違う未来を進む景色。
死にたいと願い。
そして、救われたいと願った。
その想いとともに、俺の意識は深い眠りへと沈んでいく。
――みんなには、もう会えないけど。
そう思った瞬間、
突如として、眩い光が視界を刺した。
(……ここは……?)
映し出されたのは、どこか懐かしい光景。
体が勝手に動き、周囲を見回す。
(な……ここは……アルバード? 夢……なのか?)
視界に入ったのは、自分の指。
いや――違う。
(見覚えがある……若い頃の……俺だ)
だが、俺の意思とは無関係に、体は動き続ける。
焦り、混乱し、屋敷へと向かっていく。
(どこへ行くつもりだ……?)
そして、鏡の前に立った。
(……おいおい。何をしてるんだよ。
それに……なんて顔してるんだ、俺は)
そのとき、不意に声がかかる。
「レイズ様……?」
(この声……リアナか)
体は勝手に受け答えをし、
俺の知らない言葉を吐く。
腹の肉を揺らしながら、何やら叫んでいる。
(おい……何を言ってる。
俺は……)
「食事の準備ができています」
(……はは。豚の丸焼きか?)
だが、口から出たのは――
「サラダを食べる」という宣言。
(ふざけるな。
俺は肉が好きだ。カウイのジュースも……)
なのに体は拒絶する。
(食えない?
……何を言ってる。あんな量、余裕だっただろ)
そこで、ようやく気づく。
――違う。
今、この体を動かしているのは……俺じゃない。
(……誰だ。
俺の体を……別の人間が……)
俺はもう、動かすことも、抗うこともできない。
(……はは……好きにしろよ)
体はダイエットを宣言し、
木刀を手に取る。
(おい……それは……ヴィル爺の……)
震える腕。
汗まみれで、木刀を持ち上げる姿。
(……滑稽だな。
これを持つだけで、こんな有様か)
だが、その前に現れたのは――ヴィル。
(おい……その口の利き方……やめろ。
目の前にいるのは……本当に怖い爺さんだぞ)
「レイズ・アルバード。
死属性と氷属性を操る者」
(……なんでだ。
俺の名前も……属性も……)
警戒されると思った。
殺されるとすら思った。
――だが。
ヴィルは、嬉しそうに笑い、魔法を教え始めた。
(……あぁ……そうか)
(俺に……こうやって……教えたかったんだな)
存在を認められ、
アルバードに、俺の知っているそれとは違う風が吹く。
(なぁ……おまえ……
目の前にいるのは、ただの執事じゃない。
アルバードの当主で……俺の、爺ちゃんだ)
もう、止められない。
新しい歴史が、動き出している。
けれど――
俺は、どこかで期待していた。
(……それでいい。
俺とは違う未来を進むなら……)
(頼んだぞ。
名も知らない……異世界の俺)
そうして――
転生したばかりの頃。
本来のレイズの意識だけは、
体の奥深くから、静かに――
確かに、応援していた。




