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霊業  作者: まんらび
2章
27/46

27話:過酷すぎる一限目

ついに輝たちは、禍津学園という未知の舞台に足を踏み入れる。

これまでの試練とは異なり、ここでは日常と非日常が入り混じった環境が彼らを待ち受ける。友や仲間の存在に支えられながらも、初めて直面する現実――学園内部での一限目は、予想以上に過酷なものとなるだろう。


今回の話では、ただ単に授業や教室の描写に留まらず、環境の異質さや生徒たちの緊張感、そして輝自身の心の揺れを丁寧に描くことで、読者に“ここがただの学園ではない”という感覚を体感させたい。


覚悟を決め、心身を整えて臨む輝たち。しかし、学園は彼らに容赦なく試練を突きつける。

さあ、過酷な一限目――物語の新たな章が始まる。

【登場人物】

主人公:気道 輝

神宮寺 泰斗

水瀬 詩織

天城 朔夜

黒瀬 雷牙

黒瀬 翠馬

眩い光が消え、目を開けた瞬間、輝は見覚えのある禍津学園の校舎を目の前にした。胸が高鳴り、自然と笑みがこぼれる。


輝「着いたぞ、禍津学園!」


喜びに浮かれ、肩に乗っていたはずのパドと女郎蜘蛛を見渡す。しかし、周囲を見ても二人の気配はない。


輝「……あれ?パド?女郎蜘蛛?」


焦りが胸を締め付ける。大声を出そうかと思ったが、周囲に人影がなく、静まり返った森に自分の声だけが響いた。


輝「……やっぱり、俺だけ転移されたのかぁ……」


肩を落とし、少し膝を曲げて呆然と立ち尽くす。喜びと期待は一瞬で消え、代わりに孤独と不安がじわじわと心を覆っていった。


輝「うぅ……どうしよう…、二人は…ちゃんと…」


周囲の景色を見渡しても、仲間の姿はなく、輝はしばし校門の前で、静かに頭を抱えた。


輝が肩を落として校門前に立ち尽くしていると、背後から柔らかな光が差し込み始めた。

次第に光は強まり、森の奥から続々と新入生たちの姿が現れる。


同時に神宮寺も到着し輝を見るや否や一言投げつける


神宮寺「棄権しなかったのか……」


軽く首を振り、どこか呆れたように、目線をそらす...


輝「悪いな!俺も学びたい事があるんでな!」


その時校門の前にに音もなく教師が現れた


教師「皆様...改めて入学おめでとうございます...私の名前は天城 朔夜 (あましろさくや)です。貴方1年生の担任を担当させて頂きますので以後お見知り置きを...」


