救世主現る。
ガイルとクリスの戦いは、次第に歯止めが利かなくなっていった。
ガイルは全身に魔力を纏い、その癖すら剥き出しにして踏み込む。
対するクリスは、一切の躊躇なく木刀を振り抜いた。
――メキメキ。
――ベキッ。
嫌な音が響き、木刀が悲鳴を上げる。
次の瞬間、それは耐えきれずに折れた。
「なっ……!!
貴様ぁぁ!!
その木刀はアルバードに伝わる大切なものだぞ!!」
「おまえなぁ!!
言ってることが無茶苦茶すぎんだよ!!
きめぇぇぇ!!」
ガイルは吐き捨てるように叫び、折れた木刀を容赦なく放り投げた。
次の瞬間、足に黒炎を纏わせ、地を蹴る。
全力の飛び蹴りが、一直線にクリスへ向かう。
クリスは即座に反応した。
手のひらに水と雷を纏い、そのままガイルの蹴りを掴み取る。
「て、てめぇ!!
ビリビリするじゃねぇか!!
あほが!!」
クリスはそのまま腕を振りかぶり、地面へ叩きつけようとする。
――だが。
ガイルはさらに、もう片方の足に地と氷を纏わせた。
重たい、圧殺するような蹴り。
轟音とともに地面が大きくへこむ。
それでも、クリスは足を離さない。
互いに絡み合ったまま、二人は吹き飛ばされていく。
「グァッ!!
てめぇ、離せ!!
触んな!!」
クリスはニヤリと笑った。
そのまま、ガイルを天へと放り投げる。
足に風を纏い、全力で跳躍。
太陽の光と重なるように、光と火を纏った拳を叩き込む。
ガイルは深い闇と氷を展開し、真正面からそれを迎え撃った。
光と闇の激突。
一見すれば、神話の一幕のような、あまりにも神々しい光景。
だが――
魔力の総量で勝るガイルの闇が、瞬く間に光を呑み込んでいく。
「……ぱ、ぱぱ……?」
クリアナの声が、かすかに漏れた。
しかし、クリスは悟っていた。
魔力の正面衝突では分が悪い。
風と火を混ぜ合わせた、デュアルの爆炎。
それを振り回すように放ち、闇を切り裂く。
袈裟蹴りのように闇が裂け、二人はそのまま地へと落下した。
――着地。
ガイルが舌打ちする。
「あぁ……マジで頭きたぜ、てめぇ……」
クリスは冷然と言い放つ。
「その程度で最強を名乗るな。
三下魔王が」
「ぁあ!?
誰が三下魔王だ!!
この変態野郎がぁぁ!!」
ガイルは両腕を重ね、手のひらをクリスへ向ける。
「――ディダグルィァ」
瞬く間に、恐るべき魔力が収束し、解き放たれた。
だが――。
その魔力は、黄金の輝きによって弾かれる。
「ふぅ……
どうやら来て正解だったようだな」
落ち着いた声。
黄金の髪をなびかせ、颯爽と現れた男。
――王国最強の騎士、グレサス。
「今のはさすがに、貴様でも死ぬぞ?」
クリスは冷めた目で言い捨てる。
「……邪魔です」
次の瞬間、グレサスの蹴りが炸裂した。
「ウラトス!!貴様の出番は終わりだ!」
「さぁ、ガイル!
次は私が相手になってやろう!!」
「グレサス!!
きさまぁぁ!!」
怒り狂ったクリスがグレサスへ飛びかかる。
ガイルはその光景を見て、深くため息をついた。
「おい……
もうおまえら二人でやっとけよ……」
兄弟の小競り合いに付き合っていられない、と愚痴をこぼす。
ルルが、おずおずと声をかけた。
「ガ、ガイル……
さっきの魔法、本当に……容赦がなかったですよね……?」
「ハッ。
あの程度で死ぬやつなら、そもそも俺に喧嘩なんて売らねぇよ」
背後では、クリスとグレサスの取っ組み合いが続いている。
それを見つめながら、クリアナがぽつりと呟いた。
「……パパ……
すごく……ださいよ……」
その一言が、静かにクリスの胸に突き刺さるのだった。




