、自分の存在で縛ることが怖い。


 もし、いつか。


 この“レイズではない俺”が、

 間違えたら?


 もし、いつか。


 本来のレイズとは違う選択をしたら?


 その責任は、

 誰が取る?


(……俺は、レイズじゃない)


 だからこそ、

 中心に立ち続けることが怖い。


 だからこそ、

 皆に自由でいてほしい。


 自分がいなくても、

 回る世界であってほしい。


 レイズは静かに息を吐く。


 王としてではなく。

 英雄としてでもなく。


 ただ一人の、迷い続ける男として。


(それでも……)


 それでも。


 イザベルを愛している。

 子どもたちを守りたい。

 仲間を信じている。


 それだけは、嘘ではない。


 だからこそ。


 中心ではなく、

 対等でいたい。


 王ではなく、

 ただのレイズでいたい。


 たとえ――


 本当はレイズではなくても。


(もう、未来は変えただろ?)


 心の奥で、誰にともなく問いかける。


 あの結末は回避した。

 守るべきものは守った。

 救えなかったはずの命も、いまここにある。


(なら……)


 ゆっくりと、胸の奥から言葉が浮かぶ。


 おれは“レイズとして”じゃない。


 俺は、俺としてここに在りたい。


 この立場は――

 この場所は――


 俺のものじゃない。


 俺が用意したものだ。


 戦いを止めるために。

 守るために。

 未来を変えるために。


 必要だったから作っただけだ。


 そこに、殉ずる必要なんてないはずだ。


(俺はもっと……)


 もっと、この世界を知りたい。


 一人の人として。


 王ではなく。

 象徴ではなく。

 中心でもなく。


 ただの一人の人間として。


 朝の空気を吸って、

 子どもたちの笑い声を聞いて、

 隣にいるイザベルと他愛ない話をして。


 そんな時間を、ちゃんと感じたい。


(王としての立場なんて、求めてなんかいない)


 当主であることを受け入れたのは、

 あくまでも皆を守るためだ。


 必要だったから、立った。


 だが――どうだ。


 皆を守った。

 皆を救った。

 未来を変えた。


 やるべきことは、やったはずだ。


 それなのに。


 いまから起きることなんて、

 あまりにも俺にもわからない。


 この先はもう、“知っている未来”じゃない。


 なら――


 どうしてまだ、王でいなければならない?


(そもそも……)


 誰かに特別に思われたいわけじゃない。


 崇められたいわけでもない。

 優先されたいわけでもない。


 レイズが、

 本来のレイズが、

 できたはずの可能性を、


 俺は示したかっただけだ。


 悪役として終わるはずだった少年に、

 違う未来があったと、

 証明したかっただけだ。


(もう、十分だろ?)


 胸の奥で、問いかける。


 なぁ……レイズ。


 おまえだって、別に王になんてなりたくなかったはずだ。


 皆が守れて、

 生き残れて、

 笑えていれば――


 それで、よかったはずだよな……?


 王座なんて、

 称号なんて、

 国なんて、


 おまえはきっと望んでいなかった。


 ただ、

 守りたかっただけだ。


 ただ、

 失いたくなかっただけだ。


 俺は、それをやった。


 だから――


 もう、いいだろ?


 もう、

 俺は俺として、

 ここに立ってもいいだろ?


 王じゃなくていい。


 レイズである必要もない。


 ただの一人の男として、

 この世界を、

 ちゃんと歩いてみたいんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
たくさんの方に読んでいただき、本当にありがとうございます。 完結済の長編です。レイズたちの物語をぜひ最初から。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