神宮寺「戯言はいい入学者は全員揃っているのか?」


天城「揃っております」


輝「え!?真鴉いないんだけど!」

天城「真鴉さんは...」


話す前に神宮寺が話を遮る

神宮寺「棄権したんだろ弱い奴がいたところで無駄死になんだ...どうだ?お前も帰った方がいいんじゃないか?」


輝「そんな...真鴉...」


天城「いいですか?続き話させてもらいます...再集合の日にちは3日後とお伝えさせていただいたのですがこちらの諸事情により1日早めさせていただきました。」


天城が少し間を起き再度話し始める


天城「荷物など忘れ物があれば、遠慮なく申し出てください。こちらで必要な物は全て用意いたします」


そう言って天城は軽く手を叩いた。すると校門が開き、校舎の中へと道が広がっていく。


天城「では皆さん、私についてきてください。まずは教室へご案内いたします」


新入生たちがざわめきながらぞろぞろと歩き出す。輝もその流れに混じり、胸の奥のざわつきを抱えたまま、校舎へ足を踏み入れた。


――重厚な扉を抜け、長い廊下を進むと、やがて一室の前で天城が立ち止まった。


天城「ここが皆さんの教室です。どうぞ、入って席に着いてください」


扉が開かれると、まだ新しい教室が広がっていた。窓から差し込む光が机を照らし、緊張と期待の入り混じった空気が流れている。


輝は天城に促され、前から二列目の窓際に腰を下ろす。

その隣には神宮寺がどっかりと座り、腕を組んだまま目を閉じていた。


輝「……(なんでこの人が隣なんだよぉ)」


内心で頭を抱える輝。その後ろの席には、水瀬が静かに腰を下ろしていた。彼女は一言も発せず、じっと窓の外を見つめている。


天城「座りましたね。では改めて――これからの1年生の間、あなた方はこの教室を拠点として過ごすことになります。互いをよく観察し、助け合い、時には競い合いなさい」


輝は窓から差し込む光をぼんやり見ながら、心の奥でぽっかり空いた穴を感じていた。

――真鴉がいない、その現実がどうしても胸を重くする。


天城「それでは、一限目を始めます」


教室中にざわめきが走る。


生徒たち「「えっ!?もう!?」」


輝「ちょ、ちょっと待ってください!心の準備ってものが……!」

神宮寺「騒がしい奴だな。授業が始まるなら黙って受けろ」


天城「場所は……ここでは狭いですね。校庭に出ましょうか」


いきなりの提案に、生徒たちの間にざわめきが広がる。

椅子を鳴らして立ち上がった神宮寺が、舌打ち混じりに声を上げた。


神宮寺「……二度手間だな。最初から外にいればいいものを...」


天城「実践の前に、皆様の顔と席順を確認しておきたかっただけです。それでは――参りましょう」


天城に導かれ、一年生たちはぞろぞろと校庭へと出る。

広々とした空間に集められ、全員が並んだところで、天城は歩みを止めた。


天城「第一回目の授業は――“戦闘用具の具現化”。そして“武器解釈を広げる”ことを実技を通して覚えてもらいます」


その言葉に、生徒たちは再びざわつく。

まだ自己紹介も済ませていない者もいる中で、いきなり実技だというのだ。


天城は一歩前に進み、右手をゆっくりと掲げた。

瞬間、淡い光が集まり――刀が現れる。


天城「――具現化とは自身の妖力で、己の想いを形にする技術です。刀は斬るだけではなく、守りにも使える。盾と解釈すれば、その姿も変わる。解釈が広ければ広いほど、戦場での生存率も高まるのです」


彼の刀は形を変え、やがて鎖となり、そして扇へと姿を変えた。

まるで粘土をこねるように自在に変化する光景に、生徒たちは思わず息を呑む。


天城「――では、皆様もやってみてください」


それぞれが意識を集中させ、光を生み出そうと試みる。


神宮寺はわずかな時間で刀を具現化した。


天城「流石ですね神宮寺様...」


神宮寺「普段から使ってるからな...当たり前だ」


水瀬は戸惑いながらも、きらめく光の盾を形作る。


水瀬「で...できた!」


そして――輝は。


輝「……でろっ……出ろってば……!」


光の粒子は現れるものの、すぐに霧散してしまい、武器の形にはならない。

焦れば焦るほど、光は薄れていくばかりだった。


神宮寺「……ふん。」


天城「落ち着いてください、気道さん。力む必要はありません。己の中にある“武器の形”を、ただ素直に思い描けばいいのです」


その声に背中を押され、輝は深呼吸する。

光の粒子が揺らぎ――やがて手の中に、一本の木の棒が現れた。


輝「……! で、出た……!? 本当に出せた!」


輝が喜んだのも束の間、周囲から笑いが漏れる。

「棒? あれで戦うのかよ……」

「貧弱すぎんだろ……」


天城はすぐさま片手を上げて生徒たちを制した。


天城「静粛に。――よく聞いてください。具現化は、その人の“妖力の量”と“解釈の広さ”によって大きく左右されます」


一歩前に進み、生徒たちを見渡す。


天城「妖力が強ければ強いほど、具現化した武器の強度は増す。ですが、それだけでは片手落ちです。真に重要なのは“解釈”――すなわち、武器に対する理解の深さです」


天城は自ら具現化した刀を掲げた。


天城「例えば刀。刀身が何で出来ているか? 打ち方、折れにくさ、切れ味を決める構造……解釈を広げれば広げるほど、その刀は現実以上の性能を発揮する。逆に、曖昧な想像では脆く、すぐ砕ける」


言葉に合わせて刀はきらめき、やがて形を変えてゆく。鋼の刀身が黒曜石へ、次は炎を帯びる刃へ――解釈次第で自在に変わる様を見せつける。


天城「――棒も同じことです。単なる棒に見えるかもしれない。だが、材質は? 樹齢千年の霊木かもしれないし、妖力を帯びた神樹かもしれない。解釈一つで、折れやすい木切れにも、不壊の神器にもなるのです」


その言葉に、生徒たちは再び息を呑んだ。

さっきまで笑われていた輝も、思わず木の棒を見つめ直す。


天城「覚えておきなさい。解釈の広さは、生存率そのものです」


(ざわ……)

周囲の生徒たちがざわつき始める。

「まさか……あいつの棒、実はすごいんじゃ……?」

「神器級の霊木とか……?」


期待の視線が一斉に輝に注がれる。


輝「え? え、え? そ、そんなことある……?」


おそるおそる自分の棒を見下ろす輝。

そして周囲の空気に押されるように――


輝「……よし!」

(地面に叩きつける!)


