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霊業  作者: まんらび
シーズン1 1章
5/21

5話:幼き少年の願望

謎の下級霊「手の霊」と共に、不気味な塔やどんどろとの死闘を乗り越えてきた輝一行。

新たな仲間、肖像画の霊「ベートーヴェン」との出会いも経て、

彼は少しずつ“呪霊操術者”としての道を歩み始めていた。


そして今回の舞台は――過去に忌まわしい出来事があったとされる、呪われた家。

そこに渦巻く哀しみと願いに、輝はどう向き合うのか。

【登場人物】

主人公:気道 輝

手の霊

ベートーヴェン

住職

キーホルダーをつけた謎のお姉さん

黒づくめの謎の人間

輝「んっ、こ……ここは?」


ベートーヴェン「寺だ……」


輝「寺……?」


輝が飛び起き、辺りを見回す。


輝「この寺……既視感が……」


──ガラガラ(襖の開く音)──


手の霊「ベートーヴェンさん! 住職さんが帰ってきたよ〜」


ベートーヴェン「帰ってきたか……」


住職「ただいま戻りましたよ〜。治療する方はどな……た……」


輝「師匠!!」


師匠「輝!!」


輝「やっぱり! 見慣れた部屋だと思ったよ……!」


ベートーヴェン「なんだ、お主ら顔見知りだったのか?」


手の霊「貴方が輝のお師匠様ですか!」


師匠「さよう、儂が輝の師匠である……! んで、輝。この手の霊と肖像画の霊を味方につけたのか」


輝「そうだよ! 出会って間もないけど大切な仲間なんだ……! ね、手の霊! ベトさん!」


ベートーヴェン「べ……ベトさん……?」


輝「え? ダメ? ベートーヴェンだと長くない? だからベトさんって呼んだらいいかな〜って」


ベトさん「……いや、気に入った」


手の霊「ベトさん……いいね! 呼びやすい……!」


──輝の治療が終わる──


輝「ありがとう、師匠!」


師匠「いいんじゃよ。ただ包帯巻いてるだけじゃから無理な動きはするでないぞ?」


輝「わーかってるよ」


ベトさん「さて、輝……本題に入りたい。その傷で連れ回すのは気が引けるから再度聞くが、輝は七不思議集め、やる気なのか?」


輝「当たり前じゃん! 着いていくよ……俺は」


手の霊「私も着いてくよ!」


師匠「ん? 何かあったのか?」


ベトさん「あぁ、住職殿は何も分かってないのか」


──輝が事情を説明する──


師匠「なるほど……七不思議の再集結か……儂、手伝ってやりたいのは山々なのじゃが、今は少し野暮用があってな。着いていけぬ」


輝「大丈夫だよ! 俺たちだけで頑張るよ!」


師匠「すまんな……」


手の霊「てか、どの霊を先に探すの?」


ベトさん「一番初めに進めるのは、人体模型の霊だな」


輝「人体模型?」


ベトさん「あぁ、学校にいた時からよく話していたんだ。事情を話せば着いてきてくれるはずだ」


師匠「各地に散らばってるのだろ? どうやって見つけるのじゃ。霊力を探るとかは流石にできぬぞ?」


ベトさん「問題はそこなんだよな……」


輝「……ネットで調べるのはどうかな?」


師匠「ネット……?」


輝「うん。『人体模型が動いてる!』とか、少しでも目撃情報が上がったとこに行けばいいんじゃないかな」


ベトさん「いいな、それ。やってみよう」


輝「じゃあ早速──」


手の霊「もう調べてるよ!」


輝「はやっ! ……ってそれ俺のスマホじゃん」


手の霊「私たちがスマホを持ってると思う? 持ってたら会話を紙に書いてするより、スマホ入力するよ」


輝「それもそうか……」


手の霊「あっ! あったよ! 人体模型の目撃情報!」


ベトさん「なに?! どこだ?」


手の霊「こっから大分近いね……えっと……金森町?」


師匠「まぁ……近いが……送迎ぐらいなら儂でもできるぞ」


