クリスとの初の模擬戦
やがて、整った身なりのクリスが姿を現した。
彼はヴィルとレイズに深々と一礼し、尊敬のこもった声で言う。
「お見事です」
そして静かに木刀を差し出した。
「それでは、レイズ様。私にも手ほどきをお願いできますか」
レイズが受け取った木刀は驚くほど軽く、思わず唸る。
――これなら俺でも……!
試しに振るえば、今までとは比べものにならない速度で木刀が空を裂いた。
その様子を見て、クリスは爽やかな笑みを浮かべる。
「大変素晴らしいです」
その一言に、レイズの胸が少し高鳴る。
――クリス。やっぱりいいやつだ。怪我だけはさせたくない。
だが同時に、どうしても譲れない感情がこみ上げる。
(……こいつの、完璧なイケメン顔だけは許せねぇぇ!!)
口元に不敵な笑みを浮かべ、レイズは心の中で吠えた。
――その整ったツラを泥に沈めてたらぁッ!!
気迫を全身にまとい、一気にクリスへと突進する。
その勢いに、周囲の者たちが思わず息を呑んだ。
……が。
「っ!」
クリスは軽やかにその攻撃を受け流す。
次の瞬間、レイズの身体は勢い余って派手に地面へと転がった。
イケメン青年は涼やかに美しく。
太った青年は不格好に泥に沈む。