――パキィン!


棒はあっけなく折れた。


輝「……え?」


(しん……と静まり返る)


「……」

「……普通に折れたな」


神宮寺「……くだらん」

(鼻で笑い、そっぽを向く)


輝「いや、ちょ、待って!? 今のは……! ほら! もっと本気出せば!」

(折れた棒の先を慌てて拾い上げる)


天城「……まあ、最初はそんなものです」

(咳払いひとつして空気を立て直す)


天城「形がどうであれ、それは彼の力が形を結んだ証。笑うものではありません……さて、ここからが本番です」


生徒たちの視線が天城に集中する。

彼は静かに森の方を指差した。


天城「実践授業に移りましょう。試験でも使ったこの森――覚えていますね?」


生徒たちの表情に緊張が走る。


天城「この森はただの緑地ではありません。霊や妖怪が跋扈する危険な場所です。

……気を抜けば、命を落とすこともあるでしょう」


張り詰めた空気が一気に広がる。

輝は再度作り出した木の棒を握りしめ、不安げにごくりと喉を鳴らした。


天城「――いざとなれば、我々教師陣が助けます。ですが、決して気を抜かないでください」


その声は静かでありながら、胸の奥にずしりと響いた。

淡々とした言い回しに、逆に危機感が強調される。


天城「それでは……どうぞ。霊、妖怪、いずれかを倒せた者から一限目は終了です」


生徒たち「……はっ!?」


一瞬、全員の表情が凍りつく。

実技初日から“本物”を相手にするなど誰も想像していなかったのだ。


神宮寺「……面倒だな。だが、まぁ俺ならすぐ終わる」


肩をすくめつつも、瞳の奥には獲物を前にした猛禽のような光。

水瀬は顔を青ざめさせ、小さく唇を噛みしめる。


水瀬「う、うそでしょ……、いきなり戦うなんて……」


ざわざわと生徒たちが動揺を隠せないまま、それでも教師の目の前で退くこともできず、ぞろぞろと森の奥へ足を踏み入れていく。


草を踏む音が重なり、緊張が伝染していく。

鳥の声すら消え、ただ風に揺れる木々の音だけが響いた。


輝は木の棒を握りしめ、深呼吸を繰り返す。

不安、焦り、恐怖――しかし同時に、心の奥で確かに燃えるものがあった。


輝(……やるしかない!)


生徒たちが次々と森へ消えていき、校庭には天城一人が残された。

静かな風が吹き抜ける。


その背後から、足音が二つ近づいてきた。


???「……天城先生。今回、生き残りそうな奴……いそうなのか?」


ぞんざいな口調。からかうようでありながら、そこには残酷な現実を見透かす冷ややかさが混じっていた。


???「兄ちゃん……そういうの不謹慎だよ」


震えた声で諭すもう一人。わずかに眉をひそめ、兄と思しき人物を牽制する。


天城は振り返り、口元に薄い笑みを浮かべた。


天城「おや……見ていたんですか。雷牙さん、翠馬さん」


二人は二年生――既に死線を生き延びてきた実力者たち。

雷牙は鋭い眼光を光らせ、口元に嘲笑を浮かべる。

翠馬はどこか静かで、落ち着いた眼差しで森を見つめていた。


雷牙「フン……どうせ半分も残れねぇだろ。」

翠馬「兄ちゃん……そういう言い方はやめろって」


天城は二人を交互に見やり、再び森へ視線を戻した。


天城「……さて。果たして“今期”はどうでしょうね」

いよいよ禍津学園での授業が始まりました。

一限目からいきなり「森での実践」という、命がけの内容。輝はまだ武器の具現化すらまともにできず、他の生徒たちとの差を思い知らされることになります。


また、ここで入学試験編の序盤に登場した 雷牙・翠馬兄弟 が再登場しました。

彼らは二年生として、既に一年間を生き抜いている先輩たち。雷牙の好戦的な性格と、翠馬の抑え役という関係性は健在です。二人の存在が、輝や一年生たちにどのような影響を与えていくのか――今後の展開で描いていきます。


次回は、いよいよ森の中での実践バトル。

輝は果たして無事に「倒す」という課題を達成できるのか、それとも――。

次回28話ーー無理難題

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