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【悪役転生 レイズの過去をしる】続編のプロットができたので章を更新します。  作者: くりょ
新たな始まり

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異世界の可能性

クリスとの戦い――

 否、戦いと呼ぶことすらできない一方的な模擬戦を終え、レイズは深く落ち込んでいた。

(なに今さら落ち込んでんだよ……)

 本来のレイズは、意識の奥で吐き捨てる。

(クリスに本気で勝てると思ってたのか? そんなわけ、ないだろ……)

 だが、この体にいるレイズが沈んでいる理由は、単に無様に負けたからではなかった。

 ――ゲームの知識があれば。

 ――死属性が使えれば。

 ――攻略という「答え」を示せれば。

 たとえ勝てなくとも、皆の前で「可能性」を示すことはできたはずだった。

 それなのに、結果はどうだ。

 弱く、頼りなく、ただ慰められるだけの存在。

 その“慰められる側”に立ってしまった自分が、何よりも許せなかったのだ。

 心配してリアノやリアナが部屋を訪れるが、レイズは一人にしてくれと告げ、つい愚痴をこぼしてしまう。

(……八つ当たりかよ)

 本来のレイズは、苦く笑った。

(……でも、俺も同じだったな)

 メルェを守れなかった。

 救えなかった。

 その悔しさを、怒りに変え、リアナにぶつけ、世界に背を向けて生きてきた。

 だから、人のことは言えない。

(だけど……お前しかいないんだ)

 情けなくて、弱くて、頼りない。

 それでも、未来を変えるためには――

 この体にいる“レイズ”に、すべてを託すしかない。

 そんな夜。

 一人の少女が、レイズの部屋を訪れた。

 イザベルだった。

 断ろうとするレイズの言葉など意にも介さず、彼女はぐいぐいと距離を詰めてくる。

(……イザベルか)

 本来のレイズは、どこか諦めたように思う。

(まぁ……今さらだな)

 かつての自分は、彼女にすがることすらできなかった。

 願うことも、抗うこともできず、ただ時に流されるだけだった。

 今は違う。

 このレイズの周りには、人がいる。

 笑い、叱り、支えてくれる仲間がいる。

 そうしてイザベルに散々からかわれ、騒がされ――

 気づけば、彼女はそのまま眠ってしまっていた。

 静まり返った部屋で、レイズは小さく息を吐く。

……こうやって支えられてたら…

 ぽつりと、誰に聞かせるでもなく呟く。

...俺も……間違えずに済んだのかもしれないな...


 本来のレイズは、その言葉を黙って受け止めることしかできなかった。


 ――そして、朝。

 懲りもせず、レイズは鍛練場に立っていた。

 そこへ、またしてもクリスが現れる。

 互いに気まずいのか、言葉はない。

 木刀を構えながら、視線を逸らす二人。

 その様子を見て、イザベルが腹を抱えて笑った。

「……どうやってそれで戦うの?」

(……ほんとに、もう迷ってる時間はないのにな)


 レイズは、クリスと向き合う。

 そして、これまで誰にも見せたことのない、奇妙な構えを取った。


(……なにする気だよ。なにかの形だけ真似しても――)


 本来のレイズがそう思った瞬間。


 クリスの表情が、明らかに変わった。

 驚愕。

 次の瞬間、クリスが動く。


 宙を舞うように跳躍し、上空から連撃を叩き込む。


 だが――

 レイズは、それを“知っていた”かのように動いた。


 地面すれすれまで身を沈め、攻撃をやり過ごし、


 そのまま上空へと鋭い一太刀を振り抜く。

 ――当たる。

 そう確信できる軌道だった。


 だが、未完成。

 体勢が崩れ、レイズの身体は地面を滑るように転がる。


 それでも。

(……は?)

 本来のレイズは、言葉を失った。

(……クリスに……当てた?)


 致命傷には程遠い。

 だが――確かに、攻撃は届いた。

 それがどれほど異常なことか。


 この場にいたヴィルも、クリス自身も、痛いほど理解していた。


 クリスは、本気で驚いていた。


 勝者は、またしてもクリス。

 だが昨日とは違う。

 敗者のレイズは、確かに“戦果”を残していた。

(……どういうことだ)

 本来のレイズは、魂が震える。


(未来を知っているだけで……ここまでできるのか?

 それとも……こいつは、クリスの動きすら――)


 それは初めて示された、“未来を知る者”としてのアドバンテージ。

 どれほどの意味を持つのか。

 この体のレイズは、まだ理解していない。


(……もしかすると)

 本来のレイズは、初めて――

(……本当に、変えられるのかもしれない)


 自身の身体に宿る“異世界の可能性”に、期待を抱いた。

 それは、長い絶望の中で、初めて灯った微かな希望だった。

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たくさんの方に読んでいただき、本当にありがとうございます。 完結済の長編です。レイズたちの物語をぜひ最初から。
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