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霊業  作者: まんらび
シーズン1 1章
8/21

8話:向かうべき場所

新たなる敵――牛鬼。

一難去ってまた一難、休む暇もない輝たちに安息は訪れるのか…。

輝が進むその道の先に待ち受けるものとは、一体何なのか。


物語は、再び動き出す。

【登場人物】

主人公:気道 輝

手の霊

ベートーヴェン

じんた

花子さん

師匠

牛鬼

師匠の車内。

道路の振動と、かすかなエンジン音が車内に満ちている。


師匠「……輝や」

輝「ん? どうした?」

師匠「今日、儂は別の七不思議を探しておったのじゃが……」

輝「そうなんだ。どの霊なの?」

師匠「落ち武者の霊じゃ」


後部座席からベトさんが顔を出す。

ベトさん「どうだ? 見つかったのか?」

師匠「いや……もう目撃情報があった場所には居なかった」

輝「そうかぁ……」


師匠は少し表情を曇らせた。

師匠「ただ一つ、不可解なことがあるんじゃ。墓なのにも関わらず、霊が異常に少なかったのじゃ……いるのは消滅しかけている霊ぐらいじゃ」

輝「それって……どんどろの時みたいだね」

ベトさん「落ち武者の霊が食べてるのか……?」

師匠「やもしれん……」


ブレーキ音と共に車が停まり、ドアが開く。

キィー……ガチャ。学校に到着した。


じんた「……! 花子さんの霊力が弱くなってる……!」

輝「急ごう……!」


――30分前。


花子さんは、ひとり学校の敷地に足を踏み入れていた。

花子さん「懐かしい感じする〜。早速、部屋に帰ろ!」

(部屋=トイレの個室)


その背後で、何かが静かに動く。しかし花子さんは気づかない。

花子さん「すごい静かだね……やっぱりいないんだね、他のみんな……」


天井の奥で、何かが這う音。

花子さん「え? 今、何か通った?」


振り返る。しかし誰もいない。

花子さん「気のせい……?」


前を向いた瞬間、視界いっぱいに牛鬼の目が現れた。

牛鬼「ギョロ」

花子さん「きゃあっ!」


――


輝「こっちにはいない!」

ベトさん「職員室にもいない!」

じんた「一階にはいないね。次は二階だね……二手に分かれて探す? 僕、三階いくよ」

輝「俺たちは二階探しとく」

ベトさん「気をつけて行けよ、じんた!」


――


花子さんは、ボロボロの姿で床に横たわり、必死にうずくまっていた。

花子さん「や……やめ……」

牛鬼が怪しく笑う。

牛鬼「キャシャシャシャ……」

花子さん「いや……! やめて! 来ないで!」

牛鬼「ギョロ……キシャ……」


大きな手が振り上げられ、花子さんめがけて振り下ろされる――。

花子さん「きゃ……!」


その瞬間、じんたが牛鬼の横を駆け抜けた。

彼の体がぐん、と膨れ上がり――


ドゴッ!


鈍い衝撃音が響き、校舎がわずかに揺れる。


――


輝「?! 揺れた?」

ベトさん「上だな」

手の霊「私、窓から行く!」

輝「頼む! やばそうだったらすぐ逃げてこいよ!」


ーー


3階の廊下には埃が舞い、瓦礫が散乱していた。

花子さん「ん……?」

ゆっくりと目を開けると、そこには牛鬼の鋭い爪を腕で受け止めているじんたの姿があった。


花子さん「じ……人体模型くん!? なにその姿……」

じんた「……ごめん、遅れて……花子さんは……だいじょ……」


スッ――ドンッ、ドンッ、ドンッッ!!