輝「ほんと? お願いしてもいい?」


師匠「任せろ!」


ベトさん「じゃあ早速行きますか」


──車で移動すること約15分──


師匠「ほれ、着いたぞ」


輝「ありがと〜。終わったら連絡するね」


ベトさん「……いる」


輝「まじ!? どこどこ!」


ベトさん「正確な場所は分からねぇが、この町にいることは確実だろうな」


手の霊「人に聞いてみたらどう?」


輝「そうだな! 俺から聞いてみるよ。2人は町の探索をお願い」


手の霊「了解!」


ベトさん「分かった」


輝「さて、聞いていきますか!」


──ポロッ……カチャ──


輝「ん? キーホルダー?」


???「あぁ! すみません! 私のです!」


──輝がキーホルダーを拾い、女性に手渡す──


輝「どうぞ! ちょっと傷ついちゃってますけど……」


お姉さん「大丈夫ですよ……元から付いてるので」


輝「可愛いですね! なんのキーホルダーなんですか?」


お姉さん「あっ……えっと……」


輝「? どうかしました?」


お姉さん「あっ! いえ、何も……このキーホルダーは父から貰ったもので、なんでも私には歳が少し離れた兄がいたみたいで、その兄の形見みたいなんです」


輝「形見……お亡くなりになってるんですね……」


お姉さん「はい……私も会ったことないんですけどね、ふふっ」


お姉さん「あっ、じゃあ私、用事があるので……」


輝「すみません! 引き止めちゃって」


──お互い軽く会釈を交わし、女性はその場を後にした──


──数時間後──


輝「ダメだぁ〜、全然情報掴めねぇ……」


手の霊「輝〜!」


輝「ん? 手の霊? どうした?」


手の霊「さっきそこで拾ったんだけどこの新聞見て!」


輝「ん? 少年虐殺事件?」


手の霊「そう! それがここ金森町で起こった事件なんだよ!」


ベトさん「それって……」


輝「あっ……! ベトさん!」


ベトさん「俺にそれを見せてくれ……」


──ベトさんが新聞を読み始める──


輝「どうしたの……?」


ベトさん「これ……人体模型の生前時に起きた事件だ……」


輝「!? なんで……?」


ベトさん「昔聞いたんだ。生前、酷い目に遭わされた話を……生きたまま皮を剥がされ、痛みのあまり死んじゃったんだって……」


輝「な……嘘だろ……」


手の霊「酷すぎる……」


ベトさん「そこから俺は、人体模型に気をかけてたんだ……」


輝「そう……だったんだ……」


手の霊「じゃあこの家に行けば、なにか分かるかもしれない……?」


ベトさん「あぁ、分かるだろうな。生前の記憶を辿りに、その家に復讐しに行ってる可能性もあるからな……」


──その時、少し行った先から凄まじい霊力が──


輝「ん……?」


ベトさん「感じたか、輝……」


輝「うん……なにか強い霊力が……」


ベトさん「あの感じ……人体模型だ……」


手の霊「嘘ッ! じゃあ早く行かないと!」


──3人は急いで強い霊力を感じた場所に向かった──


ベトさんが、目の前の古びた家をじっと見上げた。

ベトさん「……ここか」


 手の霊が横から覗き込み、小さく頷く。

手の霊『写真に写っていた家と、ほぼ一致してるね』


 輝は喉を鳴らし、不安げに扉へ視線を向けた。

輝「は、入ってもいいのか……?」


 ベトさんは一度だけ振り返り、鋭い眼差しで言い放つ。

ベトさん「背に腹はかえられぬ……入るぞ」


輝「捕まるのは俺だけなんだが……」


 三人はゆっくりと家の中へ足を踏み入れた。

 その様子を、家の外から黒づくめの謎の人物が静かに見つめていた。

???「……あいつ。学校にもいたな。さて、どれほどの実力か……見定めようではないか」


ベトさん「この家全体が……呪いになってるな」


