抱き抱える姉
泣きに泣き疲れたリアノは、やがてレイズの横たわるベッドに寄りかかるようにして眠りについていた。
その表情は、まるで心の底から報われたかのように安らかで。
レイズはそんな彼女をちらりと見やり、思わずそっと手を伸ばす。
頭を撫でてやろうか――そう思った、その瞬間。
「……いやいや、ここで少女の頭に触れるとか、俺きもちわるっ!」
慌てて手を止めるレイズ。
だが、その思いが彼女にとってどれほど温かいものなのか――
レイズはまだ知る由もなかった。
しばらくすると、静かに扉が開き、リアナが姿を現した。
「こら……リアノ!」
当主様の傍らで眠っている妹を見て、一瞬、声を荒げそうになる。
だが、眠る彼女の顔を見た瞬間、リアナは理解した。
それは不敬でも怠慢でもない。
――ただ、深い感謝と想いを伝えようとした結果なのだ、と。
一方でレイズは慌てふためき、必死に両手を振る。
「お、お、お、俺なにもしてないからね!? 本当だぞ!?」
リアナはそんな様子に小さく微笑み、優しくリアノを抱き上げた。
「承知しています。当主様」
そして静かに言葉を添える。
「それでは……また鍛練に励む姿を、楽しみにしています」
そう告げて部屋を後にするリアナ。
その背中を見送りながら、レイズは小さくつぶやいた。
「……やだ、あの娘、たくましい……」
そうしてレイズは我を取り戻し、
改めて今日得た事実を頭に思い浮かべるのだった。




