大好きなラスボス
そうして話が一段落した頃、ガイルがふと切り出した。
「で、いつ行く?」
その問いに、レイズは即座には答えず、少し考えてから静かに首を振る。
「いや、まだだ。リリィが俺に会いに、ここへ向かってきてるんだろ?
入れ違いになるのは避けたい。まずはリリィに会ってから……だな」
「なるほどな」
ガイルはあっさりと頷いた。
「じゃあ俺は先に様子を見てくる。ひとっ飛びだ。
さっきおまえが言ってたみたいな状況になってたら、どうすりゃいい?」
レイズは即座に思考を巡らせる。
規模は分からない。
だが、最悪の事態を想定するなら――。
「まずやるべきは、塞き止めだな」
「水の流れを止めるってことか?」
「ああ。ただし、そんな簡単な話じゃない。どれくらい広がってるかも分からないし……
ガイル、おまえの魔力がどれだけもつかにもよる」
だが、その言葉にガイルは肩をすくめ、笑ってみせた。
「そんなもん、まったく問題ねぇぜ」
「……さすが魔王だな」
レイズは、ただ純粋に感心する。
魔力の総量。技量。
その一点において、ガイルの右に出る者はいない――そう断言できるほどだ。
「なら、頼んだ。できる限りのことをやってきてくれ」
レイズの言葉に、ガイルは軽く手を振った。
そのときだった。
「わ、わたしもついていく!」
ルルが、思わず声を上げる。
「おいおい、ルル」
ガイルは振り返り、いつになく真剣な声で言った。
「これは旅じゃねぇ。救うための行動だ。
だから、てめぇはここで待ってろ。数日で戻ってくる」
その言葉に、レイズは思わず頭を抱えつつも笑ってしまう。
(いやいや……元はといえば、おまえがやったことなんだけどな)
それでも。
“救うための行動”と、迷いなく口にしたガイルの変化が、レイズにはただ嬉しかった。
(……ほんと、変わったよな。ガイル)
ルルは、ふてくされたように唇を尖らせる。
「……ほんとに、数日だけですよ?
数日たっても帰ってこなかったら……わたし、一人で探しに行くんですから!」
「おいおい……」
ガイルは頭を掻きながら、レイズを指差す。
「そういうわけだ。ルルを一人でどこにも行かせないよう、頼んだぜ」
「待て待て!
それ、俺がルルに酷いことしてるみたいじゃねぇか!」
抗議するレイズをよそに、ガイルはすでに踵を返していた。
次の瞬間、スカイドラゴンが大きく羽ばたき、空へと舞い上がる。
その姿は、またたく間に視界の彼方へ消えていった。
それは、ガイルなりの責任感であり、焦りの表れでもあったのだろう。
だからこそ、レイズは思う。
――やはり、ガイルが好きだ。
ゲームの世界で、カイルとして生きたこの世界でも。
そして今、レイズとして生きるこの世界でも。
根は誰よりも真っ直ぐで、誰よりも正義なのに、
“悪役のラスボス”という役割を背負わされてしまった男。
そんなガイルを、レイズは心の底から愛していた。




