勝者の賛美
勝者であるレイズに、賛美とも取れる声が向けられる。
「わぁぁ……パパ、すごぉい……」
どこか棒読み気味なレイナ。
「ほんとに……あはははっ」
イザベルは腹を抱えて笑っている。
「パパ!?
そんな……嘘でしょ!?」
クリアナは信じられないといった様子で目を丸くした。
「お父様……
僕は、強くなれるのでしょうか……?」
不安げに問いかけるカイルに、ルイスは静かに答える。
「そんなに急ぐ必要はない。
強くなることよりも、大事なことがある」
「カイル……
ルイスのような大人になりなさいね」
「はい!! お母様!!
お父様が、やはり一番です!!」
ルイスは一瞬だけ黙り込み、
「……いや……もう……なんでもない」
それ以上は何も言わなかった。
ディアナは、手をぷるぷると震わせながら叫ぶ。
「クリス!!
手を抜くなんて!!」
「え?」
クリスは本気で心当たりがない顔をする。
だが、クリアナの表情を見て、すぐに察した。
「……ははは。
流石ディアナ、ばれていましたか」
そして娘の前にしゃがみ、優しく微笑む。
「リリアナ。安心しなさい。
お父さんは、レイズ様の“練習”に付き合っていただけです」
「……はぁ!?
練習!?」
レイズが抗議しかけた、その瞬間。
「はい。大人の自覚を持ちなさい」
イザベルが無言でレイズの耳を引っ張る。
「ちょ! イザベル!!
耳はダメ! 結構痛いから!!」
そうしてレイズは、そのまま連れ去られてしまった。
「そっかぁ……練習だったんだね!!
そうだよね!!
パパは誰よりも強いもん!!」
「かっこいい!! パパ大好き!!」
クリスは、優しくクリアナを抱きしめる。
「大丈夫です。
すぐに、パパが最強であることを教えてあげます」
その視線は――
まだ見ぬ、遠い空の彼方へ向けられていた。
「ちょうどいい……
ガイル。
おまえを使って、娘に“すごいところ”を見せてやりましょう」
――こうして、
クリスのよからぬ企みが、静かに始まるのだった。
---
――一方、その頃。
「ほら!!
世界樹に着いたぞ!!
ルル!! 早く!! 行くぞ!!」
スカイドラゴンから降り、世界樹の領域へと足を踏み入れるガイル。
そこで目にした光景に、思わず声が漏れる。
「……おぉぉう。
なんか……住んでるやつ、やたら多くねぇか……?」
世界樹の周囲には、
もはや“町”と呼べるほどの拠点がいくつも築かれていた。
「たった数年で……
本当に……すごい発展ですね……」
ルルも、感嘆の息を漏らす。
歩いていると、人々や魔族の視線が次々と集まってくる。
「あ……あれは……
ガイル様じゃ……!?」
ざわめきは一瞬で広がり、
気づけば人と魔族が一斉に押し寄せてきた。
「おい!! おまえら!!
邪魔だろ!!
世界樹に行くんだから!!」
「ガイル様ぁぁ!!
お会いしたかったです!!」
「ガイル様!! 元気そうで!!」
「ガイル!! ガイル!! ガイル!!」
なぜか始まる、ガイルコール。
「おい!!
ほんとに!!
急いでんだよ!! おい!!」
あっという間に囲まれるガイル。
その隙に、ルルはそっと抜け出し、
世界樹へ向かって駆け出した。
「はぁ……はぁ……
お父さん……」
「……帰ってきたよ」
そうしてルルは、
世界樹の中心へと足を向けるのだった。




