乾き再び。
眠りの中で、再びそれは襲ってきた。
――乾き。
尋常ではない乾きだ。初日と同じ、いや、それ以上。
「……み、水……」
掠れた声を絞り出し、枕元のコップに手を伸ばす。
だが力が入らず、指先から滑り落ちて床に散る音だけが響いた。
ベッドから這いずるように、必死で水を求める。
真っ暗な屋敷の中を、まるで救いを探すように――。
「……せっかく……覚悟、決めたのに……」
うっすらと乾ききった涙が滲む。
限界を悟り、目を閉じかけたその瞬間――。
「――レイズ様っ!!」
走る足音とともに、必死の呼び声が響いた。
(……誰かが……俺を……?)
力なく開いた唇に、冷たい感触が差し込む。
ゆっくりと、喉の奥へと水が流れ込んでいく。
その潤いが、絶望に沈みかけていた意識を辛うじて引き戻した。
うっすらと目を開ける。
そこに映ったのは――リアノ。
必死に涙を堪えながら、俺を助けようとする彼女の姿だった。
リアノは小柄な体で、それでも驚くほど力強く、俺の身体を抱き起こした。
その姿は――まるで姉のリアナと重なる。
(……姉妹揃って、それなのか……)
乾いた喉を震わせながら、どうにか言葉を紡ごうとする。
けれど声は掠れて、空気に溶けてしまった。
「……ありがとう……」
それでもリアノには伝わったらしい。
瞳を大きく見開き、こくりと強くうなずくと、さらに優しく俺を支えてくれる
リアノはそっと俺を布団に横たえ、そのまま心配そうに隣へ身を寄せた。
まるで見守らなければ気が済まないとでも言うように――彼女は俺の傍を離れようとしない。
そして再び、指先から水が注がれる。
喉を潤すその優しい感触に、思わず胸がじんわりする。
……だが、同時に頭をよぎった。
(これ...絵面..的に大丈夫なの..か……?)
突っ込みを心の中で必死に入れながらも、
疲労と安心が一気に押し寄せ、俺の意識は静かに眠りへと落ちていった。