手の霊『みんな! ここ、隠し通路になってる!』


輝「ん? ただの壁だけど……」


ベトさん「壁の奥から、人体模型の霊力が感じられる」


輝「え……? 壊すの……?」

ベトさん「やむを得ん!」

輝「ま、待って!」


手の霊『おりゃ!』


 バリバリッ――乾いた音とともに、壁が粉々に崩れた。


輝「あぁぁっ、やりやがった!」

ベトさん「先に進むぞ」

輝「えぇ〜? 俺は無視っすか……」


 落ち込む輝の肩を、手の霊が軽く叩く。

手の霊『どんまい』

輝「どんまいって……」


 階段を降りていくと、ベトさんが足を止めた。

ベトさん「……居た、人体模型」

輝「え? いたの?」


 そこには、バラバラに解体された人体模型と、ミイラ化した皮膚が壁に飾られていた。


輝「この壁の……これ、そう……だよな?」

ベトさん「あぁ……皮、だろうな」

手の霊『惨すぎる……』


 その瞬間、バラバラの人体模型がふわりと宙に浮き上がる。


輝「?!」

ベトさん「人体模型!」

輝「なんか……様子、おかしくない?!」

手の霊『悪霊になってるじゃない!』


ベトさん「なんでだ……そんなやつじゃなかったはずだろ……」

輝「危ない!!」


 巨体化した悪霊の拳が、唸りを上げて振り下ろされる。

ベトさん「クッ……!」


 間一髪で避けたベトさんが叫ぶ。

ベトさん「人体模型! 俺だ! 肖像画の霊だ! 聞こえるだろ……?」

人体模型「がぁぁぁぁ!」

輝「ダメだ! 正気を失ってる!」


人体模型「……とう……」

手の霊『なにか言ってる!』

人体模型「……さん……父さんッッ!!!」


 その叫びと共に、拳が床を砕いた。

ベトさん「やはり……自分をこんな目に合わせた父親を狙っているか」

輝「父親を連れてこないと、収まらないんじゃ……」

手の霊『ここは狭すぎる。一旦、地上に戻った方がいいんじゃ……』

輝「そうだな! ベトさん、上に行くぞ!」

ベトさん「あぁ……」


 三人は階段を駆け上がり、それを追って人体模型が迫る。

 ドアを飛び出した瞬間、先ほどの若い女性が目の前に立っていた。


輝「お姉さん?!」

お姉さん「え?! さっきの人! どうして私の家から……?」

輝「いや、待って! 怪しいもんじゃないんです!!! いやっ……信じてもらえないかもしれないけど、本当に違うんです!」


人体模型「がぁぁぁぁ!」

お姉さん「きゃぁぁぁあ! なに?! あれ!」

輝「?! お姉さんにも見えてる?! 手の霊とベトさんは見えてないっぽいのに……」

ベトさん「霊力が強すぎて、一般人にも見えるようになっているんだろう……」


 その時、人体模型の手から何かがポロリと落ち、地面を転がった。

カランッ……


輝&お姉さん「……あっ、あれは……!」


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

 第5話では、いよいよ人体模型との直接対決が始まりました。

 ベトさんたちの前に立ちはだかったのは、ただの悪霊化ではなく、“父親”という過去に縛られた存在。彼の叫びには、恨みだけでなく、どうしようもない悲しみも混じっていたのかもしれません。


 執筆中は人体模型の描写にかなり悩みました。ホラーとグロの境界線をどう描くか、そしてキャラクター同士の掛け合いでどう緊張感を保つか──。

 この辺は今後も試行錯誤しつつ、テンポを崩さないよう意識していきたいところです。

6話では落ちた“アレ”の正体と、黒づくめの人物の動きが明らかになります。

 少しずつ、この物語全体を覆う“呪いの構造”にも触れていく予定ですので、引き続きお付き合いください。

次回6話父親と少年...です!お楽しみに!

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