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【悪役転生 レイズの過去をしる】続編のプロットができたので章を更新します。  作者: くりょ
新たな始まり

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ガイルの災難

画面が切り替わる。


――空。

雲を引き裂くように、スカイドラゴンが疾走していた。


その背に跨るのは、魔王ガイル。

「……ぁあ、きめぇ……」

吐き捨てるような声が、風に散る。


頭から離れない。

あの女――本物の魔女、ウルティア。

言葉の端々。

視線の奥。


そして何よりも――

なぜか、自分の“本当の名前”を知っていたこと。


思い出すだけで、背中が粟立つ。

「魔女、ってのはよ……」

ガイルは鼻を鳴らす。

「人にも魔族にも、嫌われる存在ってのは……なんとなくわかったぜ。」


理屈ではなく、本能が拒絶する。

近づいてはいけない“根源的な違和感”。

そして、それ以上に――落ち着かない。

見られている。

つけられている。

視線が、剥がれない。

(……ここまで飛ばしてきてるってのに)


スカイドラゴンは全速だ。

魔女と直に対峙したときの気配も、もう感じない。

なのに。

背後に、何かがいる気がしてならない。


やがて視界に広がるのは、異質な領域。

魔力の波長が、完全に“無”の森。

――ジュラの森。


ガイルは無意識に、肩に力を入れる。

(……魔女も気持ち悪ぃが)

「レアリスは……流石に洒落になんねぇ……」

独り言のように呟き、スカイドラゴン――スカイに語りかける。

「なぁスカイ、ここはさっさと越えようぜ……?」


スカイは低く唸る。

だが、その羽ばたきが――鈍る。

「……おい?」

速度が落ちる。

風の抵抗が、異様に重い。

「おい!? スカイ!!」


ガイルは声を荒げる。

「もう少しだろ!? ここは長居する場所じゃねぇ!!」


だが、スカイドラゴンの力は、明らかに削がれていく。

魔力を吸われている。


抗えない“何か”に。

そして――背後から、声。

「……怖がらないで……」


ガイルの心臓が、跳ね上がる。

その言葉。

その言い回し。

(……クソが)

一番、怖い言葉だ。


ガイルは、振り返らない。

振り返ってはいけないと、理解している。

「……わかった、わかったって」

諦めたように、両手を上げる。

「抵抗もしねぇし、逃げもしねぇ」

声が、少し掠れる。

「だから……通らせてくれ……」

一拍。


背後から返ってきたのは、淡々とした声。

「……まだ、だめ……」

心臓が、早鐘を打つ。


次第にスカイドラゴンは滑空し、

ゆっくりと――地へ降り立つ。


完全な着地命令。


ガイルは深く息を吐き、両手を上げたまま振り向く。

「だから言ってんだろ……」

「スカイから魔力奪うな」

「こいつは……何も悪くねぇ……」


そして――見た。

そこにいたのは、


首をわずかに傾げた――

とてつもなく神秘的で、同時に恐ろしい女。

レアリスディア。


言葉もなく、ただ“そこにいる”だけで、

世界の法則が歪む存在。


ガイルは、深く溜息をついた。

「……はぁぁ……」

「一応、理由くらい聞かせてくれ」

「なんで……だめなんだ?」


返事はない。

レアリスは答えず、


無言のままガイルへ手を伸ばす。

触れられた瞬間――

「――っ!!」

声にならない悲鳴。

魔力が、奪われる。

否――“剥がされる”。


存在の根幹を、直接掴まれる感覚。

レアリスは、何かを掴むように指を閉じ、

そして、手を離した。

「……ん」

「もう……いって……?」


ガイルは、膝に手をつき荒く息を吐く。

「……なん、なんだよ……」

顔を上げた時には、

レアリスの姿は、もうなかった。

「……ふざけんなよ……」

悪態をつきながら、再びスカイに跨る。


スカイドラゴンも、酷く疲弊していた。

だが、本能が理解している。

――ここから、離れろ。


羽を震わせ、必死に空へ舞い上がる。

その光景を、


ジュラの森の奥深くから――レアリスは眺めていた。

去っていくガイルを確認し、

手の中の“何か”に、静かに語りかける。

「……余計なこと、しないで……」

「……帰って……」

指を開く。


捕らえられていた“それ”は、

力なく揺らぎながら、元の道へと戻っていった。

――その頃。

遠く離れた砂漠。

オアシスの木陰。


一人の女が、顔を歪める。

ウルティア。

「……はぁぁ……」

「逃げられちゃった……」

困惑と苛立ちが混じる声。

「……こんなの、初めてだなぁ……」

誰にともなく、問いかける。

「……君は……何なのさぁ……?」

理解できない。


魂の欠片が掴まれ、

力を削がれ、

ふらふらと戻ってくる感覚。


やがて、その困惑は――憎悪へ変わる。

「……ほんっとに……」

「つまんないこと、してくれるよね……」

邪魔をした存在が、何者なのかも分からない。

ただ――


邪魔をしたことだけが、許せない。

それが、

魔女たちが崇拝する“秩序の災害”――

レアリスであるとも知らずに。

「……まぁ、でも……」

ウルティアは、ふっと笑う。

「場所は……だいたい、分かったし……」

視界に揺れる、真っ赤な靄。

激しく、怒りを孕んで。

「そんなに怒らないでよ……」

「お姉さま……?」

甘く、歪んだ声。

「……必ず、見つけるからさぁ……」

「ガイルは……必ず……」

「お姉さまの“依り代”を、産み出してくれる……」


ウルティアは、ガイルを思い浮かべる。

それは評価であり、

執着であり、

そして――恋に似た歪み。

「……ほんっと……」

「やっと、見つけたのになぁ……」


砂漠の風が、女の笑みをかき消した。

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たくさんの方に読んでいただき、本当にありがとうございます。 完結済の長編です。レイズたちの物語をぜひ最初から。
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