融合の前兆
――風呂での、大惨事。
リアノとリアナに裸を見られ、
情けない悲鳴を上げる――この体。
(……ほんと、やめてくれ……
そんな声を、俺の体で出すんじゃない)
本来のレイズにとって、裸を見られることなど、なんでもない。
服を脱がされ、着せられ、体を洗ってもらう――
それは、アルバードではごく自然な在り方だった。
だが、今の“レイズ”は違う。
拒み、慌て、恥じらい、
そして情けない声を上げる。
(……本当に、こいつに任せてて大丈夫なのか……
頼む……一回でいい……体を返してくれ……)
必死に意識の奥から操作を試みる。
だが、体は――まったく反応しない。
そのまま部屋へ案内され、
再び情けない声でリアノに助けを求める。
(おい!!
勝手に部屋に入るな!!
しかもリアノに見せるな!!
そこには――!)
だが、無情にも部屋は見られ、
挙げ句の果てに「怖いから」と、
リアノの部屋に泊まることになってしまった。
(くそ……!!
あの部屋には……
思い出の……メルェの絵が……!!)
意識の奥で、感情が爆発する。
だが、体は――すやすやと眠りにつく。
(動け……動け……!!
出るんだ……ここから……頼む……!!)
その瞬間、体から嫌な汗が噴き出した。
急激な高熱。
荒くなる呼吸。
喉を焼くような渇き。
異変に気づいたリアノが、
すぐさまレイズの元へ駆け寄る。
迷いなく、手を伸ばし、
水魔法で口内を潤していく。
(……な……
リアノ……おまえ……何を……)
次第に体は落ち着き、
体温も、呼吸も、ゆっくりと戻っていく。
(……ああ……
俺が無理に体を取り戻そうとすると……
……死ぬのか……)
本来のレイズは、ようやく理解する。
体を預けること自体に、
もう抵抗はなかった。
だが――
思い出の品。
自分だけの部屋。
それだけは、どうしても譲れなかった。
だが、それを主張すればするほど、
体は激しく消耗し、
あの“渇き”が現れる。
――そう。
転生したばかりのレイズが、
夜ごと死にかけていたあの渇きは、
もう一人のレイズ――
本来の意識の、必死な抵抗が原因だったのだ。
そして、その主張は次第に――
ほんのわずかずつだが、
異世界のレイズと、
本来のレイズの意識を――
混ざり合わせていく。
それが、後に訪れる
“融合”の、最初の兆しだった。




