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悪役転生 レイズの過去をしる。  作者: くりょ
レイズを知る。
17/105

うん。悪くない。



屋敷へ戻ると、真っ先にリアナが駆け寄ってきた。

「レ、れ……当主様!! なぜそのようなことに!!」


彼女は慌てて「レイズ様」と呼びかけようとしたが、「当主様」と言い直した。


「……は??? 当主?? え、俺……当主なの?」


一瞬、頭が真っ白になる。

だが次の瞬間には落ち着きを取り戻し、低い声でカッコつけて答えた。


「まぁ……軽い運動をしていただけだ」


その言葉にリアナは目を輝かせ、両手を胸に当てて言った。

「さすがです……!」


羨望と尊敬が入り混じった眼差しに、俺は内心ニヤリとした。

(……うん。悪くない)


そこへ、もう一人のメイドが慌てて駆け寄ってきた。

「と、当主様! お召し物が……! お風呂を沸かしておりますので、どうかそちらへ先に……」


俺は彼女を見て、首をかしげた。

「……あれ? 君は?」


その顔は、リアナとそっくりだったからだ。


リアナが慌てて答える。

「わ、わたしの妹の……リアノです!」


「あぁ……リアノか。ありがとう。では、私はお風呂に入るとしよう」


何気なくそう言っただけだった。

だがリアノは目を丸くし、頬を赤くして慌てて答える。

「は、はいっ! こちらです……!」


心臓の鼓動が早くなるのを、リアノは抑えきれなかった。

(レイズ様が……わたしに“感謝”を……?)


――使用人たちにとって、レイズは冷たく恐ろしい存在だった。

理不尽で、わがままで、手のつけられない暴君。


だが今目の前にいるレイズは違う。

ぶっきらぼうで素直ではないにせよ、確かに“優しさ”を感じさせる。


「……昔の、あの頃のレイズ様だ」


リアナとリアノは、胸の奥でそう確信した。

だが――当のレイズ本人は、そんなことを知る由もなかった。




脱衣室に到着した俺は、さっさと服を脱ぎたかった。

……のだが、脱げない。


理由は一つ。なぜかリアノが後ろに立っているからだ。


「その……リアノさん?」

「はいっ!」


「なんでついてきてるの? 恥ずかしいから、あっち行ってくんない?」


リアノは真剣な顔で首を振った。

「そ、そんな……! 私は気にしません!」


「いや、どう見ても俺が気にしてる場面でしょうが!!」

声を荒げて突っ込む俺。

「とにかく、見せたくないの! 出てって!」


リアノはしゅんと肩を落とし、しぶしぶ脱衣室を出ていった。


(……なんなんだよ。こいつら、非常識すぎるだろ……)


ため息をつきながら、ようやく衣類に手をかける。

するすると簡単に脱げていく。


(ん……?)


違和感があった。

最初は窮屈に感じていたはずの服が、今は驚くほどスムーズに脱げたのだ。


「……う、嘘だろ。もう痩せたのか……!?」


思わず拳を握りしめ、喜びを噛み締める俺。


だがこのとき――

「非常識」なのはリアノでも屋敷の使用人たちでもなく。


……むしろ俺自身の方だということに、レイズはまだ気づいていなかった。



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