表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/586

乾き再び。



眠りの中で、再びそれは襲ってきた。


――乾き。

尋常ではない乾きだ。初日と同じ、いや、それ以上。


「……み、水……」


掠れた声を絞り出し、枕元のコップに手を伸ばす。

だが力が入らず、指先から滑り落ちて床に散る音だけが響いた。


ベッドから這いずるように、必死で水を求める。

真っ暗な屋敷の中を、まるで救いを探すように――。


「……せっかく……覚悟、決めたのに……」


うっすらと乾ききった涙が滲む。

限界を悟り、目を閉じかけたその瞬間――。


「――レイズ様っ!!」


走る足音とともに、必死の呼び声が響いた。


(……誰かが……俺を……?)


力なく開いた唇に、冷たい感触が差し込む。

ゆっくりと、喉の奥へと水が流れ込んでいく。

その潤いが、絶望に沈みかけていた意識を辛うじて引き戻した。


うっすらと目を開ける。


そこに映ったのは――リアノ。

必死に涙を堪えながら、俺を助けようとする彼女の姿だった。



リアノは小柄な体で、それでも驚くほど力強く、俺の身体を抱き起こした。

その姿は――まるで姉のリアナと重なる。


(……姉妹揃って、それなのか……)


乾いた喉を震わせながら、どうにか言葉を紡ごうとする。

けれど声は掠れて、空気に溶けてしまった。


「……ありがとう……」


それでもリアノには伝わったらしい。

瞳を大きく見開き、こくりと強くうなずくと、さらに優しく俺を支えてくれる



リアノはそっと俺を布団に横たえ、そのまま心配そうに隣へ身を寄せた。

まるで見守らなければ気が済まないとでも言うように――彼女は俺の傍を離れようとしない。


そして再び、指先から水が注がれる。

喉を潤すその優しい感触に、思わず胸がじんわりする。


……だが、同時に頭をよぎった。


(これ...絵面..的に大丈夫なの..か……?)


突っ込みを心の中で必死に入れながらも、

疲労と安心が一気に押し寄せ、俺の意識は静かに眠りへと落ちていった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
たくさんの方に読んでいただき、本当にありがとうございます。 完結済の長編です。レイズたちの物語をぜひ最初から。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