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【悪役転生 悪役は英雄へ】 



 この世界には、ひとつの記録がある。

 かつて“ゲーム”と呼ばれた虚構の中で、幾度も救われ、そして破滅した歴史。

 だが――その記録を、現実として生きる男がいた。


 名をレイズ。

 彼は、ゲームをプレイしていたひとりの“人間”だった。

 しかし、死と転生を経て、今はカイルとして生きた記憶をその身に宿している。


 二つの魂が融合した存在。

 ――ゲームのプレイヤーとしての記憶と、

 ――ゲームの主人公としての経験。


 それは記憶ではなく、“体で覚えた過去”として蘇る。

 だからこそ、彼は思う。

 あの世界で見たすべての悲劇を、もう二度と繰り返させはしないと。


 だが今のレイズには、現実世界の記憶は残っていない。

 残っているのは、ただカイルとして感じた痛み、怒り、そして希望――。

 その曖昧な境界の中で、彼は“経験で知る未来”を変えるために戦い続けていた。


 彼の力は、死属性。

 それは世界の循環を拒む力。

 だが、レイズはその力を滅びの象徴ではなく、

 “やり直すための力”として受け入れた。


 そして今、かつての物語で出会った者たちが、再び彼のもとに集い始める。

 だが、彼らはもう「敵」ではない。

 運命を越えた“共鳴する魂たち”として――。




 王国最強の騎士、グレサス=グレイオン。

 カイル時代では敵として立ちはだかった最強の初老騎士。

 だが今では、レイズの信念を理解し、共に刃を振るう同志となった。

 黄金の剣を握りしめ、王国の誇りを護る“最強の騎士”である。


 そして、忠誠の象徴、ウラトス=グレイオン。


 正義に生き、理不尽に抗い続けた男。

 ゲームではプレイヤーを苦しめた強敵だった。

 だが、いまはその正義を“護るための誓い”として、レイズの影に寄り添う。

そして今はクリス=アルバートとしてその名を誇りに。


 魔王と呼ばれた男、ガイル=ディア=ハート。

 

かつては王国の崩壊をもたらし、人々を恐怖に陥れた存在。

 だが、レイズが彼の中に見出したのは「孤独」だった。

 暴虐の裏にある悲しみを理解したレイズは、

 今の彼を“仲間”として迎え入れる。

 今のガイルは、誰よりも命を護る魔王に。


そして、ルイス=ハーベスト

 かつてカイルの父であり、冒険の始まりを与えた存在。

 彼は物語の冒頭で命を落とした。

 だが、今では勇者としての“資格”を与えられ、今はレイズと共に戦う光の剣士となった。

 かつて息子を見送ったその手は、今、レイズを支えるために剣を握る。


 もう一人の王――リオネル。

 かつて王国を支配した“悪役王”として語られた男。

 だがその心は、誰よりも民を想っていた。

 レイズと出会い、彼は初めて“真の王道”を知る。

 そして、親友としての誇りを胸に。

 リオネルの存在もまた、レイズを真の「王」へと導いた。


そして最後に立つのは、ニト=マーベラス

 かつてカイルを破滅へ導いた黒幕であり、世界の秩序である大精霊。

 神の代行者として、均衡のために命を切り捨て続けてきた存在。

 だが、今はレイズと出会ったことで初めて理解した。

 いまや彼は、レイズと本当の意味で肩を並べる“世界の守護者”へ、そして彼もまた最期が近かった。




 かつての歴史では、彼らは敵同士。

 だが今、彼らはアルバードの地に集い、ひとつの運命を共有している。

 誰もが背負ってきた罪と後悔を抱えながら――。

 それでも、レイズの信念に惹かれて。



 最強の騎士 グレサス

 最強の忠臣 クリス

 最強の魔王 ガイル

 最優の王  ルイス

 最高の王  リオネル

 世界の秩序 ニト

 そして――最強の王 レイズ。



 誰もがかつては重要キャラだった。

 ルイスを除く彼らは、全員悪だった。

 だが今、彼らは“赦し”のもとに共に在る。


 あまりにも強く、あまりにも温かい。

 それは、長い戦いの果てに手に入れた“束の間の平和”。


 けれど、レイズの瞳にはまだ、わずかな翳りが残っていた。


 ――この静寂が、嵐の前触れである。


 ジュラの森。

 破壊者であり秩序である存在が眠るその奥底で、何かが蠢く。

 忘れ去られた運命が、再び形を取り戻そうとしている。


 ゆっくりと、ゆっくりと。

 大地が息を吹き返すように。


 その“目覚め”が、再び世界の輪廻を動かす。

 そして――レイズたちの物語がどうなるのかは、それはレイズにもわからない。



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たくさんの方に読んでいただき、本当にありがとうございます。 完結済の長編です。レイズたちの物語をぜひ最初から。
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