牛鬼がじんたを掴んだまま、何度も床へ叩きつける。

じんた「……カハッ」

その体は徐々に縮んでいき、白目を剥いて動かなくなった。


花子さん「いや!! 人体模型くん!!」


その時、窓が開き、手の霊が駆けつける。

手の霊「じんた!!」


じんたはか細い声で手の霊に指示を出す。

じんた「……早く……花子さんを……」

花子さん「そんな……嫌よ! 人体模型くんも一緒に……!」


手の霊は花子の服を掴み、窓の外へ引きずり出した。

花子さん「いや!!! 離して! 人体模型くんが!! 人体模型がァァァッ!!」


牛鬼が腕を振り、じんたを壁に向かって投げ飛ばす。

じんた「……くっ」


その瞬間、輝が現れ、じんたを受け止めた。

輝「ベトさん! 牛鬼の動き止められる!?」


牛鬼の背後では、既にベートーヴェンが指揮棒を構えていた。

ベトさん「……ごめん、じんた。俺が守るって言っておきながら…交響曲第二番《魂響ノ陣》!」


ドンッ――ジャンッ!!

ベートーヴェンの足元に、淡く光る円形の譜面が浮かび上がる。


輝「なんだその技!!!」

ベトさん「この技は、きいた――」


スッ……バンッ!!

言葉を遮るように牛鬼の一撃が直撃し、ベートーヴェンが壁に叩き込まれる。

ベトさん「ぐあっ……」


輝「嘘だろ……! 喋ってんのに!反則じゃねぇか!」

避ける間もなく輝も攻撃を受け、床へ叩きつけられる。


バコンッ――!

辺りは牛鬼の荒い鼻息と輝の息遣いが響く。


輝「はぁ……はぁ……」

ベトさん「……」

じんた「……」


緊迫した空気に、輝の肌がピリつく。

ジリ……牛鬼が一歩踏み出し、輝は構えを取る。


輝「クソッ……目に血が……」

左目に流れ込んだ血で視界が塞がれる。


輝「……これは、本当にやばいかも……」


その時――

手の霊「やぁーー!!」

花子を下に降ろして戻ってきた手の霊が突撃してきた。


輝「あぶない!!」

前に出た瞬間、牛鬼の拳が顎を直撃する。

輝「……あっ……モロに……くらっ……」

ドサッ――


視界が揺れ、意識が遠のく。

輝「……頭が……クラクラする……」

鼻や目から血が流れ落ちる。


輝「あー……これ……だめかも……」


手の霊「輝!! てる! ダメ、死んじゃダメ!!」

揺さぶられる中、手の霊が紙に何か書いて見せた。


輝「……え? 名前をつけろ? 手の霊に……?」

手の霊「やばいのは分かってる! でも……行くなら私に名前付けてからにして!」

輝「あぁ……お前はそれ目当てだったんだな……」

手の霊「ち、違う!!」


輝「……いいよ、最期に名前だけ……つけてやる……」

手の霊「ダメだ……意識が混濁してる……」


輝が最後の力を振り絞って立ち上がる。

輝「……手の霊……お前の名は……パ……パドだ!!」


その瞬間、輝は意識を失った。

手の霊「パド……いい! いいよ、いいよ!! 良すぎる!! 私はこれからパドだ!!!」


パドの全身に、あの“塔”の時と同じ光が纏い始める。

パド「……力が……漲ってくる!! 全盛期の私が……戻ってくる……!」


光が牛鬼を包み込む。

牛鬼「ギョ!? ギョロ!!」


???「お前の業を列拳する!

一つ――学校という聖域に踏み込んだ罪!

二つ――善なる魂に危害を加えた罪!

そして最後に……! わたくしの仲間を踏みにじった大罪!!


この大罪は地獄行き……いや、それでは生ぬるい!!

大罪人が向かうべき場所は煉獄……牛鬼、お前は煉獄行きだッ!! 千年……いや、万年をもって償えッ!!」


その声が遠ざかると同時に、光は薄れ――牛鬼の姿はもう、そこにはなかった

8話「牛鬼襲来」お読みいただき、ありがとうございました。

今回は、牛と蜘蛛が融合した妖怪・牛鬼が輝たちを急襲。

激しい戦いの中、仲間たちは満身創痍となり、そして“手の霊”に名前が与えられるという大きな転機を迎えました。


「パド」として蘇った彼女の真の力、そして牛鬼の行方は…。

戦いの後に訪れる静けさと、新たな予兆――物語はさらに加速していきます。

次回、第9話「休息」をお楽しみに!

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